国際海洋情報(2022年1月31日号)

1.McKinsey:The net-zero transition報告書

1月25日、マッキンゼーが標記報告書を発表したところその概要は以下のとおり。①脱炭素化のために効果的な行動としては、(i)エネルギー源を化石燃料から水素などの低炭素エネルギーに切り替えていく。(ii)生産業や農業の適応化を図る。(iii)エネルギー効率を向上させ需要の管理を図る。(iv)循環経済を促進する。(v)生産するのにあまりエネルギーを必要としない製品を消費する。(vi)炭素回収・活用・貯留(CCUS)技術の普及を図る。(vii)天然のGHG吸収源を強化する。②以上の炭素中立への転換は、それぞれのシステム・経済分野・国境を越えて、整合性を取りながら、大規模に取り組むことが重要である。③例えば、電気自動車の開発は、低炭素発電能力の向上と相まって初めて意味がある。④したがって、炭素中立を達成するためには、地球上のすべての産業分野と国々が参加する世界経済の変革が必要となる。

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McKinsey (01/31)


2.バイデン政権:アラスカの新規石油開発許可に対する支持を再考へ

北極海に面するアラスカ州最北端のノーススロープ郡において、今後30年間にわたり、新たに5.9億バレルの石油を生産するConocoPhillips事業は、トランプ政権末期に承認されたが、昨年アラスカ州の連邦裁判所がその承認を無効と判示し、土地管理局(BLM)にさらなる環境影響評価を実施するよう命令してから、事業の見通しが不透明となっている。バイデン政権は、当初、連邦裁判所の審議においては、事業の正当性を擁護していたが、判決が出てからは、控訴しない方針とした。この判決を受けて、環境団体はBLMに対して、広く一般の意見を聞く期間を設けるべきと要請していたが、2月3日、BLMはWillow事業について、パブコメを開始すると発表した。環境団体は、本事業に対するバイデン政権の扱いが、バイデン政権の気候変動対策の真剣さを占う重要な試金石になるとしている。

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Inside Climate News (01/31)


3.ロッテルダム港:港内物流のCO₂を把握するデジタルプラットフォームを創設

ロッテルダム港湾庁は、物流から発生するCO₂を把握する専門企業のBigMileと連携して、同港湾内の物流活動から発生するCO₂を管理するためのデジタルプラットフォームを立ち上げると2月2日発表した。AISの情報などをもとに、TNO計算モデルを利用して、物流から排出されるCO₂の量を正確に計算する。このプラットフォームの情報によって、参加企業は、自社のサプライチェーン全体でどれだけのCO₂が発生しているかが把握できるようになり、ロッテルダム港湾庁や参加企業が炭素中立目標を達成することを支援する。第1段階は、同港に寄港する外航船と内航船を対象にして試行的に実施され、第2段階として、同港に出入りするトラックや鉄道輸送も対象に含めることとなる。本年上半期に得られた試行データは、本年下半期に海運会社やターミナル運営会社にも共有される予定。

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ロッテルダム港湾庁 (01/31)


4.英国:エネルギー価格の上昇でエネルギー政策の見直し議論が活発化

英国国内のエネルギー価格の上昇を受けて、政府部内や保守党内部でも、「再生可能エネルギーの開発はエネルギー価格の高騰につながる。」「現在のエネルギー危機を解決するためには、さらなる天然ガスの開発を進めるべきだ。」「2024年までに石炭火力発電所を撤廃するという目標を見直すべきだ。」といった現政権の積極的な脱炭素政策に反対する議論が強まっている。こうした議論に対し、英国ビジネス・エネルギー・産業戦略省は、2月4日見解を発表し、①英国においては、(再生可能エネルギーの普及と規模の経済によって)新たな再生可能エネルギーの発電コストは、最新の天然ガス発電所を含め他のいかなる発電方法より安く発電できるように既になっている。②エネルギー価格が上がっているのは、再生可能エネルギーの発電コストが上がっているためではなく、全世界的に天然ガスの需給バランスが崩れて、天然ガスの価格が高騰しているためである。③英国は現在全発電量の約40%を天然ガス発電に依存しているため、電気価格が高騰していると反論した。

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edie (01/31)


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