国際海洋情報(2022年2月9日号)

1.欧州のエネルギー価格:2023年まで高水準かつ乱高下が続く見通し

欧州委員会が作成し、正式には3月に発表される予定の欧州のエネルギー価格の見通しに関する報告書の概要は以下のとおり。①欧州にとっての天然ガスの主たる供給国であるロシアからの供給が不安定なため、天然ガスの卸売価格は、1年前と比べると400%上昇し、それに伴い、電力の卸売価格も対前年比260%上昇した結果、天然ガスと電力の小売価格もそれぞれ対前年比、51%と30%それぞれ上昇した。②冬季の天然ガスの供給対策として、欧州委員会は各加盟国に対して、冬が始まる前の9月末までに、最低限の天然ガスの備蓄を行うことを義務付けるとともに、天然ガスの供給源の多様化を進めるために、米国とカタールからLNGの供給量を増やすとともに、日本・エジプト・アゼルバイジャン・トルコといった国からのLNGの融通を受けるよう外交努力を進めるとしている。③外国から輸入する天然ガスへの依存を落とし、電力価格を引き下げるためには、欧州グリーンディールに従って、再生可能エネルギーへのシフトを加速することだが、大規模な加速がなされない限り、EUの電力価格は、最低2030年までは、天然ガス価格の動きに大きく左右されることとなる。

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Euractiv (02/09)


2.中国の洋上風力発電能力:2021年だけで約2.8倍に急増

世界洋上風力発電フォーラム(WFO)の年次報告書によれば、再生可能エネルギーへの世界的なシフトによって、2021年には、全世界で15.7GW分の洋上風力発電施設が新設されたが、その約8割にあたる12.7GWが中国で建設され、2021年末で中国国内の洋上風力発電能力の合計は、19.7GWと対前年比約2.8倍となり、世界第2位と3位の英国とドイツの洋上風力発電能力を合計した量とほぼ同じとなった。昨年中国でこのような洋上風力発電が急拡大した原因は、洋上風力発電事業者が、中国政府から0.75-0.85元(約14円)/kWhの固定価格(Feed-In Tariff)で20年間全量買い取ってもらうための洋上風力発電施設の電力網への接続期限が昨年末までだったためで、今後数年間は年間5GW程度のより安定した成長が続くと見込まれる。2021年末における他の諸国における洋上風力発電能力は、英国(12.2GW)・ドイツ(7.7GW)・オランダ(3GW)・デンマーク(2.3GW)・ベルギー(2.6GW)の順番となっており、世界全体で48.2GWで、中国は19.7GWなので、世界全体の洋上風力発電能力の41%を保有していることとなる。

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The Maritime Executive (02/09)


3.IPCC:気候変動の影響・適応・脆弱性に関する第2WG報告書の審議を開始

気候変動に関する国際パネル(IPCC)は、第6次評価書の前提となる気候変動の進行状況を分析した第1作業部会の報告書を2021年8月に発表したが、2月14日、IPCCは気候変動の影響・適応・脆弱性に関する第2WG報告書の審議を開始し、25日までに検討・承認する見込み。より具体的には、報告書の概要版である「政策決定者に対する要約」を1行ずつ、加盟国の政府代表が報告書を作成した科学者と協議しながら、要約が正確で、バランスが取れており、報告書本文中の科学的結論が明確に説明されているか確認する作業を行った後に、最終的に第55回IPCC総会で第2WGの報告書が承認されることとなる。パンデミックが継続していることから、第1WGの報告書の時と同様審議はオンラインで実施される。報告書は3.4万件以上の科学的研究をもとにして記述された。今後の作業スケジュールとしては、第3作業部会の報告書が4月初旬までに最終承認され、3つの作業部会報告書が統合された第6次評価書は9月までに最終化される見込みとなっている。

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IPCC (02/09)


4.米司法省:物流の混乱に乗じた反競争的共謀行為に対する取締を強化

世界的なパンデミックによって生じたサプライチェーンの混乱によって一時的に生じた物価の高騰がその後も継続していることにかんがみ、司法省の不公正取引部とFBIは、2月17日、サプライチェーンの混乱に乗じて、共謀して、価格カルテル・談合・市場の分割などの反競争的な行為に従事する者をあぶりだし訴追するキャンペーンを始めると発表した。不公正取引部は、既に開始されている調査を優先的に進める一方で、世界的な規模で行われている共謀行為の調査のために、豪・加・NZ・英の競争当局と連携して調査するための作業部会も設置する。輸送の制約・通常のビジネス実施の障害・原料調達の困難化などによって製品の製造や輸送コストが増加し、最終的には消費者物価を押し上げている。価格カルテル・談合・市場の分割に関する協定やその他の反競争的な行為に関する情報を持つ者はだれでも、不公正取引部の市民不平センターに届け出ることができる。

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米国司法省 (02/09)


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