週刊国際海洋情報(2022年2月19日号)
- 1.欧州議会:洋上風力発電のより迅速な整備を勧告
- 2.バルチラとグリマルディがスクラバー排水からマイクロプラスチックを除去
- 3.国連ソマリア海賊コンタクトグループが役割と名称を変更
- 4.ReCAAP:シンガポール海峡における窃盗事件について警告
- 5.中国国家発展改革委員会:新たに3か所の大規模石炭鉱山の開発を承認
- 6.エアバス:2026年に水素を燃料とするジェットエンジンを実機試験
- 7.欧州委員会委員長:再生可能エネルギーへの転換が国家安全保障上必要
- 8.UNEA:プラスチック汚染に関する国際条約に関する決議案
- 9.DB SchenkerとCMA CGMが連携して脱炭素海運輸送サービスを開始
- 10.CLECAT:欧州委員会競争当局にコンテナ海運に対する調査の開始を求める
- その他のニュース
1.欧州議会:洋上風力発電のより迅速な整備を勧告
欧州議会は、洋上再生可能エネルギー(ORE)の整備に関する欧州委員会からのcommunicationについて審議していたが、2月16日、欧州議会としての報告書を採択したところその概要は以下のとおり。①2030年までにCO₂の排出を55%削減し、2050年までに炭素中立を達成するためには、OREのより迅速な整備が必要だが、一方で、海洋空間や海岸も持続可能に管理する必要がある。②再生可能エネルギー発電施設の整備は前例のない規模で迅速に進める必要があるが、多くの加盟国において、再生可能エネルギーへの転換が大幅に遅れている。③特に、ORE整備の申請が出されてから認可されるまでに必要な期間の短縮が重要で、加盟国は審査の透明化と審査期限の設定について検討する必要がある。④EUはORE発電機器の製造については、世界を技術的にリードしており、OREの生産を支援することによって、大きな経済成長が見込まれるので、民間投資に加えて、NextGenerationEU復興基金などを通じて公的資金支援を行う必要がある。
原文
欧州議会 (02/14)
2.バルチラとグリマルディがスクラバー排水からマイクロプラスチックを除去
欧州プラスチック協会によれば、2019年に全世界で3.68億トンのプラスチックが生産され、そのうち約3%の1140万トンが海洋に流れ出している。この海洋プラごみ問題を解決するため、イタリアの海運会社のグリマルディとバルチラは、開放型スクラバーが取り込んだ海水を海に放出する前に、マイクロプラスチックをフィルターする装置を開発した。例えば、10MWの機関の排気を洗浄するには、1時間当たり450㎥の海水を海から採集するが、実験結果では、このフィルター装置を利用することにより、海水1㎥あたり76個のマイクロプラスチックが回収できた。
原文
Waltsila (02/14)
3.国連ソマリア海賊コンタクトグループが役割と名称を変更
「ソマリア沖海賊コンタクトグループ(CGPCS)」は、ソマリア沖の海賊活動を抑止するため、国連決議を受け、政治・軍事・海運業界・NGO各分野の対策を調整するために80以上の政府・NGO・海運会社が集まって2009年に創設された。本年1月にCGPCSは第24回総会をケニアで開催したが、ソマリア沖の海賊活動が近年ほぼ抑止されているのを受けて、CGPCSを解散するか、西インド洋で増加するIUU漁業や麻薬の密輸といった新たな課題に対処するための組織に改組するか話し合われ、グループの名称を「西インド洋における海上不法行為に関するコンタクトグループ」に改称して、IUU漁業や麻薬の密輸といった新たな脅威に対処する組織に改組することが合意された。
原文
The Maritime Executive (02/15)
4.ReCAAP:シンガポール海峡における窃盗事件について警告
警告の概要は以下のとおり。①2022年に入ってから現在までに10件(1件の未遂事件を含む)の窃盗事件が、シンガポール海峡航行中の船舶から報告された。②10件中、7件は分離通航方式(TSS)の東航航路で、1件は西航航路で、1件は事前警戒水域で、1件はTSS域外で発生した。③東航航路で発生した7件の事件のうち、4件はインドネシアのバタム島のNongsa Pointで2月8/16/17/18日に発生した。3件はインドネシアのビンタン島のTanjung Pergamで1月8日と12月12日に発生した。④10件の事件のうち、2件では賊はナイフで武装していたが、すべての事件において、乗組員を脅迫・暴行するためにナイフは使用されず、乗組員が負傷した事件はなかった。⑤10件中、8件では何も盗まれていない。⑥賊は逮捕されていないことから、特にNongosa Pointで同様の事件が続発する可能性があり、警戒が必要である。
原文
ReCAAP (02/15)
5.中国国家発展改革委員会:新たに3か所の大規模石炭鉱山の開発を承認
中国では、昨年後半深刻なエネルギー不足となり、エネルギー価格が高騰し、国内の石炭生産はフル稼働したが、中国国家発展改革委員会は、2月21日、中国北西部の陝西省に2か所、内モンゴル自治区に1か所、合計3か所で総額241億元(約4390億円)を投資して年間1900万トンの石炭を生産する、新たな石炭鉱山の開発計画を承認した。中国以外の国々では、昨年金融機関が新たな石炭鉱山開発への融資を停止することに合意したが、今回新たに承認された3事業は、事業費の7割を金融機関からの借り入れに依存する見込み。中国は2060年までの炭素中立を目指し、再生可能エネルギーの開発も世界をリードしているものの、中国政府はエネルギー安全保障を重視して、石炭の生産も引き続き支援する方針。石炭の先物価格も、最も高騰した昨年の10月から比べると半分以下となったが、対前年比でみると依然として40%も高い水準にとどまっている。
原文
Mining.com (02/16)
6.エアバス:2026年に水素を燃料とするジェットエンジンを実機試験
EU域内では、航空機から排出されるCO₂の量は全体の3.8%を占めるとされているが、エアバス社は、2035年までに炭素を排出しない商業的に採算がとれる航空機を開発するという目的の実現のため、エンジンメーカーのCFM Internationalと共同で水素を燃料とするジェットエンジンを開発し、2026年にA380の実機を使用して試験する予定と、2月22日発表した。従来からのエンジンを4基そのままつけたうえで、機体本体に水素エンジンを搭載する。水素はCO₂は排出しないものの克服すべき課題がいくつかある。第一は、液体水素はマイナス252℃の極低温で貯蔵する必要があること。第二は、既存のジェット燃料のケロシンと比べて、エネルギー密度が低くて、より大きな体積の燃料貯蔵スペースが必要となること。A380は世界最大の旅客機だが、この機体後方に4つの極低温の燃料貯蔵庫を設置する。第三に、液体水素を再び気化させて燃焼させるが、水素はケロシンと比べて高温で燃焼するので、エンジンが高温に耐えられるものとする必要があること。第四に、上記燃料の貯蔵スペースの問題があるので、長距離飛行には適さず、地域・短距離路線にのみしか活用できないことが課題としてあげられる。
原文
Euractiv (02/16)
7.欧州委員会委員長:再生可能エネルギーへの転換が国家安全保障上必要
2月24日、欧州委員会委員長による記者会見のコメントの概要は以下のとおり。①EUが目指している再生可能な水素エネルギーへの転換は、もはや環境上の要請だけでなく、国家安全保障上の要請となった。②ロシアの侵攻を目の当たりにして、今までの様にEUはロシアの天然ガスに依存することはできなくなった。③天然ガスの供給先の多様化と再生可能水素への転換がこの苦境から脱する道である。④EU諸国はあまりにロシアの化石燃料に依存しすぎたが、ロシア自らロシアが信頼できるエネルギー供給者でないことを示した以上、あらゆる手段を講じて、ロシア産の天然ガス・石油・石炭への依存度を下げなくてはならない。⑤欧州が必要とする天然ガスの最低3割はロシア産だが、今年の冬は、例年よりはるかに少ない契約上の最低限の天然ガスしか供給されていないが、仮にロシアが完全に天然ガスの供給を停止したとしても、欧州委員会はこの冬を越すまで、代替のLNG供給国を確保する。
原文
The Maritime Executive (02/17)
8.UNEA:プラスチック汚染に関する国際条約に関する決議案
標記決議案の概要は以下のとおり。①プラスチック汚染問題について法的拘束力を持つ国際条約を作成するための政府間交渉委員会をUNEPに設立し、2年後の第6回国連環境会議までに結論を得る。②循環経済を促進し、プラスチックの生産・消費・再利用可能なデザイン・管理・処理などプラスチックのライフサイクル全体を対象として、マイクロプラスチックを含むプラスチックによる環境汚染を防止・削減することを包括的に取り組むことを条約の目的とする。③加盟国はプラスチックごみの発生を防止し、削減するための国家行動計画を作成する。④各国の国家行動計画の進捗状況を報告し、モニターする制度を制定する。⑤条約の目標を達成するために必要な資金的な手当てをする多国間基金や、科学的・社会経済学的な助言を行う専門組織の設置を検討する。
原文
UNEP (02/17)
9.DB SchenkerとCMA CGMが連携して脱炭素海運輸送サービスを開始
欧州の大手物流企業のDB Schenkerは同社が扱うすべての小口混載(LCL)貨物の海上輸送を、CMA CGMと連携して脱炭素化するために、2500トンを超えるバイオ燃料の購入契約をCMA CGMと締結した。2500トンのバイオ燃料を使用することによって、海上輸送から排出される7000トン以上のCO₂を削減することが可能で、すべてのDB SchenkerのLCL貨物をCMA CGMのコンテナ船で輸送する際に排出されるwell-to-wakeベースのCO₂をカバーするのに十分な量となる。DB Schenkerを利用する荷主は、直ちに脱炭素LCL輸送を選択することが可能で、脱炭素輸送の証明書を得ることができ、荷主のCO₂排出バランスシートを改善することが可能となる。バイオ燃料は従来燃料と混合して使用することが可能で、船舶の機関やエネルギー供給施設も従来のものがそのまま利用できる現実的なCO₂削減手法である。
原文
AJOT (02/18)
10.CLECAT:欧州委員会競争当局にコンテナ海運に対する調査の開始を求める
英国政府が露政府に対する制裁として、露航空会社に対して英国上空の飛行禁止を命令した対抗措置として、露政府が英国航空会社に対して露上空の飛行を禁止したため、英国航空とVirgin Atlantic航空は、露上空の迂回飛行を開始した。ポーランドとチェコも英国に続いて、露航空会社の自国上空の飛行禁止を発表した。ICAOは本件に関し、2月25日に緊急理事会を開催した。大多数の航空会社は依然として露上空の飛行を続けているものの、冷戦時代に給油経由地として利用されていたアンカレッジ空港には航空会社から使用可能性について問い合わせが始まっている。デルタ航空はアエロフロートとのコードシェアを中止し、日本航空はモスクワ便の運航を見合わせている。現在、ウクライナ・モルドバの全空域とウクライナとの国境に近いベラルーシと南部ロシアの一部の空域は飛行禁止空域となっている。
原文
Reuters (02/18)
その他のニュース
1.再生可能エネルギー
(ア)バイオ燃料
①RFSの環境評価
米国の再生可能燃料基準によって生産されたバイオ燃料の環境評価 原文2/14
2.エネルギー転換
(ア)新たな化石燃料開発
①米国
米:連邦大陸棚の石油ガス採掘のためのリース入札が無期限遅延へ 原文2/14
(イ)原子力の扱い
①EU
ECが原子力と天然ガスに関するEU Taxonomyの基準を発表 原文2/15
3.気候変動
(ア)氷河・海氷の減少
①南極海
南極大陸周辺の海氷が衛星観測が始まって以来最低の水準に 原文2/17
(イ)山火事
①予防対策
UNEP: 2100年までに山火事が世界で50%増加 原文2/18
(ウ)メタン
①化石燃料生産に伴う漏出
石油・ガス・石炭産業から公式発表より70%以上多いメタンが排出 原文2/18
4.気候変動緩和対策
(ア)GHG排出に伴う社会・経済コストの算定
①米国
米連邦地裁の判決によって多くの政府事業が停止を余儀なくされる 原文2/16
5.海洋環境
(ア)海洋プラスチックごみ
①マイクロプラスチック
カリフォルニア州が全米で初のマイクロプラスチック戦略を発表 原文2/17
6.環境問題一般
(ア)プラスチック
①使い捨てプラスチック
世界の3/4の消費者が使い捨てプラスチックの禁止を支持 原文2/16
7.気候変動適応対策
(ア)COP27
①米国
米国とエジプトが地球環境問題で共同WGを設置 原文2/15