国際海洋情報(2022年2月16日号)

1.中国国家発展改革委員会:新たに3か所の大規模石炭鉱山の開発を承認

中国では、昨年後半深刻なエネルギー不足となり、エネルギー価格が高騰し、国内の石炭生産はフル稼働したが、中国国家発展改革委員会は、2月21日、中国北西部の陝西省に2か所、内モンゴル自治区に1か所、合計3か所で総額241億元(約4390億円)を投資して年間1900万トンの石炭を生産する、新たな石炭鉱山の開発計画を承認した。中国以外の国々では、昨年金融機関が新たな石炭鉱山開発への融資を停止することに合意したが、今回新たに承認された3事業は、事業費の7割を金融機関からの借り入れに依存する見込み。中国は2060年までの炭素中立を目指し、再生可能エネルギーの開発も世界をリードしているものの、中国政府はエネルギー安全保障を重視して、石炭の生産も引き続き支援する方針。石炭の先物価格も、最も高騰した昨年の10月から比べると半分以下となったが、対前年比でみると依然として40%も高い水準にとどまっている。

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Mining.com (02/16)

2.米連邦地裁の判決によって多くの米国政府の事業が停止を余儀なくされる

米連邦政府は実施する政策が環境に与える影響を事前に評価するために、オバマ政権時代に作られた「GHGの社会的コスト」の算定基準を暫定的に用いてきたが、ルイジアナ連邦地裁が、この算定基準を連邦政府が使用することを禁ずる判決を今月出したが、連邦政府は、この判決によってエネルギー省・運輸省・内務省・環境保護庁(EPA)などの省庁の約40の規制作成作業を停止・延期・やり直しせざるを得ないとして、法廷闘争が決着するまで、同判決の効力を一時停止するよう裁判所に求めている。影響を受ける作成中の規制数は、エネルギー省が21件、運輸省が9件,EPAが5件、内務省が3件となり、さらに環境影響評価については、運輸省が約60件、内務省が27件の影響を受けるとしている。ルイジアナ州の判決では、「GHGの社会的コスト」は米国内のコストについてのみ算定されるべきと判示しているが、他の地裁の判決では、トランプ政権時代のコスト計算が地球全体の社会的コストを考慮していないとして、連邦政府に計算のやり直しを求めており。連邦政府は、矛盾する判決の間の板挟みとなっている。

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The Hill (02/16)


3.世界の3/4の消費者が使い捨てプラスチックの禁止を支持

世界的な市場調査会社のIpsosが世界の28か国の20513人の75歳以下の消費者を対象に「使い捨てプラスチックに関する意識調査」を実施したところその結果概要は以下のとおり。①地域的にみると、ラ米諸国(88%)とBRICs(80%)が使い捨てプラスチックの禁止に対し高い支持を示した一方で北米(61%)の支持率が最も低かった。国別でみると、高い順にコロンビア(89%)・チリ/メキシコ(88%)で、低い順に日本(37%)・米国(55%)・カナダ(66%)という結果となった。②プラスチックによる環境汚染を規制するための国際条約の必要性については、全体の88%が支持し、地域別では、ラ米(93%)、BRICs(91%)、中近東/アフリカ(90%)が高い支持を示し、国別では、メキシコ(96%)、ブラジル(95%)、コロンビア(94%)、チリ/ペルー(92%)で支持が高く、日本(70%)、米国(78%)、カナダ(79%)で支持が低い。③全体の82%が、商品のパッケージに使うプラスチックの量を最小にすべきだと考えており、地域別では、ラ米(89%)、BRICs(84%)の支持が高く、国別では、中国/メキシコ/コロンビア(92%)、チリ(90%)、ペルー(87%)の支持が高く、日本(56%)、米国(71%)、オランダ(73%)で支持が少なかった。

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Ipsos (02/16)


4.エアバス:2026年に水素を燃料とするジェットエンジンを実機試験

EU域内では、航空機から排出されるCO₂の量は全体の3.8%を占めるとされているが、エアバス社は、2035年までに炭素を排出しない商業的に採算がとれる航空機を開発するという目的の実現のため、エンジンメーカーのCFM Internationalと共同で水素を燃料とするジェットエンジンを開発し、2026年にA380の実機を使用して試験する予定と、2月22日発表した。従来からのエンジンを4基そのままつけたうえで、機体本体に水素エンジンを搭載する。水素はCO₂は排出しないものの克服すべき課題がいくつかある。第一は、液体水素はマイナス252℃の極低温で貯蔵する必要があること。第二は、既存のジェット燃料のケロシンと比べて、エネルギー密度が低くて、より大きな体積の燃料貯蔵スペースが必要となること。A380は世界最大の旅客機だが、この機体後方に4つの極低温の燃料貯蔵庫を設置する。第三に、液体水素を再び気化させて燃焼させるが、水素はケロシンと比べて高温で燃焼するので、エンジンが高温に耐えられるものとする必要があること。第四に、上記燃料の貯蔵スペースの問題があるので、長距離飛行には適さず、地域・短距離路線にのみしか活用できないことが課題としてあげられる。

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Euractiv (02/16)


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