国際海洋情報(2022年3月25日号)

1.PM2.5大気汚染:すべての国でWHOの基準満たせず

世界保健機関(WHO)はPM2.5と呼ばれる大気中の微小粒子に関する健康基準を昨年改正して、年間平均のPM2.5の濃度を5mg/㎥以下とすることを推奨しているが、大気の品質を調査するIQAir社の調査によれば、2021年中に世界の6457都市の大気を調査したところ、すべての国がこの基準を満たすことができず、コロナ後に経済が回復したことに伴い、汚染が悪化したところもあった。都市別にみると、全体の3.4%の都市しか基準を満たすことができず、93の都市ではスモッグの濃度が基準値の10倍を超えていた。例えば、調査開始当初は、中国のスモッグ濃度は非常に悪かったが、時間とともに継続的に改善されている一方で、大幅にスモッグ濃度が悪化している都市もある。インドは、国全体として、2021年は汚染が悪化し、デリーは引き続き世界で最も大気汚染のひどい首都にとどまった。国別では、2年続けてバングラデシュが最も大気汚染がひどい国となり、今年から調査の対象となったチャドが2番目となった。

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Reuters (03/25)


2.英米の500人以上の科学者が気候変動問題の研究と化石燃料産業の関係を追及

英米の著名な科学者500人以上が、連名で英米のすべての大学に対して公開書簡を送り、気候変動問題に関する研究について、化石燃料産業から資金支援を受け入れることは、根本的な利益相反であり、妥協を通じて、基本的な研究の信頼性を損うと指摘している。書簡では、タバコ産業が行ってきた、タバコによる健康への影響に関する情報操作活動に触れ、多くの公共的な健康問題に関する研究機関がタバコ産業からの資金受け入れを拒否している例を挙げ、気候変動研究についても、同様の行動をとるべきで、科学者たちは、資金受け入れによって、化石燃料業界のgreenwashingに加担すべきではないとしている。化石燃料業界は、資金支援することによって、大規模に実施できることが証明されていない炭素回収技術や極めて危険なgeoengineeringなどの、本質的な問題の解決を先送りするための、解決策を引き出している。大学が化石燃料産業から実際にどれだけ支援されているかは明らかではないが、昨年のthe Observer誌の調査によれば、英国の大学だけでも過去4年間に最低でも8900万ポンド(約143億円)の資金援助を石油企業から受けている。

原文

The Guardian (03/25)


3.英国で洋上風力発電所の規模(計画中を含む)が86GWに

3月22日にRenewableUKが発表したところによれば、現在、英国で運用中・計画中の洋上風力発電施設の合計発電量は、過去1年間に積極的に実施されたCrown Estate (8GW)とCrown Estate Scotland (25GW)によるリース権の競売によって60%も拡大し86GWとなり、実際に稼働中の洋上風力発電施設の8倍の規模となっている。Renewable UKが昨年9月に発表したときは、63.2GWだったので、半年間で20GW以上増加したこととなる。

原文

Offshore Wind Biz (03/25)


4.米SEC:投資家に対する気候変動関係情報の公表義務を強化する規則を提案

米国の上場企業は、投資家と証券取引委員会(SEC)に対して、財務状況や直面するリスクに関する詳細情報を提供しなくてはいけないが、SECは上場企業に対して、GHGの排出量や気候変動が各企業の事業に及ぼすリスクについても報告することを求める新たな規則を3月21日に提案した。今までもアップルの様に自主的に気候変動に関連する情報を公開している企業はあったが、今回のように標準化された情報の提出は求められていなかった。報告しなくてはいけないリスクの例としては、海面上昇のリスクにさらされている地域におけるビジネス活動などが考えられる。報告すべきGHGの範囲は、原則として、Scope 1とScope 2は含まれるものの、Scope 3 についても報告義務を負わせるのは企業に対して過剰な負担をかけるとして米国商工会議所は反対しており、提案では、各企業が重要(material)であると考えられるScope 3のGHGについてのみ報告・開示が求められている。

原文

NPR (03/25)


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