国際海洋情報(2022年2月28日号)

1.海運・船員をめぐるウクライナの情勢

ウクライナ情勢については、攻撃を受けて、商船1隻が沈没し、ミサイル攻撃を受けた別の船舶で当直に当たっていた3等機関士が1名死亡したが、海上保安専門家は、自力で脱出できる船舶は一刻も早く黒海北部の「疑似戦闘海域」から脱出すべきだと警告している。しかし、ウクライナが港湾を閉鎖し、外航船の出航に必要なタグや水先のサービスが受けられなくなる一方で、NATOはウクライナ周辺海域の機雷で既に封鎖されている可能性があると警告しており、Bloombergによれば、約100隻の貨物船が黒海とアゾフ海の港湾に足止めされている状況である。ドイツ船主協会は、ロシアは船舶航行の自由を尊重し、戦闘に関係のない商船に対する攻撃をやめ、すべての船舶と船員が紛争海域から安全に離脱するのを認めるべきと声明を発表した。攻撃を受けて死亡者が出たバングラデシュ船の乗組員は、船を放棄して、ご遺体とともに、モルドバ・ルーマニア経由で本国に帰還する見込み。

原文

The Maritime Executive (02/28)


2.IEA:EUに対し、露へのエネルギー依存を削減する10の方法を提案

国際エネルギー機関(IEA)は、European Green Dealの目的を維持しながら、EUのロシアへのエネルギー依存度を1年間で1/3以上減らすための10項目の提言を発表したところ概要以下のとおり。①ロシアと新たな天然ガス供給契約を締結しない。(エネルギー調達先の多様化)②ロシア以外からの天然ガス供給を年間で約300億㎥増加する。③天然ガスの最低備蓄量を引き上げる。(来年の冬のエネルギー供給不足を回避)④新たな風力・太陽光発電開発の促進(天然ガス60億㎥分を代替)⑤バイオエネルギー発電と原子力発電を最大化する。(天然ガス130億㎥分を代替)⑥短期的な措置としてエネルギー価格高騰に伴う収益に課税して、消費者の負担する電力価格を抑制する。⑦ガスボイラーからヒートポンプへの置換を加速化する。(天然ガス使用量を20億㎥削減)⑧建物や産業のエネルギー効率の向上を加速化する。(天然ガス使用量を20億㎥削減)⑨家庭やオフィスの暖房温度設定を1℃落とす。(天然ガス使用量100億㎥削減)⑩代替発電源の多様化と脱炭素化を進める。

原文

IEA (02/28)


3.NY:コンテナターミナルを大規模洋上風力発電の港湾支援施設に改造

3月3日、ニューヨーク市長は、市が保有するSouth Brooklyn Marine Terminalを全米で最も大規模な風力発電施設の港湾支援施設に改造すると発表した。NYは全米に先駆けて、2040年に炭素中立を達成することを目標としているが本事業の実現によって大きく目標達成に近づく。本事業はNY市経済開発会社・Equinor・BPなどが出資し、既存のコンテナターミナルを洋上風力発電施設の運用・保守管理の陸上基地に模様替えする。ターミナルはEmpire Wind 1事業で発電された電力の中継基地となり、洋上風力発電タービンの設置に必要な重量物荷役プラットフォームも新設する。NY港は、Empire Wind洋上風力発電所とBeacon Wind洋上風力発電所の二つの洋上風力発電施設の運用・保守を担当する。

原文

NY市 (02/28)


4.海洋に流れ込んだ人間の医薬品で魚が汚染

フロリダ国際大学の沿岸漁業研究所が発表した研究によれば、過去3年間、南フロリダの約320kmの沿岸を対象に、人間の医薬品によるソトイワシの汚染状況を調査したところ、93匹のソトイワシから58種類の異なる医薬品成分が検出され、顕著な例では1匹のソトイワシから16種類の異なる薬品が同時に検出された。フロリダ州では、1/3の過程で浄化槽が整備され、2/3の過程の排水は下水道に接続されているが、既存の下水処理方法では医薬品を取り除くことができないので、住民の飲料水も食用の魚も医薬品によって汚染されているが、含まれている医薬品の量が微量なため、直ちに健康への影響はないが、生涯これだけ多くの医薬品を意図せず取り込んで人体にどういう影響が出るかは現段階では不明である。現在医薬品は汚染物質としてみなされていないので、薬品の製造や使用後の処理に関する環境上の規制はない。

原文

Inside Climate News (02/28)


Webinar情報