国際海洋情報(2022年3月30日号)

1.欧州証券市場監督局:排出権取引市場に不正操作の形跡なし

EUの排出権取引市場においては、2月に排出権の取引価格が高騰して、史上最高の98.49ユーロ(約1.34万円)を記録して、年間で約150%上昇したが、こうした状況を踏まえて、ポーランドをはじめとするいくつかの加盟国から、排出権取引市場への金融投機企業の参加を制限するよう要請が出ている。これを受けて、欧州証券市場監督局(ESMA)は調査を実施し、大きな不正操作などの問題は発見できなかったと、3月28日最終報告書を発表した。排出権の長期派生商品は、価格ヘッジングのため主として非金融機関が保有し、短期派生商品は銀行や投資家が保有しているが、EU域外の投資ファンドが保有している量は限定的であることが判明した。アルゴリズムを利用して高頻度に売買を繰り返す取引は主として、米国や英国の会社から出されているが、わずかな比率で、市場操作に至っていない。ESMAは排出権やその派生商品に関して、取引の透明性の向上を図るために、規制の強化を図る必要があるかについては引き続き検討するとしている。

原文

Reuters (03/30)


2.IMF:2021年の海運運賃上昇により2022年の世界の物価が1.5%上昇

IMFは3月25日「海運コストとインフレ」と題する作業報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①2020年3月からの18か月間で、太平洋航路・大西洋航路におけるコンテナ輸送運賃は7倍に、ばら積み貨物の運賃はそれ以上に上昇している。②この運賃上昇による物価への影響は本年末まで影響が継続すると見込まれる。③ウクライナ侵攻は、世界的なインフレをさらに悪化させる見込み。④世界の143か国の過去30年間のデータを見ると、海上運賃の高騰は物価上昇の重要な要因となっており、一般的に運賃が倍になれば、物価が0.7%上昇し、影響は最長で18か月間継続する。⑤したがって、2021年に発生した海上輸送運賃の値上げによって、2022年の世界の物価は1.5%上昇することが見込まれる。⑥海上運賃は、石油や食料の価格の上昇に比べて量的な影響は小さいが、上昇率が激しいので、海上運賃の上昇は石油や食料価格の上昇と同程度の影響を持つ。

原文

IMF (03/30)


3.EU:英国政府の再生可能発電の補助要件についてWTO協議を要請

再生可能エネルギー事業者(ほとんどは洋上風力発電事業者)が、英国政府と差額決済契約(CFD)を締結する際の競争入札に応札する際に、契約対象者の資格要件として、英国製品の使用に関するローカルコンテントを英国政府が評価基準としていることに対して、輸入製品が不当に扱われているとして、EUは英国政府に対し、国際貿易機関(WTO)における協議を行うことを3月28日要請した。英国政府の差別的な取り扱いは、WTOの基本的な原則である輸入製品が国内製品と同等に競争できるという内国民待遇原則に反し、多くの中小企業を含むEUの製造事業者を害するとともに、結果として製品コストが上昇することによって、再生可能エネルギーへの転換をより困難かつ割高なものとしているとEUは主張している。

原文

欧州委員会(03/30)


4.米国の主要石油生産地からこれまでの予想より2倍以上のメタンが排出

メタンはCO₂に比較して量も少なく、大気中における存続期間が短い一方で、CO₂より約86倍も熱を保持する強力なGHGだが、米国内で最大級の石油・天然ガス生産地であるNew Mexico州のパーミアン盆地で、2018年から2020年の間に、航空機を使用して上空からメタンの漏出量を観測したところ、15か月の期間中、1985か所からメタン排出が観測され、今までの予測の倍近い、天然ガスの生産量の約9%に当たるメタンが大気中に放出されていることが確認された。同州では、最近規制が強化されて、余剰の天然ガスを定期的に燃焼させるflaringが禁止されたが、テキサス州のような他の石油・ガス生産州のためにも、より厳しい連邦レベルでの排出規制が必要とされる。

原文

MIT Technology Review (03/30)


Webinar情報

1.World Ocean Day: Revitalization/ Collective Action for the Ocean
June 8, 10:00-13:00 EDT
https://www.eventbrite.com/e/2022-united-nations-world-oceans-day-event-registration-272875797857