国際海洋情報(2022年2月25日号)

1.ICS:ILOの声明を受け、各国に船員に対する適切な医療行為の提供を要請

国際労働機関(ILO)の海事労働条約(MLC)の適用に関する専門家委員会は、寄港地における船員に対する医療提供・病気の船員の下船・死亡した船員の遺体の積み下ろしと本国送還を拒否するといった条約に反する事例について報告を行い、これを受けて、労使官を代表する特別第3者委員会は、パンデミックを不可抗力(force majeure)として、MLC上の船員の権利を認めないことは許されないとして、条約に基づいた適切な医療行為の提供等を求める声明を2月11日発表した。国際海運界会議所(ICS)は、この声明を全面的に支持し、全政府に対して、船員を基幹労働者として認定し、適切な医療を提供し、船員に対しワクチンを優先接種するよう要請する。ICSは今週、船舶の運航会社向けに、改訂された最新の船員の健康福祉、ワクチン接種に関するベストプラクティスを解説した医療ガイダンスを発表する。

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ICS (02/25)

2.ウクライナ問題が欧州の航空会社に追い打ち

2月27日、欧州委員会の委員長は、ロシアが保有または運航している航空機のEU上空の飛行を禁じた報復措置として、ロシアはEU加盟国の航空機がロシア上空を飛行することを禁じた。この結果、EU諸国とロシアの間のフライトが約50便キャンセルされるとともに、ロシア上空を通常通過する航空機についても、約90フライトがキャンセルまたは飛行ルートの変更を余儀なくされている。紛争ぼっ発後EU諸国とウクライナの間を結ぶ約230のフライトについても運航が停止している。ロシア・ウクライナ上空を回避して飛行することによって、欧州の航空会社は追加の所要時間と燃料コストの負担を強いられている。例えば、ヘルシンキから東京までのフライトでは、追加で2137マイルも長く飛行しなくてはならなくなった。北部欧州から中国・日本に避航する場合4時間、南部欧州からは2時間の追加飛行時間が必要となっている。

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Euractiv (02/25)


3.米国の再生可能エネルギー発電比率が13%に上昇(2021年実績)

Bloomberg New Energy Financeが3月3日に発表したAmerica Factbook によれば、2021年において、米国では再生可能エネルギー発電の量が過去最大の伸びを示し、米国全土の発電量の13%まで拡大した。水力・太陽光・風力による再生可能発電量は、2021年に対前年比4%以上増加し、原子力も加えると、脱炭素発電によって、米国の電力需要量の40%を供給した。これに伴い、全米の発電部門から排出されるCO₂の量は順調に減少しており、2021年には、対2005年実績比35%減少した。一方で、天然ガスが全米の発電源としては、依然1位でシェアが全体の38%、石炭火力発電所のシェアは2021年にはわずかに上昇して22%となった。昨年新たに稼働を始めた風力・太陽光発電の合計量は、1年間の増加量としては過去最高の37.3GWに達し、内訳としては太陽光が過去最高の24.2GW、風力が13GWとなった。(ちなみに1GWの発電力で約75万戸の家庭の電力消費量を賄える。)

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USA Today (02/25)


4.IMO:ウクライナ問題で緊急理事会を招集

2月24日のロシアによるウクライナ侵攻を機に、多くの海運会社がウクライナの黒海沿岸の港湾への運航を停止し、運航を続ける船舶に対する船舶保険料も急騰している。すでに何隻かの商船が攻撃をうけ、3月3日にはオデッサ港でエストニア籍の貨物船が撃沈され、他の港湾でもバングラデシュ籍の船舶がミサイルまたは爆弾で攻撃を受けた。こうした状況をうけて、15か国を超すIMOの加盟国が、黒海の船舶の運航と船員の安全確保について討議するために、緊急理事会を開催することをIMOに対して要請したため、IMOは急遽10日と11日に緊急理事会を開催することを3月4日発表した。マーシャル諸島は、3月3日にアゾフ海と黒海北西部を最も危険な海域に引き上げ、自国籍船に対して同海域に侵入しないように警告を発出し、国際運輸労連も3月2日、黒海とアゾフ海を「疑似戦闘海域」に指定したため、船員は同海域に航海するのを拒否することができるようになった。

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Reuters (02/25)


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