国際海洋情報(2022年2月1日号)

1.世界の沿岸域で良好な環境に保たれているのは16%のみ

豪のQueensland大学等の研究者たちがConservation Biology誌に発表した研究の概要は以下のとおり。①生物多様性を保持し、多くの沿海域の人々の生活を支える自然のプロセスを維持するために沿岸域は重要な役割を果たしており、地球の管理と持続可能性の観点からも、陸域と海域の接点である沿岸地域の管理は極めて重要である。②本研究では、陸域における人類の活動と海域における人間による活動の累積的な影響をまとめて、沿岸域に与えている人為的な環境面での影響を評価した。③この結果、カナダ・ロシア・グリーンランドの沿岸域を中心に世界の15.5%の沿岸域があまり人為的な影響なしに保全されていた。④一方で、世界の沿岸域の47.9%は大きく人間の活動の影響を受けており、84.1%の国では、国内の過半数の沿岸域が失われていた。⑤地球の持続可能性を維持するためには、すべての国が、国内の沿岸域の保全と回復のために最大限の行動をとるべきである。

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Conservation Biology (02/01)


2.世界を代表する25社の炭素中立目標の大半は不誠実

2月7日発表されたCorporate Climate Responsibility Monitor 2022によれば、世界を代表する業種も国籍も異なる25の大企業の脱炭素化目標の透明性と具体的かつ短期的なCO₂削減目標に裏打ちされた有用な長期的なビジョンを持っているかという誠実性(integrity)の観点から評価したところ、わずかに1社(マースク)の脱炭素化計画が「妥当に誠実」、3社(Apple・ソニー・Vodafone)が「まあまあ誠実」、10社が「不誠実」、12社が「極めて不誠実」と評価された。調査対象のうち、13社は具体的なCO₂削減目標を持ったうえで炭素中立を宣言しているが、これら13社のバリューチェーン全体で見たCO₂の平均的な削減率は対2019年実績比で、わずかに40%削減にとどまった。残りの12社は、具体的なCO₂削減計画をいまだ立てていない。バリューチェーン全体のCO₂の90%以上を削減することを明確に約束しているのは、マースク・Vodafone・Deutsche Telecomの3社だけで、5社はバリューチェーン全体のCO₂排出量を考慮に入れないで自社のみのCO₂排出量をわずかに15%以下削減するとしか約束していない。

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New Climate (02/01)


3.INTERCARGO:EU ETSに関する欧州議会の改正提案を注意深く歓迎

INTERCARGOは2月4日、現在欧州議会で審議されているEU ETS(海運部分)の改正案についてコメントを発表したところその概要は以下のとおり。①海運の脱炭素化については、IMOにおいて世界共通の対策を議論すべきであり、EU ETSに海運が取り込まれることについては反対であるという基本的な立場を維持するものの、欧州議会において、報告者が提案している欧州委員会の提案に対する改正案は、欧州委員会の案と比較して、以下の点で正しい認識を示していると考える。②第一に、ばら積み貨物船の場合、船舶から排出されるCO₂の排出量に直結する燃料の種類を決定し、船舶の運航速度や経由港を管理するのは用船者であり、排出権の購入義務者の範囲を「汚染者負担の原則」に従い、用船者に拡大する提案を支持する。③第二に、海運分野から徴収されるETSの収益を、海運脱炭素化のための研究開発を支援する「海洋基金」の財源とする案も賛成する。③ただし、排出権購入費用を用船者が負担するという条項を用船契約の中に明文化するという提案については、実際に実行するのは難しいと考える。

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INTERCARGO (02/01)


4.EU Taxonomy:天然ガス・原子力の扱いについて独が欧州裁判所提訴を検討

欧州委員会は、条件付きで天然ガスと原子力をEU Taxonomy上、持続可能なエネルギーとして認める提案をしているが、この提案が採用されれば、オーストリアとルクセンブルグは欧州裁判所に提訴することを既に明確にしている。独政府内では、原子力については一致して反対、天然ガスについては、副首相で経済・気候保護担当相をはじめとする緑の党の関係大臣は、天然ガスを持続可能なエネルギーとみなすのに反対する一方、首相が属する社会民主党(SPD)出身の閣僚は、欧州委員会の提案を支持している。スペインも欧州委員会の提案には反対で、提訴を検討している。独もスペインも欧州理事会における議論を見極めてから、実際に欧州裁判所に提訴するか否かを決める見通し。

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Euractiv (02/01)


国内情報

1.商船三井:アンモニアFSRUのコンセプトスタディを完了
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2月3日、商船三井


2.商船三井:日本コンセプトと米国でのタンクコンテナによる化学品輸送事業の業務提
原文

2月7日、商船三井


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