国際海洋情報(2022年1月26日号)

1.欧州:再生可能エネルギーの拡大が天然ガスへの依存を減らす

欧州では昨年半ば以来、天然ガス供給不足によって、天然ガスの価格が高騰して、産業界ばかりか、家庭の家計も直撃しているが、再生可能エネルギーの拡大によって、EUのエネルギー源としての天然ガスへの依存度が緩和されつつある。英国の気候問題のシンクタンクであるEmberが発表した報告書によれば、2019年から新たに稼働した再生可能エネルギー発電の過半数は、天然ガス発電所の代替として建造された。天然ガスの価格が石炭より割高になっているため、電力事業者は、再生可能エネルギーのバックアップとして、石炭火力発電に頼る傾向があり、環境に最も悪影響を及ぼす石炭火力発電を撤廃するEUの計画を危うくしている。昨年の天然ガス価格の高騰により、石炭火力発電の方が相対的に収益性は高くなり、昨年の電力需要の増加率よりはるかに高い率で石炭消費量が増加した。

原文
Yahoo Finance (Bloomberg) (01/26)

2.LA・上海港が太平洋を横断するGreen Shipping Corridorの設定に合意

ロサンゼルス港・上海港・気候変動対策に取り組む世界の市長連合であるC40は、世界中でも、最も荷動きの多い航路である米国最大の港湾であるLA港と中国最大の港湾である上海港との間の航路において、Green Shipping Corridorを設立し2022年末までに、どのようにCO₂の排出を実削するかについて具体的な実行計画であるGreen Shipping Corridor Implementation Planを作成することに合意した。具体的には、①2020年代を通じて、低・超低・ゼロ炭素燃料船を段階的に投入し、2030年までに能力と意欲のある海運会社によって、世界初の脱炭素コンテナ船を就航させる。②本航路を利用するすべての船舶がCO₂排出を削減し、エネルギー効率を向上するためのbest management practiceを作成する。③両港と周辺地域の大気汚染を改善するため、港湾の運用に伴うCO₂の排出を削減する。

原文

C 40 Cities (01/26)


3.IEA:2022年第1四半期「天然ガス市況」報告書

標記報告書の概要は以下のとおり。①2021年における世界の天然ガス消費量は、コロナからの経済復興と異常気象が継続したことにより対前年比4.6%増加したが、供給が需要増に追い付かず、天然ガス価格が高騰したため、昨年下半期は需要増が抑えられた。②昨年末には、供給量が極めて不足したため、欧州とアジアの市場ではスポット価格が史上最高を記録した。③今後の短期的な需要の見通しは、北半球における残りの冬季の気候次第となるが、平年並みの気温とすると、天然ガスの高値・経済成長の鈍化・供給量の回復により、天然ガス市場の拡大が鈍化することが予測される。④極めて高い天然ガス価格の影響は北半球の冬季の市場にとどまらず、中近東などの伝統的なガス輸出市場や、新興の輸出市場にも影響を与えている。

原文

IEA (01/26)


4.2021年には12年ぶりに北極海両航路とも海氷が無い日がゼロ

北極圏は地球の他の地域の2倍から3倍のペースで温暖化が進んだ結果、2020年には、北極圏は記録的な高温を記録して、ロシア側の北極海北東ルートでは、海氷が航路上に無い日数が88日間に達していたが、1月31日、Weathernews社が発表したところによれば、2021年における北極海の海氷の状況は、通常海氷が溶ける7月の気温が平年より低かったため、海氷があまり溶けることがなく、通常海氷の面積が最小となる9月の海氷の最小面積が461万㎢と過去7年間で最大の面積となった。この結果、北極海北東ルート(ロシア沿岸)では2009年に観測を開始して以来、北西ルートでは昨年に続き2年連続で、航路上に海氷が無くなる日がゼロという結果となった。

原文

Weathernews (01/26)


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