国際海洋情報(2022年3月18日号)
1.炭素中立計画を持たない石油・ガス事業に対する再保険を停止
2021年に、国際エネルギー機関(IEA)は、地球の気温上昇を産業革命以前と比べて1.5℃以内に抑制するためには、新規の石油・ガス田の開発を停止すべきと発表したが、世界第2位の再保険事業者であるSwiss Re社は、3月17日、持続可能性年次報告書を発表して、①2025年までに、再保険を引き受ける石油・ガス事業の半分は、2050年までに炭素中立を実現する科学的な計画を持つ企業の事業とし、2030年までには、炭素中立計画を持たない石油・ガス事業については、再保険を引き受けない。②ノルウェーの事業者を除き、北極海における生産比率が10%を超える企業の事業についても再保険を引き受けない。③特約再保険(元受け保険会社の引き受けた保険を自動的に再保険する契約)については、石油・ガス事業については、2023年に終了し、同社が独自に科学的に審査して、炭素中立計画がない事業の再保険は引き受けないと発表した。
原文
Reuters (03/18)
2.ベルギー:ウクライナ侵攻の影響で原子力発電の廃止期限を10年間延長
ベルギーにおいては、2025年までに既存の電子力発電所を段階的に廃止する計画であったが、ウクライナ侵攻によってエネルギー価格が高騰していることと外国産エネルギーへの依存率をさげるため、同国首相は、現在まだ稼働中の合計で7基の原子炉を持つ相対的に新しい2か所の原子力発電所の運用期間を10年間延長するために、同原発を運用している仏のEngie社と交渉に入ると3月18日発表した。同国は2003年から法律によって、原子力発電の段階的廃止を定めており、現在与党のGreenの党は、2025年までに原子力発電所を全廃することを連立参加の条件としている。政府の方針転換に対して、Engie社は同日夕方会見を開き、要請を受けた2か所の原子力発電所の運用期間の延長は、周辺の他の原発の解体作業が始まろうとする矢先でもあり、安全上・規制上の検証を行う必要があり、一民間企業が負えるリスクを超えるとして、要請を受けることについて強い留保を表明した。独政府も原子力発電所の廃止政策を見直すべきではないかとの強い政治的圧力を受けているが、独政府はまだ廃止政策を変更していない。
原文
euronews (AFP) (03/18)
3.石炭採掘から発生するメタンの量は石油・天然ガス生産時の量より多い
環境NGOのGlobal Energy Monitorによれば、世界の石炭生産から発生するメタンの量は年間5230万トンに達し、天然ガス(4500万トン)・石油(3900万トン)の生産から発生する量より多く、中国国内の全石炭火力発電所から排出されるCO₂と同等の気候温暖化効果を持っていることが分かった。現在計画中の新たな石炭採掘事業が計画通り実施に移されるとさらに追加の1130万トンのメタンが排出されることになり、全米の石炭火力発電から排出されるCO₂と同等の地球温暖化効果を固定化することとなる。国際エネルギー機関が作成した「炭素中立のための2030年までのロードマップ」に従えば、石炭生産に伴って発生するメタンの排出量は、2030年までに毎年11%ずつ減少する必要があり、このためには、焦点を絞った排出削減策と鉱山の閉鎖、さらには石炭生産の迅速な段階的な停止が必要となる。
原文
Global Energy Monitor (03/18)
4.大規模山火事の煙によってオゾン層を破壊
MITの研究者が、2019年と2020年に豪で発生した山火事について、ケーススタディを実施したところ、山火事から発生した煙が成層圏まで達して、オゾン層が1%破壊されたことが分かった。オゾン層は紫外線から地球上のあらゆる生き物を保護しているが、豪州の事例で言えば、2度の山火事によって、中緯度地帯では、5%から10%のオゾン層が減ったが、オゾン層が1%減るごとに、紫外線によって皮膚がんを発生する可能性が2%上昇するとされている。フロンがオゾン層を破壊することが知られ、モントリオール議定書によって、フロンの使用が禁止されたことによって、10年かかりやっと1%オゾン層が回復したが、今回検証された二つの山火事の煙が成層圏まで達したことによって、1%オゾン層が破壊されたということは、人類による10年間の努力が、2回の山火事によって帳消しになったことを意味する。山火事の煙はフロンのように長い期間成層圏に残らないとはいえ、今後大規模山火事の頻度が、2050年までに30%、今世紀末までに50%増加することが予想され、大きな懸念材料となる。
原文
Inside Climate News (03/18)
Webinar情報
1.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg
2.Reuters: Transition Trends 2022
March 24, 14:00 GMT
https://events.reutersevents.com/energytransition/trends2022?utm_campaign=5426-08MAR22-WK14-TA-ASIAPAC&utm_medium=email&utm_source=Eloqua