国際海洋情報(2022年3月1日号)
1.海事反汚職ネットワークが10年間の事例をまとめた報告書を発表
海事反汚職ネットワーク(MACN)は、海上貿易に関する関係官署の職員による賄賂の要求など汚職行為について、匿名汚職報告プラットフォームを通じて、過去10年間で、世界の149か国の1000以上の港湾で発生した約5万件の不正事例を収集してきた。こうした情報を共有することにより、不正行為の規模・種類・量などを把握することが可能となり、不正行為を減らすことが可能となる。不正行為の多くは、たばこ・酒・わいろの要求という形で行われ、要求を拒むと、船舶が足止めされ出港が遅れ、大きな経済的な損失を被ることとなる。コロナの期間中は、感染予防のために、港湾管理者等との物理的な接触がへり、電子的に連絡を取って、出港許可を得るため、不当要求の件数は減少した。情報の収集は、不正行為の摘発を目的とするものではないが、いくつかの国では、MACNの情報をもとに、当局が独自の調査の実施や、港湾関係職員の教育・訓練に役立てることによって、港湾管理の質の向上につながっている。
原文
MACN (03/01)
2.BIMCO:ウクライナ侵略は海運業界全般に大きな影響
ウクライナとロシアはそれぞれ世界の穀物輸出の10%を担い、ロシアは海上輸送される原油・石油製品の10%を担っているが、ロシアによるウクライナ侵略の結果、金属・小麦・石油・天然ガスなどの商品価格が高騰して、世界的なインフレを惹起し、商品の需要が減ることによって、海運業界全体に大きな影響が出るとする報告書をBIMCOは3月7日発表した。EUも米国政府も石油産業に対する制裁を発動していないにもかかわらず、大幅な値引きをしても、ロシア産の原油の70%は買い手が見つからない状況で、タンカーの船主も、タンカーの運航を継続するリスクを考慮しているため、3月7日の時点で、黒海・バルト海などからロシア産原油を積みだすタンカーの隻数は減少している。中国が余剰ロシア産原油を引き取り、その分、欧州諸国が中近東からの原油輸入を増やすことができれば、供給面での不安は緩和でき、海上輸送距離が延びるので、トンキロベースでのタンカー輸送需要は伸びるものの、長期的には原油に対する需要が減るのは避けられない。
原文
Lloyds List (03/01)
3.ノルウェー:アンモニア燃料のAframax タンカーの開発を進める
ノルウェー政府が支援する官民連携事業であるGreen Shipping Programは、内航船における技術開発を踏まえて、外航船用のアンモニアを燃料とする機関とアンモニアを燃料とする11万dwtのAframax タンカーの設計を進めている。事業はエネルギー企業のEquinorが取りまとめを行い、DNV/Yaraなど複数の企業が参加して進められる。船舶の設計については、ノルウェーのBreeze船舶設計が担当する。この試験事業の目的としては、アンモニア動力機関・アンモニア燃料・燃料供給システムの技術的・経済的な適用可能性、運航上の安全性などの問題について検討し、最終的にはEquinorが用船・運航することを目的とする。
原文
The Maritime Executive (03/01)
4.フーシ派:油濁汚染の高い放置された老朽タンカーから油を抜き取ることに同意
110万バレルの原油を積載した1976年建造の老朽化したタンカーは、イエメンの紅海に面する石油ターミナルの沖で、6年間も放置され、国連の専門家はいつ油濁事故が発生してもおかしくなく、事故が発生すれば、1989年にアラスカ沖で発生したExxon Valdez号事件の4倍の規模の油濁事故になると警告していた。フーシ派はIMOの専門家がタンカーの状況を検査し、必要な補修を実施することで原則合意していたが、合意は未だ実施されていない。このような状況で、3月5日、フーシ派の最高革命委員会の議長は、Twitter上で、国連と同タンカーに積載されている原油を他の船舶に積み替えると言う内容の覚書に署名したと発表した。国連の緊急援助調整官(OCHA)も2月にフーシ派と覚書を締結したことを確認したが、実際にいつまでに油の抜き取り作業が実施されるかは示されていない。
原文
Reuters (03/01)
Webinar情報
1.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg
2.Reuters: Transition Trends 2022
March 24, 14:00 GMT
https://events.reutersevents.com/energytransition/trends2022?utm_campaign=5426-08MAR22-WK14-TA-ASIAPAC&utm_medium=email&utm_source=Eloqua