国際海洋情報(2022年3月16日号)

1.ノルウェーから独に至る水素輸送パイプラインの建設を検討

3月16日、独副首相はEU域内で2番目に大きい天然ガス輸出国であるノルウェーを訪問し同国首相と会談したが、ノルウェーが独や他のEU諸国における水素市場の迅速な拡大に貢献するとの観点から、両国の間に水素を輸送するためのパイプラインを建設することを含め、水素を大規模に輸送するための事業可能性調査を両国の共同で実施することで合意した。独は当初再生可能エネルギーから生産されるグリーン水素にこだわっていたが、ノルウェーは、グリーン水素生産のための電解槽を整備するより、天然ガスを原料として、生産時に発生するCO₂を回収貯蔵するCCS技術を併用したブルー水素の大量生産・輸出を図る方が迅速に対応できるとして、ブルー水素の生産・輸出を主張している。ロシアのウクライナ侵攻を受けて、独も迅速かつ大量なエネルギー調達の確保の観点から、過渡期の措置として、ブルー水素の調達も検討することにしたもの。

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Euractiv (03/16)


2.海洋の炭素吸収を促進する単細胞生物を発見

シドニー工科大学の研究者がNature Communications誌に発表した研究によれば、新たにシドニーの沖合で発見された単細胞生物は光合成を行うが、他の海洋微生物を引き寄せるために炭素を多く含んだ液体を放出し、より大きな海洋生物が引き寄せられた海洋微生物を食べるときに、単細胞生物が生産した炭素を多く含んだ液体はそのまま海底に沈むので、海洋から大気中に放出される炭素の量を減らし、結果として海洋の天然の炭素シンクとしての機能を促進することが分かった。研究者によれば、この単細胞生物によって、年間1.5億トンのCO₂を海洋に回収することが可能とされている。

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BBC (03/16)


3.IEA:2021年の全世界のCO₂の排出量は史上最高に

国際エネルギー機関(IEA)は、3月8日、石炭火力に大きく依存したコロナ経済復興により、2021年における全世界のCO₂排出量は、対前年比20億トン(6.3%)増の363億トンとなり、過去最高となったとの分析を発表した。同年に、石炭の使用から排出されたCO₂の量は過去最高の153億トンとなり、全CO₂排出量の40%以上となった。天然ガスから排出されたCO₂の量も、2019年の水準を超えて、75億トンとなった。石油から発生したCO₂の量は、航空燃料の需要が回復しなかったため、パンデミック以前の水準より低い107億トンとなった。発電量についてみれば、再生可能エネルギーによる発電量は、対前年比500TWh増で、史上最高の8000TWhとなった。個別にみると、風力発電が270TWh、太陽光発電が170TWhそれぞれ増加した一方で、米国とブラジルにおける干ばつの影響で、水力発電は減少した。

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IEA (03/16)


4.ウクライナ侵攻によって船員費と船舶の運航コストが上昇

Drewry社によれば、外航船の船舶職員はロシア人が46500人、ウクライナ人が41000人で、部員はロシア人が41200人、ウクライナ人の32400人がそれぞれ働いている。全世界で働く船舶職員は65万人、部員は92万として、両国の船員の合計割合は、船舶職員が13%、部員が8%を占めている。両国の船舶職員の多くは原油・LNGの輸送船の分野で働いており、タンカー部門では侵攻の前から経験が豊富な船舶職員の供給が厳しい状況にあったので、侵攻により最も影響の大きい分野になる。短期的には、コロナの時と同様に、船舶乗務中の船員については、契約期間を超える乗務で対応できるが、中期的には交代が不可避だが、侵攻時にウクライナにいた船員については、乗務に復帰することは難しい。ロシア人船員についても今後は査証の取得が困難となるほか、対ロシア制裁の影響で賃金の支払いも難しく、雇用しづらい状況となる。当面両国の船員と同じ給与水準のインド人船員が代替要員として最も可能性があるが、船舶職員については、以前から需給状況がタイトで、簡単に交代要員を見つけられる状況にはない。

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Hellenic Shipping News (Drewry) (03/16)


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