国際海洋情報(2022年2月14日号)
1.米国の再生可能燃料基準によって生産されたバイオ燃料の環境評価
再生可能燃料基準(RFS)は、米国において生産されるバイオ燃料の基準を定め、さらに世界で生産される約半分のバイオ燃料の生産基準としても使用されているが、気候変動・環境対策として重要な規則であるRFSに従って生産された燃料の使用によって環境に与える影響についてはこれまで明らかにされてこなかった。PNASに発表された研究では、計量経済学上の分析・土地利用の観察・生物物理学上のモデルを用いて、全米における個々の農地について、RFSに従って生産されたバイオ燃料による環境上の累積された影響を計算した。RFSに基づくバイオ燃料の生産が奨励された2008年から2016年の期間において、トウモロコシの価格は30%、その他の穀物の価格が20%上昇し、トウモロコシの作付面積は280万ha(8.7%)、その他の穀物の作付面積は210万ha(2.4%)それぞれ拡大した。この結果、米国全土で使用された肥料の量が3%から8%増加し、水質が劣化し、土地利用が変更され、何よりもRFSに基づいて製造されたトウモロコシを原料とするエタノールはガソリンと比べて、単位当たり24%も多いCO₂を排出していることが分かった。
原文
PNAS (02/14)
2.欧州議会:洋上風力発電のより迅速な整備を勧告
欧州議会は、洋上再生可能エネルギー(ORE)の整備に関する欧州委員会からのcommunicationについて審議していたが、2月16日、欧州議会としての報告書を採択したところその概要は以下のとおり。①2030年までにCO₂の排出を55%削減し、2050年までに炭素中立を達成するためには、OREのより迅速な整備が必要だが、一方で、海洋空間や海岸も持続可能に管理する必要がある。②再生可能エネルギー発電施設の整備は前例のない規模で迅速に進める必要があるが、多くの加盟国において、再生可能エネルギーへの転換が大幅に遅れている。③特に、ORE整備の申請が出されてから認可されるまでに必要な期間の短縮が重要で、加盟国は審査の透明化と審査期限の設定について検討する必要がある。④EUはORE発電機器の製造については、世界を技術的にリードしており、OREの生産を支援することによって、大きな経済成長が見込まれるので、民間投資に加えて、NextGenerationEU復興基金などを通じて公的資金支援を行う必要がある。
原文
欧州議会 (02/14)
3.バルチラとグリマルディがスクラバー排水からマイクロプラスチックを除去
欧州プラスチック協会によれば、2019年に全世界で3.68億トンのプラスチックが生産され、そのうち約3%の1140万トンが海洋に流れ出している。この海洋プラごみ問題を解決するため、イタリアの海運会社のグリマルディとバルチラは、開放型スクラバーが取り込んだ海水を海に放出する前に、マイクロプラスチックをフィルターする装置を開発した。例えば、10MWの機関の排気を洗浄するには、1時間当たり450㎥の海水を海から採集するが、実験結果では、このフィルター装置を利用することにより、海水1㎥あたり76個のマイクロプラスチックが回収できた。
原文
Waltsila (02/14)
4.米:連邦大陸棚の石油ガス採掘のためのリース入札が無期限遅延へ
本年1月にワシントンD.C.の連邦地裁が、米国政府内務省が入札に伴う気候変動に対する影響を正しく考慮に入れていないとして、メキシコ湾における石油ガス採掘リース権の販売決定が無効であると判示した。一方で、ルイジアナ州の連邦地裁は2月11日、GHG排出が気候変動に与える経済的コストを連邦政府が算出するために、オバマ政権時代に使われていたGHG排出1トン当たり50ドルという算定基準を使用することを禁止したため、内務省としては、当該算定基準なしでは気候変動への影響を検討できず、石油ガス採掘のためのリースの入札を進められないとの考えを示した文書を2月19日、裁判所に提出した。
原文
Reuters (02/14)
Webinar情報
1.Economist Impact: World Ocean Summit Virtual Week
March 1-4
https://eventsregistration.economist.com/event/61d9b752-e431-40ba-8da2-39ccab8ead8d/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg&utm_campaign=wos2022&utm_medium=Eloqua&RefID=EM04&utm_content=top-speakers&utm_source=email
2.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg