国際海洋情報(2022年2月10日号)

1.NOAA:今世紀末までに米国沿岸の海面が平均60cm上昇

米国国土安全保障省・NASAなどの関連する米国政府機関が連携し、米国全土と米国の海外領における2150年までの海面上昇の見通しを米国海洋大気庁(NOAA)が「2022年海面上昇に関する技術報告書」として取りまとめられたところその概要は以下のとおり。①2020年から2050年までの間に、米国の海岸においては、過去100年分の海面上昇をしのぐ、平均して25-30cmの海面上昇が発生する。②この結果、台風や高潮によって発生する中規模の洪水が発生する頻度は、2050年には現在の10倍以上となる。③現在までに排出されたCO₂による温暖化効果によって、2100年までには60cmの海面上昇が発生し、もし、今後のCO₂排出削減に失敗すれば、同年までに1.1mから2.1m海面が上昇する。

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NOAA (02/10)

2.海洋生物の音声を収集した世界的なデータベース創設の必要性

海洋は多様な海洋生物が発する音声の宝庫で、受動式収音装置(PAM)は、海洋生物の発する音声を収集することによって、海洋生態系に脅威を与えることなく、海洋生物の生態を観察できる革新的な方法である。PAMの活用によって音を発する生物の活動範囲を知ることによって、海洋保護区の線引きなどにも活用できる。世界的に生物多様性が減少し、人類が発生させる人為的な海中騒音によって、海洋の音声環境が変化している今日、海洋生物が発する音声を記録し、その量を測定し、海洋生態系音声の発生源を特定することは重要で、このため、世界の研究者が自由にアクセスできるウェブ上の海洋生物の発する音声に関するデータベースを創設する必要がある。持続可能で地球規模のデータベースを創設するためには、生物/環境音声学者・生物情報学者・音声伝播専門学者・コンピュータ技術者等の参加と資金的な支援が必要である。

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Frontiers in Ecology and Evolution (02/10)


3.独:再生可能エネ発電の拡充のためには送電網への莫大な投資が必要

EUが2050年までに炭素中立を達成するためには、欧州のエネルギー供給に占める電力のシェアを現状の約2倍にする必要があると欧州委員会は試算しており、増加する風力や太陽光などの不安定な再生可能電力を受け入れるために、送電網の柔軟性を高める投資が必要となる。11月に発足した独の新連立政権の政策綱領によれば、2030年までに国内発電量の80%を再生可能電力で賄うと合意されているが、多くの風力発電施設はバルト海に近い独北部にある一方で、電力を多く消費する産業の多くは独南部に位置しており、北部から南部へ送電するために全長1.21万kmの送電網の建設が計画されているが、現在供用開始されているのは1800kmの高圧線のみで、建設中のものが700か所あるが、大多数はまだ計画段階で遅れが目立っている。高圧線の増設だけで2030年までに550億ユーロ(約7.2兆円)の投資が必要で、全体の送電網の強化のためにはさらに追加投資が必要となる。こうした高額な投資だけではなく、送電線を整備する地域の農民や野鳥保護団体からは、生物多様性の保全を理由として、送電網建設反対の法廷闘争が進められている。

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Euractiv (02/10)


4.CLECAT:欧州委員会競争当局にコンテナ海運に対する調査の開始を求める

欧州のフォワーダーの業界団体であるCLECATは欧州委員会の競争担当のコミッショナーに書簡を送り、コンテナ海運に対する競争の適用除外措置の見直し等を求めたところその概要は以下のとおり。①コンテナ海運会社は、輸送力を管理し運賃を上げ、利益を上げるだけでなく、物流の垂直統合を目指し、独立系のフォワーダーを差別し排除することによって、荷主や最終消費者も高い運賃を受け入れ、船社の選択権を奪っている。②EUの競争当局は直ちに調査に入って、物流の上流であるコンテナ海運輸送と、下流である貨物フォワーディングの分野において、寡占やカルテル行為の程度を明らかにすべきである。③欧州委員会は、コンテナ海運会社が競争法の適用除外・物流の垂直統合・合併・情報の管理などの要素を組み合わせることによって市場を支配していることについて、EU競争法やコンソーシアムに対する一括適用除外規定(CBER)の見直しの観点から、早急に調査を行うべきである。④コロナの蔓延期間中、コスト引き上げ要因が無いにもかかわらず、海運会社は運賃を急激に引き上げ、2000億ドルを超す利益を上げていることについても、欧州委員会は調査を開始すべきである。

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CLECAT (02/10)


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