国際海洋情報(2022年1月28日号)

1.石油・ガス田から大規模にメタンが漏出しているのを衛星から確認

国際気候変動枠組条約事務局が昨年報告した調査によれば、現在進行している気温上昇の30%から50%がメタン漏出に起因していると考えられ、昨年のCOP 26では、約100か国が2030年までにメタンの排出量を30%削減することを約束したが、CO₂やメタンを大気中に放出している場所に衛星を使用して観測・特定する活動を進めているCarbon Mapperは、世界で初めて、地球全体のメタン漏出点を衛星から見た情報を公表した。メタン漏出は漏出点から最大320㎞も広範囲に拡散している。メタンは通常、天然ガスのcompressor stationなどのバルブやパイプラインの保守管理作業の時などや、ごみの埋め立て・農業・石炭の採掘現場からも意図せずに漏出している。今回の調査では、関係企業がこうした漏出を防ぐ投資をすれば、比較的簡単に漏出が止められると思われる石油・ガス田に焦点を当てている。

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BBC (01/28)

2.格安航空会社がEU域外との航空路線もETSの対象とすべきと主張

EU ETSはEU域内の航空輸送にのみ適用され、EUとEU域外との間の輸送には、ETSの代わりに国際民間航空機関が運用するCORSIAが適用されるが、CORSIAの方に負担が少ないとして、Ryanair/easyjet/jet2/WizzAirといった独立系の格安航空会社は、EU域外との間の長距離航空路線にも公平上、ETSを適用すべきとする共同声明を発表した。欧州の航空管制機関であるEUROCONTROLによれば、長距離航空輸送の割合は、全体の6%にすぎないが、CO₂排出量で見た場合、全体の52%がEU域外と結ぶ長距離路線から排出されている。しかし、EU域外との長距離路線にもEU ETSが適用された場合、EU域外の空港に長距離路線のハブを移転する「航空版carbon leakage」可能性があると大手航空会社が脅す一方で、NGOの「交通と環境」が1月に発表した報告書では、EU ETSを回避するために、長距離航空路線がEU域外の空港を経由する可能性は、追加的に発生する燃料・乗員・航空機のコストを考えると、経済的に現実的ではないとしている。

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Ruractiv (01/28)


3.米国で国連海洋法条約批准への議論が再燃

中国に対抗して、米国の製造業の競争力を高めるために、2月3日に米国下院で承認された「米国競争法」の中に、国連海洋法条約の批准が含まれている。同法を推進する民主党議員は、インド・太平洋において、中国に対抗して「法の支配」の理論を強固に展開するためにも、今こそ米国が海洋法条約に加入するときであると主張している。米国海軍や沿岸警備隊は既に、艦隊運用方針として、国連海洋法に定める航海の原則に従っており、概ね国連海洋法の批准を支持しているが、一方で、国連海洋法に定める深海底資源開発の規定によって米国の主権が制限されること、さらに国連仲裁裁判所の中国と比の領海紛争に関する裁定を中国が無視していることからも、仮に米国が国連海洋法条約に加入しても、中国に法の支配を守らせるには役立たないと反対派は主張している。米国競争法は上院の法案と下院の法案が今後調整されるので、国連海洋法批准の部分も削除・変更される可能性があり、何より、条約批准のためには、大統領の支持と50対50に分かれている上院で67票以上の支持を得る必要があり、前途多難である。

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Breaking Defense (01/28)


4.米上院でも「外航海運改革法案」が超党派で提出

昨年12月に、米下院において超党派で「外航海運改革法案」が圧倒的多数で可決されたが、上院でも同様の法案が超党派で提出されたところその概要は以下のとおり。①コンテナの超過保管料金・返還遅延料金の請求が連邦規則に合致していることの証明を海運会社に要求。②超過保管料金・返還遅延金の妥当性に関する立証責任を荷主から船社に転換。③連邦海事委員会(FMC)の規則に従い、米国の輸出貨物の輸送を合理的な理由がなく海運会社が拒否することを禁止。④定期船海運会社に四半期ごとにFMCに対し、米国に寄港した船舶が輸送した輸出入貨物の量を報告することを義務付け。⑤FMCが独自に、定期船海運会社の業務慣行について調査を開始し、必要に応じて、法の順守を命じる権限をFMCに授与。

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gCaptain (01/28)


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