国際海洋情報(2022年2月4日号)

1.デンマーク船主協会:EU ETSの適用範囲をGHG全般に拡大すべき

デンマーク船主協会は、CE Delftに委託して、EUの海運のGHG排出政策の2本柱であるFuelEU MaritimeとEU ETSの対象範囲の整合性を取るために、後者の適用範囲を前者に合わせて、EU ETSに対象をCO₂だけではなく、すべてのGHGを対象とし、適用の対象も船舶運航に伴い排出されるGHGだけでなく、well to wakeベースで燃料の生産時に漏出するメタンなども含むべきとする報告書を発表した。現在のようにCO₂の排出だけを規制するETSでは、well to wakeベースで生産時にメタン発生量が多いLNGの使用や、メタン漏出量の多い機関の使用を許すことになると指摘している。

原文
The Maritime Executive (02/04)

2.NOAA:大気中のメタン濃度が産業革命前の3倍に

米海洋大気庁(NOAA)が1月に発表したデータによれば、2021年中に大気中のメタンの濃度が1900ppbを超過し、産業革命以前と比べて約3倍のレベルとなり、昨年のCOP 26で合意されたメタン削減合意の重要性が改めて確認された。メタンはCO₂の28倍以上強力なGHGだが、20世紀末に増加の速度が鈍ったものの、2007年ころから再び急速な上昇に転じている。メタンの発生源は、石油・ガスの採掘活動、ごみの埋め立て、家畜の飼育、湿地における微生物の活動の活発化などが考えられるが、科学者の研究によれば、過去15年間に増えたメタンの85%は微生物の活動の活性化によるものと考えられる一方、家畜の飼育・農業廃棄物・ごみの埋め立て・化石燃料の生産といった人類の活動によって排出されたメタンは、2007年から2016年の間に排出されたメタン全量の約62%を占める。Carbon Mapperによれば、米国南西部の30の石油ガス関連施設から、過去3年間に排出されたメタンの総量は自家用車50万台の排気ガスと同程度の温暖化効果がある10万トンに上るが、これらの施設から漏出するメタンは、他のメタン排出源に比べて、容易に止めることが可能である。

原文

Nature (02/04)


3.One Ocean Summit:High Ambition Coalition on BBNJが結成

欧州委員会は、2月11日、フランスのブレストで開催されたOne Ocean Summitに対する貢献の一部として、よりクリーン・健康的・安全な海洋を促進するための野心的なイニシアティブを発表した。欧州委員会の委員長は、海洋を保全・再生するための3つの協力事業、具体的には①海洋の95%を占める公海上の生物多様性を保護するための新たなHigh Ambition Coalition on BBNJを創設。②世界の海洋を研究者達がデジタル上でシミュレート出来る大規模なコンピューター事業の開始。③2030年までに海洋と内水を再生するためのEUの研究課題を提示した。このほかにもEUが長く掲げている「違法・無報告・無規制(IUU)漁業」に対する徹底した取り締まりも、海洋資源の持続可能な管理には不可欠であり、EUは非EU諸国とも連携して、IUU漁業によって漁獲された水産物が、EUの市場に出回らないように監視している。

原文

欧州委員会 (02/04)


4.英国MCA:洋上風力発電施設要員の海上輸送に関し規制緩和を実施

英国海事沿岸警備庁(MCA)と洋上風力産業界は、増大する洋上風力発電施設へ要員の輸送問題について、昨年の夏から協議を続けてきたが、MCAは2月9日、洋上の風力発電施設へ海上輸送できる人数の上限を大幅に緩和すると発表した。これまでは、洋上風力発電施設に要員を輸送する際には、船舶の大きさに関わらず、通常の旅客輸送と同じ基準に従い、最大可能輸送人員は12名だったが、今回の規制緩和で一気に、60人までの同時輸送が可能となる。現在英国内では、洋上風力発電施設に要員を輸送する船舶が約46隻存在する。他の諸国においても同様の規制緩和が既に実施されている。

原文

reNEWS.BIZ. (02/04)


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