国際海洋情報(2022年3月10日号)

1.プラスチックに関する新国際条約の限界

石油を原料として製造されるプラスチックは、製造・使用・処理の過程で、2050年までに20%のglobal carbon budgetと石油生産の20%を消費する見込み。さらに毎年、1100万トンのプラスチックが海洋に流れ込み、使い捨てプラスチックの使用が制限されない限り、2040年までに流入量は3倍に増加する見込み。こうした問題に対処するため、国連総会でプラスチックに関する国際条約の制定交渉を開始することが合意され、循環経済を利用した持続可能な生産と消費が目的とされている。しかし、過去5年間だけで、ロシアで64%、中国で25%、プラスチックの生産量が増加しているだけでなく、これらの諸国で生産されたプラスチックには有害添加物が含まれていることも確認されている。したがって、条約で想定している各国が自主的に削減計画を作成する方式では、プラスチックの現状の問題を解決するには程遠い。

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Clyde & Co (03/10)


2.A Global Goal:2030年までの生物多様性ポジティブ実現を要請

世界の代表的な14の環境NGOsが共同で、2030年までに生物多様性の減少を止め増加に転じるa global goalを達成し、2050年までに完全な生物多様性の復活を目指すべきとする提言を発表した。NGOはこの目標を、中国の昆明で開催されるCOP 16国連生物多様性サミットで合意される予定の今後10年間の「地球生物多様性の枠組み(Global Biodiversity Framework: GBF)」の包括的なミッションとすることを求めて、ジュネーブで開催されるCOP 16の前の最後の準備会合に提出した。2週間が予定されている交渉では、昆明で採択される予定のパリ協定の生物多様性版となるGBFの案文を最終化することを目的としている。

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The Nature Conservancy (03/10)


3.マースクが海運会社で初めてAmazonのThe Climate Pledgeに参加

2019年にアマゾンは2040年までに炭素中立を目指すThe Climate Pledgeを結成し、この度、新たに海運会社としては初めてのマースクを含む約100社が新規参加して、合計で312社が参加することとなった。マースクは2040年までに炭素中立を達成するために、中期目標として、2030年までに海上輸送の25%についてグリーン燃料を使用し、同社と契約する物流・冷凍保存会社などのオペレーションの90%をグリーン化し、航空輸送については、最低でも30%以上、持続可能な航空燃料(SAF)を使用すると表明している。マースクのCEOは「緊急な気候問題に対応し、お客様のサプライチェーンを脱炭素化することは、マースクにとって極めて重要な戦略であり、アマゾンのThe Climate Pledgeに参加することにより、重要な顧客と連携し、ベストプラクティスと解決策を共有するのは素晴らしい機会となる。」とコメントしている。

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Splash 247 (03/10)


4.IRENA:「製造業のためのグリーン水素:政策立案ガイド」を発表

化学工業や製鉄業の様に、生産の過程をすべて電化することが困難な産業にとって、現在でも、多くの水素が使用されているが、化石燃料を原料とした水素であり、産業界の脱炭素化のためには、グリーン水素への転換が不可欠である。しかし、現状のグリーン水素市場は黎明期で、産業や最終消費者全体として、グリーン水素の影響を最大化するためには、政策面でなすべきことが多い。産業界におけるグリーン水素使用の規模を拡大し、信頼性の高いグリーン水素市場を創設するための解決策を与え、政策的な枠組みを作るため、国際再生エネルギー機関(IRENA)は「製造業のためのグリーン水素:政策立案ガイド」を、IRENA行動連合(Coalition for Action)はGreen Hydrogen Certification Briefを作成し、3月8日に発表した。EUも輸入天然ガスへの依存度を引き下げるために、2030年までに560万トンのグリーン水素を生産することを現在の目標としているが、さらに1000万トンを域内生産、1000万トンを輸入することによって、この目標を超えることを目指している。

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IRENA (03/10)


Webinar情報

1.Transport & Environment:
Green shipping- Nordic actions foster European and global zero emission
March 17
リンク詳細

2.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg

3.Reuters: Transition Trends 2022
March 24, 14:00 GMT
https://events.reutersevents.com/energytransition/trends2022?utm_campaign=5426-08MAR22-WK14-TA-ASIAPAC&utm_medium=email&utm_source=Eloqua