国際海洋情報(2022年4月1日号)
1.Global Maritime Forum:EUが世界的な海運の脱炭素化を促進する方法
Global Maritime Forumが、3月24日標記Insight Briefを発表したところその概要は以下のとおり。①昨年11月のIMO/MEPCでは、全EU加盟国を含む多くの国が2050年までの海運脱炭素化を支持したが、この目標実現のためにはScalable Zero-Emission Fuels(SZEFs)・船舶・燃料供給インフラへの投資を含む、目的達成のための政策的枠組み作りが必要。②欧州委員会が提案している2030年までのCO₂削減対策であるFit for 55には海運脱炭素化に関連する部分もあるが、提案では船舶燃料のLNGへの転換を進めるなど完全な海運脱炭素化を阻害する内容となっている。③世界の海運活動から排出されるCO₂の総量のうち、EUに関連する排出量は18%にすぎず、世界的に海運脱炭素化を進めるためには、IMOの場などを活用して世界的な規制が必要。④したがって、IMOにおいて世界的な規制ができた場合に備えて、EU ETSやFuelEU Maritimeの中には見直し条項を入れるべきであるが、EU諸国はIMOにおけるInitial IMO GHG Strategyの見直し作業などを通じて、野心的な解決策がIMOにおいて合意されるよう引き続き働きかける必要がある。⑤欧州議会においては、海運からのETSの収入を利用して、SZEFsの生産と普及を進めるために、欧州委員会のFit for 55提案を見直すべきである。
原文
Global Maritime Forum (04/01)
2.マースク:米国の洋上風力発電事業の建設に参加
マースクの子会社のMaersk Supply Serviceは、2019年から洋上風力発電施設建設作業船(Wind Installation Vessel)の開発を進めてきたが、エクイノールとbpの米国のニューヨーク州における洋上風力発電のための共同事業会社であるEmpire Offshore Windから、同州の洋上風力発電ファームであるEmpire 1とEmpire 2における洋上風力タービンの据え付け作業を正式に受注した。米国のカボタージュ法であるJones Actを遵守するため、米国最大の外洋艀と曳船運航会社であるKirbyの子会社であるKirby Offshoreと事業提携して、本事業のために、Jones Actに従い、2隻の艀と曳船を建造する。Jones Actの適用対象とならない建設作業船はシンガポールのSembCorp Marineで建造し、2025年に米国に移送される見込み。
原文
Maersk Supply Service (04/01)
3.Climate Action 100+:第2回目の評価報告書を発表
Climate Action 100+は2017年に発足した総額で68兆ドルの投資額を持つ700社以上の機関投資家が参加し、投資対象となる企業が気候変動対策に関するガバナンス・CO₂排出の削減・気候変動に関する財務情報の開示の改善に取り組んでいるか評価する組織である。評価対象となる企業は石油ガス事業・電力・自動車などの産業で、わが国の企業としては、トヨタ・日産・ホンダ・スズキなどの自動車産業、日立・パナソニック・東レ・ダイキンなどが評価対象となっている。今回2回目の評価結果を発表したところその概要は以下のとおり。①評価対象となっている166社のうち69%が2050年以前に炭素中立を実現すると宣言しており、前年と比べると17%上昇した。②国際エネルギー機関が作成した地球気温の上昇を1.5℃以内に抑制するのに必要なシナリオに沿った2030年までのCO₂削減中期目標を掲げているのは、わずかに17%の企業のみだった。③Scope 3まで含めたバリューチェーン全体としての脱炭素化計画を立てている企業も42%だけだった。
原文
Climate Action 100+ (04/01)
4.UNSG:国家以外の組織が実施する炭素中立活動を検証する組織を立ち上げ
3月31日、国連事務総長は、気候変動問題に関する危機が高まる中で、国家以外の組織が表明した炭素中立宣言が、透明性が担保され、信頼ができ、CO₂を削減するためのしっかりとした実行計画に裏付けられているか検証するための高級専門家グループを立ち上げた。炭素中立宣言自体は増える一方で、全世界で排出されるCO₂排出量は逆に史上最高となっており、政府以外の団体による炭素中立宣言について、炭素中立の基準を厳格化し、宣言が実際に実行されていることの検証システムを強化することによって、実際の迅速な炭素排出削減を促進するのが目的となっている。高級専門家グループの議長はカナダの前環境・気候変動担当大臣が務め、日本からは、イオングループの三宅香執行役員がメンバーとして個人参加している。
原文
国連 (04/01)
Webinar情報
1.World Ocean Day:Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857