国際海洋情報(2022年2月21日号)

1.黒海を運航する船舶に対する保険料が急騰

船主は年間の戦争保険料に加えて、「リスクが高い」と指定された海域において船舶を運航する際には、「違反保険料」を支払う必要がある。この違反保険料金は、7日間ごとに、船舶の価値などを用いて算定される。ロシアによる侵攻が始まる前は、この1週間分の違反保険料は船価(保険も補償額)の0.025%程度だったが、侵攻後は1%から2%、場合によっては5%まで上昇し、船舶の行き先にもよるが、船主は莫大な違反保険料を支払うこととなる。2月25日には、オデッサ港のそばでモルドバ籍の化学タンカーがミサイル攻撃を受けて、2名の乗務員が重傷を負い、24日は、オデッサ沖でトルコ籍の船舶が爆撃されたが、けが人はなく、ルーマニア領海に避難した。ウクライナ政府はトルコ政府に対して、ダーダネルス・ボスポラス海峡を通過して、黒海に入るロシアの軍艦の通行を止めてほしいと要請しているが、トルコはこれに応じていない。ウクライナ軍は同国内の港湾の商船の活動の停止を命じているが、ロシアの黒海沿岸のノヴォロシースクなどの港湾は現在も商船に対して開港している。

原文
Reuters (02/21)

2.ABS白書:再生可能なグリーン水素の洋上生産

標記白書の概要は以下のとおり。①2030年代には再生可能なグリーン水素に対する需要が高まり、洋上風力発電施設と一緒に洋上グリーン水素生産施設を建設することが事業的に可能となる。②洋上でグリーン水素を生産するための電解槽の運転等のためには電力が必要であり、洋上風力発電施設を中心として、潮力・波力・洋上太陽光発電施設から電力を得ることが可能である。③ABSは既に現代重工・KSOEとともに、洋上プラットフォームにおけるグリーン水素生産のための技術ガイダンスを作成している。④このガイダンスは2025年までに実際に洋上グリーン水素生産施設を建造するための重要な一歩であり、世界中にグリーン水素経済を拡大するのに必要なグリーン水素の生産設備の開発を促進する。⑤現在、いくつかの洋上グリーン水素発電施設の建設計画が世界中にあるが、すべて洋上風力発電施設とともに建設される予定である。⑥例えば、オランダの沖合に計画されているNortH2事業は、洋上風力発電による電力から2030年までに4GW、2040年までに10GWのグリーン水素を生産する予定で、ドイツのAquaVentus事業は2035年までに、10GWの洋上風力発電を使用してグリーン水素を生産することを計画している。

原文

The Maritime Executive(02/21)


3.IMO/ILO/UNCTAD/WHOが船員交代問題で声明を発表

世界的に合計で9万人の船員の手配をする大手船舶管理者が共同で調査したNeptune Declaration Crew Change Indicatorによれば、船員交代ができずに当初の労働契約期間が経過しても船上で継続して乗務をすることを余儀なくされた船員の割合は、コロナに伴う船員の移動制限の緩和や船員のワクチン接種率の向上によって、2021年7月の9%から同年12月には、3.7%まで改善してきていたが、オミクロン株の再流行によって、船員の移動制限が再強化されたため、本年1月中旬の段階で、4.2%と再上昇の兆しを見せている。そこで、IMO/ILO/UNCTAD/WHOの関係する国連機関は共同声明を各国等の関係者に向けて再度発表して以下のような措置を求めた。①船員が必要な医療行為を船上で受けられないときは、寄港地において直ちに診察・治療を提供すること。②船員を「基幹的な労働者」に指定し、船員交代の円滑化を支援し、国境を越えた安全な移動を保証すること。③船員に対して優先的にワクチン接種を実施するとともに、入国の際の検疫の条件としてワクチン接種済みであることを要件としている場合でも、船員は適用除外とすること。④寄港した船員に対し、PCR検査の機会やマスクなどの感染予防に必要な物資を与え、船内で感染が発生していないか確認したうえで、上陸や船員交代を許可すること。

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Offshore Energy (02/21)


4.IPCC:気候変動の影響と適応策に関する第2WG報告書を発表

2月28日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①気候変動による大規模な被害は既に発生しており、我々の食料・エネルギー・交通・政治・社会など広範な変革が必要。②産業革命以前と比較して、気温が1.5℃以上上昇すると、影響が急拡大するが、地球の気温は既に1.1℃上昇しており、20年以内に、1.5℃以上上昇する見込みである。③気温が1.5℃上昇すると、陸上の生物の3-14%は絶滅するが、海面上昇によって沿岸部の生態系が最も影響を受ける。④国連生物多様性条約は世界の30%を保護区にする必要があるとしているが、現状では、陸上の15%以下、平水域の21%、海洋に至っては8%しか保護区に指定されていない。⑤猛暑や他の異常気象に伴う直接的な健康被害に加えて、水の汚染や蚊の増加による伝染病の蔓延、途上国における栄養不足、海面上昇や破壊的な天候による食糧生産の減少に見舞われる。⑥異常気象の影響は予測していたのより早くやってくるので、これまでとおり人々が同じ土地で持続可能な生活を続けるためには迅速な対応が必要で、残された時間は少ない。

原文

Reuters (02/21)


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