国際海洋情報(2022年2月7日号)
1.マースク:MEPC 78に向けて海運脱炭素化対策の強化を要求
マースクは、2月10日、世界海運協議会(WSC)によるMEPC78提出文書として以下の事項について、IMO加盟国の対応を求めた。①再生可能代替燃料は化石燃料を原料とした燃料と比較して、2-3倍価格が高いので、炭素中立燃料に価格競争力を持たせるため、(化石燃料から排出される)GHGに対して十分な課金をすべき。②化石燃料から排出されるGHGの算定に当たってはライフサイクル評価(LCA)が重要であり、IMOにおいて適正なLCAガイドラインについて合意されることが重要。③化石燃料のみを燃料とする新船の建造を禁止すべき。④COP 26においてClydebank Declarationが宣言されたとおり、定期船のエネルギー転換のためには、低炭素燃料の供給を受けられる港湾のgreen corridorsの整備が必要で、IMOにおいて「低GHG燃料に関する基準」を早期に設定することが重要。
原文
Maersk (02/07)
2.英国船主協会会長:IMO事務局長に対し勇気と指導力の発揮を要求
2月7日に行われた英国船主協会会長の年次晩餐会におけるスピーチの概要は以下のとおり。①IMOにおいてはGHGの排出を技術的に抑制することに努めてきたが、今や目標は、技術的排出抑制から2050年までのGHG排出の撤廃に変わった。②この目標を達成するためには、直ちに市場原則に基づく措置(MBM)が必要。③(IMO事務局長に対し)SGは勇気と指導力を発揮して、IMO加盟国を含む関係者に直ちにMBMを導入する必要性を理解させるべきである。④MBMは収入を上げるために必要なのではなく、変化を促すために必要であり、各国や業界は己の利害を捨て、IMOがMBMを創設するのを支援すべき。⑤(英国の海運大臣に対し)IMOにおいて進展が見られないため、加盟国はIMOが世界共通のGHG削減策を創設・実施する能力がないのではないかと、IMOに対する信頼を捨てつつあり、英国もEUの例に倣って、地域的なETS制度を創設したくなるのは理解できるが、そのような地域的な制度は英国の海運業界に重い負担を課し、貿易を縮減させ、不平等な結果を生むことを忘れてはいけない。
原文
英国船主協会 (02/07)
3.UNESCO:2030年までに全世界の海底の80%の地図を作製
2017年にUNESCOは日本財団と協力して、Seabed 2030事業を立ち上げ、海底地形探査のためのソナーを用いた計測やソナーから得られた情報の収集を行ってきた。2017年の時点では、世界の海底地形の6%の地形図しかなかったが、5年間の作業の結果、最新の基準に従った世界の海底の20%をカバーする地形図が作成された。仏で開催されたOne Ocean Summitでは、UNESCOの事務局長は、海底地形図の作成作業を加速化し、2030年までに全海底の80%の地形図を作成することを目標に掲げ、目標の達成のために、①海底地形調査専用船を世界で50隻稼働させる。②さらに自律運航艇を積極活用し、ソナー探査を実施する。③各国政府や企業が既に計測し保存している海底地形図情報を集約することを掲げ、このためにさらに50億ドル(2030年までの年間予算にすると年間6.25億ドル)の予算が必要と指摘した。さらに、毎年の海底地形図作成に関する進捗状況を確認し、80%達成までの必要作業を明確にするために、2023年までに世界的な海底地形図作成進捗管理手法を導入すると発表した。世界の海底地形図の作成は、「国連海洋の10年」のレガシーの一つになるとも発言した。
原文
UNESCO (02/07)
4.中国の新たなエネルギー効率化5か年計画によって重工業の寡占化を促進
2月11日に発表された国家発展改革委員会の通達によれば、石油精製・非鉄金属精錬事業などエネルギーを多く消費する17の産業部門に対して、2025年までに達成すべき厳しいエネルギー効率の最低基準が示されたが、現状では、20-40%の企業しかこの最低基準を達成できていない。この最低基準を満たしていない企業は、エネルギー効率の良い新しい装置の導入や、廃熱の再利用などの技術の導入を求められる。また期限までに最低基準を達成するための投資が行えない中小企業は事業の撤退を求められ、大手企業が市場シェアを増やす見込み。最低基準とは別に、産業ごとにより高いエネルギー効率化基準が定められ、2025年までに30%以上の製造設備がこの基準を満たさない企業は、事業からの撤退を求められる。
原文
South China Morning Post (02/07)
Webinar情報
1.Economist Impact: World Ocean Summit Virtual Week
March 1-4
https://eventsregistration.economist.com/event/61d9b752-e431-40ba-8da2-39ccab8ead8d/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg&utm_campaign=wos2022&utm_medium=Eloqua&RefID=EM04&utm_content=top-speakers&utm_source=email
2.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg