国際海洋情報(2022年2月2日号)

1.Wood Mackenzie:2022年のCCUSと水素開発の見通し

標記報告書の概要は以下のとおり。①2021年は炭素回収・利用・貯留(CCUS)と低炭素水素に関する新技術開発事業計画の発表が相次ぎ、CCUS事業計画は1年間で7倍に、低炭素水素に関する事業は倍増(新規事業の75%はグリーン水素)した。事業規模的にはGWベースで豪の事業計画が世界をリードした。②2022年中に最終投資決定を目指す15のCCUS事業については、公的資金と民間資金併せて、さらに約180億ドルの投資が必要となる。③水素に関しては、2021年中に、研究開発からインフラまで、水素のバリューチェーンのあらゆる分野に、全世界で660億ドルが投資された。④2022年中に最終投資決定のレベルまで、水素生産事業を進めるためには、さらに35-220億ドルの追加投資が必要となる。⑤米国では昨年11月にインフラ投資雇用法が成立し、CCUSと低炭素水素事業の支援に合計で150億ドルの政府支援が実施され、Build Back Better法案が成立すれば更なる大規模投資が期待される。⑥グリーンアンモニアは既存のインフラを活用でき、取り扱いに必要な技術もすでにあるので、グリーン水素を輸送する手段として、最も経済的な方法として着目されている。

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Wood Mackenzie (02/02)

2.英国における海岸線の17%が海面上昇により深刻な浸食を受ける

英国の海岸線は欧州の中でも浸食の影響を受けやすく、1.7万kmの海岸線の17%にあたる2900kmの海岸線が侵食されている。海岸線の下水処理場・埋立地・鉄道路線は頻繁に洪水の被害を受け、嵐になれば海水が堤防を乗り越えて、農地や水を汚染する。海面上昇による海岸浸食や洪水は沿岸部のインフラのリスクを益々高めている。防波堤を嵩上たり、計画的に高台にインフラを移転させるような沿岸域管理・適応計画を立てて対処しても、リスクはなくなることはないし、海岸浸食は引き続き洪水やがけ崩れなどの災害を引き起こすので、被害を最小化し、沿岸地域の集落の安全性を高めることは死活的に重要である。研究者は海岸浸食に対する脆弱性とそれに伴う経済的損害を比較して、英国の沿岸域で11か所の最も危険な地域を特定した。この地域で洪水や嵐が発生すれば、220億ポンド(約3.4兆円)の価値がある5万件の不動産と10万人以上の住民が危険に瀕することが分かった。

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The Conversation (02/02)


3.英国:差額決済契約の競争入札を2年に1回から毎年に変更

英国政府は、これまで洋上風力発電施設の整備を推進するとともに、発電コストの低下を促すために差額決済契約(Contracts for Difference: CfD)の競争入札を2年に1回実施してきたが、2月9日、英国政府は、2023年3月を初回として、競争入札を毎年実施することによって、再生可能エネルギー電力事業者の支援を強化すると発表した。このCfD制度の強化によって、洋上風力発電へ2030年までに900億ポンド(約14兆円)の民間投資を呼び込むことを目標とする。競争入札制度の活用によって、洋上風力発電コストは、第1回目の入札時と比較して既に約65%削減された。2021年末に実施された直近の入札の結果、700万戸以上の家庭に記録的な低額で約6GW分の新たな洋上風力発電が供給されることとなり、多くの新規雇用も生むこととなる。入札の頻度を増すことによって、より多くの事業がCfDの制度にカバーされることとなり、英国の再生可能エネルギーの供給規模を拡大し、英国の長期的なエネルギー安全保障を強化することとなる。

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英国政府 (02/02)


4.英国:港湾における陸上電源を増やすためには高コストの解決が必須

英国政府は2月7日、海運分野を脱炭素化するためには、船舶が岸壁に停泊中に利用できる陸上電源の整備が不可欠であると表明したが、英国港湾協会によれば、ハンブルグ港で2022年に整備される33.5MW規模の陸上電源の整備コストは7600万ユーロ(約100億円)かかり、公共的な支援なしでは、商業的には成り立たない設備投資コストが必要となる。さらに、設備投資コストの問題に加えて、港湾における陸上電源の整備を進めるとすると、2016年において、英国の港湾部門で使用された総電力が年間20GWだったのを、2050年までに250GWに供給を拡大する必要がある。さらに、陸上電源が供給されている欧州の港における電力のコストは、例えば、オランダでは175ユーロ(約2.3万円)/MWhだが、英国の電力は168ポンド(約2.6万円)/MWhと割高で、現在着岸時に補助動力の燃料として使用されているディーゼル油などと比べて、価格競争力が無く、この価格差も公費で補填する必要が出てくる。

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S&P Global (02/02)


国内情報

1.商船三井:PetronasとCCUS向け液化CO2海上輸送事業開発に関する覚書を締結
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2月8日、商船三井


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