国際海洋情報(2022年1月27日号)

1.世界の過半数の海表面の温度が歴史的な平均水温より上昇

2014-2016年に太平洋で発生したblobや、2019年に発生した小規模なblobなどの海水温の異常な上昇によって、藻類ブルームやサンゴ礁の白化が発生し、その結果大量の魚類や魚類をエサにしている海鳥が死滅する影響が出るが、このような海水温の異常な上昇は、2014年に全世界の過半数の海表面の海水温が、これまでの歴史的な平均水温より上昇して以来、「新たな常態(new normal)」となりつつあり、将来的にこのような海水温の異常上昇がより顕著にかつ頻繁に発生すると科学者は予想している。1900年代前半には、歴史的平均海水温より海水温が高くなる海域は、海洋全体の20%以下だったが、2017年にはこの比率が60%までに上昇している。

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New Scientist (01/27)


2.海水温の上昇により2080年までに海洋の中深層の70%で酸素欠乏状態に

Geophysical Research Lettersに発表された論文によれば、漁業の対象となる魚類の大半が生息する水深200mから1000mの中深層では、2021年から海水中に含まれる酸素濃度の不可逆的減少が、海水温の上昇によって始まっており、2080年までに海洋の70%が低炭素状態となって、海洋生態系と漁業に大きな影響を与えることが分かった。海水温が上昇すると、海水中に含まれる酸素濃度が低下するだけでなく、海水の循環が弱まり、海水の上層部のように大気や光合成から酸素を得ることができない中深層では、藻類が分解する際にも酸素が失われるので、海水の低炭素化が発生しやすい。地域的にみると、極圏に近い北部・西部太平洋や南極海において海水の低炭素化の影響が強く出る一方、熱帯でもともと海水中に含まれる酸素の量が少ない「酸素最低海域」の範囲も広がる傾向にある。

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Phys.org (01/27)


3.米国ヴァージン諸島に新たな米国第2船籍制度が発足

マサチューセッツにあるNortheast Maritime Institute(NMI)は私立の海事大学であるが、同大学の海洋政策経済センター(COPE)が作成した「米国の海上貿易・商業・戦略的競争力再活性化計画」に基づき、2月1日、米国領ヴァージン諸島に新たな国際Open Registryが開設された。COPEが最近発表した報告書によれば、「同諸島に独立した国際open registryを新設することにより、米国・外国によって所有・運航される商船の責任ある透明性の高い管理が可能となり、米国が様々な国籍の商船を管理下に置くことによって、国際便宜置籍制度の見直しが可能となる。国際貿易に特化した米国の第2船籍制度を持つことによって、米国籍船・米国の海事労働力を大幅に増加し、船員の安全性に関する国際基準を保持し、世界貿易への影響力を増し、海運の脱炭素化を促進し、米国海運への金融・投資・所有を誘発することができる。」としているが、船員労働組合は、第2船籍制度の創 設を強く批判する共同声明を発表している。

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gCaptain (01/27)


4.2000年かけてできたエベレスト山の氷河が25年間で融解

地球温暖化の影響で、地球上で最も高い高度にあるエベレスト山の氷河が約25年間にわたり融解を続けていることにより、雪崩が頻発し、飲料水・灌漑用水・水力発電の源として氷河の雪解け水に依存してきた16億人の周辺人民の水源が枯渇するという影響を与えている。Nature Portfolio Journal Climate and Atmospheric Science誌に発表された論文によれば、South Col氷河上の氷は2000年かけて形成されてきたが、わずか25年間で融解した。地球温暖化の影響で、氷河を覆っていた雪が無くなり、氷河が直接大気に晒されることにより、25年間で55mの氷が失われ、また雪によって太陽光を反射する能力が失われ、熱の吸収により氷河の融解と蒸発が加速化している。

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CNN (01/27)


国内ニュース

1.商船三井:風を船の推進力として活用する硬翼帆完成
原文
2月1日、商船三井

2.三菱造船:CCUSを目的とした液化CO2船舶輸送の実証試験船の建造契約を締結
原文
2月2日、三菱造船

3.三菱造船:海洋脱炭素を担う専門組織を新設
原文
2月1日、三菱造船


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