国際海洋情報(2022年3月2日号)

1.Shell:ロシアとの全ての石油・天然ガス事業からの撤退を表明

Shellは3月8日、ロシアとの間の原油・石油製品・天然ガス・LNGなどすべての化石燃料の取引から段階的に撤退すると発表した。具体的には、①スポット市場におけるロシア産原油の購入を直ちに停止する。既存の購入契約については、購入契約の更新は行わない。②各国政府と協議して、ロシアに代わる原油調達先の確保を図るが、これには数週間かかる見込み。③ロシア国内のすべてのガソリン・ディーゼル・航空燃料・潤滑油の供給を停止する。④ロシア産の石油製品・パイプラインから送られる天然ガス・LNGの購入停止については、政府や顧客と協議しながら進めていくが、代替エネルギーへの転換には時間がかかる。⑤完全に購入が停止されるまでの間、限定的に購入されるロシア産石油の取引から発生する利益については、特別の基金として積み立て、人道支援団体などと協議しながら、戦争被害を受けたウクライナ国民救済のために使用する。

原文

Shell (03/02)


2.EU:年末までにロシアの天然ガスへの依存を2/3削減

ロシアは現在EU加盟国が使用する天然ガスの約40%(1550億㎥)を供給しているが、ロシアによるウクライナ侵攻を踏まえ、欧州委員会は、加盟各国が天然ガスの輸入を米国やカタールなどの代替的な供給先に切り替えるとともに、再生可能エネルギーへの転換を進めることによって、ロシアの天然ガスへの依存を年末までに2/3削減し、さらにバイオメタンや水素等の活用によって、遅くとも2030年までに完全にロシアへの依存から脱するとする計画を、3月8日発表した。具体的には、代替的な供給国からの輸入切り替えにより600億㎥、新たな風力・太陽光発電施設の整備で、年末までに200億㎥の天然ガス消費を削減し、2030年までに再生可能エネルギーの発電量を3倍とし、新たに風力発電を480GW、太陽光発電を420GWそれぞれ追加することによって、1700億㎥の天然ガス消費を削減するとしている。加えて、暖房の設定温度を1℃下げることによって100億㎥、既存のガスボイラーを3000万台ヒートポンプに切り替えることによって、350億㎥の天然ガスを節約できる。

原文

Reuters (03/02)


3.ウクライナ侵攻:海事保険業界が「ハイリスク海域」の範囲を拡大

国際的な海事保険業界による「共同戦争委員会」は、2月15日に、黒海とアゾフ海のウクライナ領海を「ハイリスク海域」に指定したが、2月24日のウクライナ侵攻以降、少なくても5隻の商船が飛翔体で攻撃され、1隻が沈没、1隻で船員が死亡した。こうした戦闘状況の悪化を受けて、同委員会は3月7日、同海域の範囲をルーマニアとジョージアの沖合や内水・公海上の一部まで拡大すると発表した。2月24日以降、同海域を航行する船舶の保険料は高騰しており、多くの海運会社は同海域への運航を停止しており、ウクライナ・ロシアの黒海沿岸からの主要輸出物である小麦やトウモロコシの輸出に大きな影響が出ている。

原文

Reuters (03/02)


4.気温上昇を1.5℃以内に抑制するには大気中からのCO₂回収が不可欠

炭素中立の実現を目指すビジネス界のトップによって結成された「エネルギー転換委員会」は、地球気温の上昇を1.5℃以内に抑制するためには、「大気中からのCO₂の回収(Carbon Dioxide Removals: CDR)」が不可欠とする報告書を発表した。報告書によれば、CO₂の排出削減を最も野心的な速度で行ったとしても、2050年までに炭素中立を実現する可能性を50%に引き上げるためには、2050年までに、大気中から最低でも70Gtから250 GtのCO₂を回収する必要がある。CDRの方法としては、植林や土壌の管理などによる「自然作用による手法」と、大気中から機械的にCO₂を回収する「工学的手法」と両方の手法を取り入れた「ハイブリッドな手法」がありうるが、どの手法を取っても単独では必要な量のCDRが達成できないので、複数の手段を組み合わせることが必要となる。

原文

Energy Transitions Commission (03/02)


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