国際海洋情報(2022年3月15日号)

1.デンマーク政府:Power-to-Xの推進へ1.61億ユーロの支援へ

デンマーク政府は、2021年12月にPower-to-X(電力を他の媒体に置換すること)を推進する戦略を発表し、1.61億ユーロ(約211億円)を補助して、2030年までに4GWから6GWの電解槽の整備を図ることとしている。デンマーク気候・エネルギー・電力省は、同国は大規模な風力資源に恵まれ、近年中に、大規模な洋上風力発電施設の整備を進めることとしており、海運・航空・重量物運搬車両やエネルギー多消費型の産業で、エネルギーの完全電化が困難な産業のために必要なグリーン水素の生産に適しているとしている。同国では、自国内の消費ばかりでなく、グリーン水素や水素から製造されるアンモニアなどの水素キャリアの輸出促進も目標としている。

原文

Offshore Energy (03/15)


2.米司法省:マースクへ召喚状を発出

コンテナ海運の混乱に関係する米国政府の調査活動の一環として、マースクは米司法省から召喚状を受け取ったことを確認した。司法省は召喚状を発出したことを公式に確認していないが、バイデン大統領が一般教書演説で、「パンデミックの期間中、外国の海運会社は最大で運賃を10倍まで引き上げ、記録的な利益を享受している。私は、アメリカの消費者と事業者に対して不当な運賃を課している外国海運会社を打破すると言明する。」としてから、外航海運会社に対する風当たりが強まっている。ホワイトハウスは本件に関連して、司法省と連邦海事委員会(FMC)の連携を強化するとしているが、FMCはコンテナ会社による超過保管料と返却延滞料の課金などについて調査を実施した結果、現在のところ、海運会社が違法行為を行ったとする証拠は見つかっておらず、FMC委員長も米国の荷主から外航海運における運賃の急激な高騰と定時運航率の低下に関して、海運会社を取り締まるよう強い圧力があるが、人為的なコンテナ船腹量の調整などについて証拠がない限り、FMCとしてできることは限られているとコメントしている。

原文

gCaptain (03/15)


3.中国政府:原子力発電所の建設推進方針を堅持

ロシアのウクライナ侵略に伴う原子力発電所に対する保安上の懸念にもかかわらず、中国政府は、石炭火力発電に代替する脱炭素化対策の一環として、原子力発電所の新設を進め、2030年までには、米国とフランスを抜いて、世界最大の原子力発電国となる見込み。ドイツ・ベルギー・スペインといった西欧諸国が原発廃止へ舵を切る中で、中国政府は、第14次発展計画に従い、2025年までに新たに8基の原発を建設する予定。
Wood Mackenzieの分析によれば、中国の臨海部で原子力発電所を建設する場合、その発電コストは石炭火力発電と競争できるまで低下し、原子力発電所の建設コストは、米・英・仏などの欧米諸国の半分程度と推測される。中国の李首相は、3月5日、全人代で、原子力発電所を積極的かつ秩序をもって建設していくと表明した。

原文

South China Morning Post (03/15)


4.欧州の河川から流出したマイクロプラスチックが北極海に堆積

北極海にマイクロプラスチックがかなり堆積しているという研究は発表されているが、そのマイクロプラスチックがどこから流れてくるかは解明されていなかった。ノルウェーの海洋研究所の研究者たちがNature誌に発表した最新の研究によれば、北部欧州の21の大きな河川から流れ込んだマイクロプラスチックがノルウェー沿岸を経て、北極海の中でもNordic Seaとバフィン湾周辺に堆積することが判明した。研究者は2007年から2017年の複数の海流のモデルを利用して、マイクロプラスチックがどのように流れていくかシュミレーションするとともに、2017年から2018年の間、ノルウェー西岸の17か所から121の海水のサンプルを採集して、実際に浮遊していたマイクロプラスチックとシミュレーションの結果を併せて分析した。本論文については, Nature Asia誌が作成した日本語のまとめがあるので、原文の代わりに以下に引用する。

日本語要約

Nature Asia (03/15)


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