国際海洋情報(2022年2月24日号)

1.米大統領:一般教書演説でコンテナ海運アライアンスを名指しで非難

バイデン大統領は、大手の海運会社が、相互に輸送スペースを融通しあうことによって、運賃を吊り上げ、物価上昇の元凶となっているとして、コンテナ海運会社に対する政府の監督権限を強化すると3月1日発表した。演説では、「会社が競争をしなければ、会社の利益は積みあがる一方で、中小企業や家族経営の農家・牧場主が割を食うことになる。アメリカ発着の外航海運でまさにこれが起こっている。すべて外国船社によって構成される3つの世界的な海運アライアンスが、殆どの外航海運貨物を支配し、米国の事業者や消費者に対し、運賃を引き上げる力を持ち、米国の国家安全保障と競争力を脅かしている。」と述べた。昨年7月に出された競争振興を目的とする大統領令によって、連邦海事局と司法省競争当局は、既に情報共有協定を締結しているが、2月28日に、ホワイトハウスが発表した声明によれば、海運会社が海運法などの米国内法に違反していないか調査をするタスクフォースを近日中に両者で設置する見込み。

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S&P Global (02/24)


2.EU:ロシア関係船舶のEU港湾入港禁止を検討

英国は既に2月28日、ロシアが保有・運航・支配・用船・登録する船舶の英国港湾への入港を禁止した結果、ロシアのソブコムフロトが運航するマーシャル諸島籍のタンカーが英国に入港するのを断念して、デンマークに行き先を変更した。さらに、同社とヤマルLNGが運航するLNG運搬船が現在仏に向かっている。デンマーク外務省によれば、EUの外務大臣は2月27日、EUの港湾をロシア船に対して閉鎖する可能性について議論を行った。仏政府の職員は、さらなる制裁措置の追加を検討する中で、EUの港湾の閉鎖も選択肢の一つだが、追加制裁措置は、EU諸国に対する影響よりロシアに対する影響の方がはるかに大きい措置を選ぶべきとコメントしている。ギリシャ政府の関係者は、制裁問題についてEUが決定したことについて従うとコメントしている。欧州議会は、3月1日、法的拘束力はないが、ロシア船のEU寄港を原則として禁ずる決議の採決を実施して、政府に圧力をかける見込み。

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Reuters (02/24)


3.IPCC 第2WG報告書の中のショッキングな数字

Bloombergが選定した標記数字の概要は以下のとおり。①地球全体で33億から36億の人々が気候変動に「極めて脆弱な」環境で生活している。②1970年代以降発生した自然災害の44%は洪水に関連するもの。③気温上昇の程度が1.5℃では無くて4℃に上昇すると、洪水から発生する直接的損害の規模が4倍から5倍に拡大。④洪水と干ばつの両方の危険性がある都市部の面積が、2000年に比べて2030年には2.5倍に拡大。
⑤貧しい沿岸国で過去10年間に、洪水・干ばつ・台風によって死亡した住民の数は、裕福な沿岸国と比べると15倍。⑥CO₂の排出が抑制される低排出シナリオにおいても、2100年までに猛暑と湿気によって、命の危険にさらされる住民の割合は50%。⑦2100年において、暑さと湿気により屋外で労働できない日数は、アジア・アフリカ・アメリカ大陸の一部の地域で、最大年間250日となる。

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Bloomberg Linea (02/24)


4.国連環境総会:プラスチック汚染に関する国際条約交渉開始を決議

ナイロビで開催された第5回国連環境総会は、175か国から首脳・大臣等が参加し、プラスチックの生産・再使用/リサイクル可能なデザイン・処分を含めたプラスチックのライフサイクル全般を規制する新たな国際的に法的拘束力のある国際条約案を2024年までにまとめるため、政府間交渉委員会(INC)を設置する「プラスチック汚染停止」決議を3月2日採択した。国連環境計画(UNEP)は本年末までに、第1回INCとともに、世界のすべての関係者がプラスチック問題に関する知識とベストプラクティスを共有するためのフォーラムを開催する。UNEP事務局長は、2年間の条約交渉と並行して、積極的な政府や業界の代表と協力して、使い捨てプラスチックの削減・民間投資の促進・新たな循環経済への投資の促進を図っていくと表明した。

原文

UNEP (02/24)


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