国際海洋情報(2022年1月25日号)
1.米連邦裁判所:メキシコ湾の石油・ガス開発のリース権競売を無効と判決
昨年11月に海洋エネルギー管理局はメキシコ湾の約3740haにわたる海底の石油ガス開発リース権の競売を実施し、米国の石油メジャーであるExxon MobilやChevronが69万ヘクタールのリース権を、2019年以来の最高額である総額1.9億ドル以上で落札した。この競売に対して、環境団体が、競売の前提として米政府が実施した環境影響評価において用いられた分析が古いもので、開発に伴うGHGの排出を適正に評価していないとして、連邦裁判所に対して競売の無効を申し立てていた。1月27日、米連邦裁判所は環境団体の申し立てを支持して競売を無効と判決した。エネルギー情報庁によれば、メキシコ湾では、米国内で生産されている原油の15%と天然ガスの5%が生産されており、今回の裁判所の決定は、これまで長期間にわたり、連邦政府の重要な収入源となってきた連邦洋上石油ガス開発プログラムの見通しを不透明なものとした。
原文
Reuters (01/25)
2.過去20年間の家庭のエネルギー効率の向上で光熱費が年間1000ポンド減少
政策分析機関であるRegulatory Assistance Project (RAP)の報告書は、EUの規制によって、電球・冷蔵庫・洗濯機などの電化製品は、20年前と比べて消費電力量が激減しており、電化製品やボイラーのエネルギー効率の向上によって、英国の家計1世帯当たり、年間1000ポンド(約15.5万円)の光熱費が節約されているが、今後政府が住宅の断熱化を進めれば、さらに光熱費を半減できる可能性があると発表した。英国政府の電力・ガス市場局は電力・ガス事業者が各家庭に請求できる光熱費の上限額(energy price cap)を定めているが、現在は年間約1300ポンド(約20.2万円)が上限額だが、昨年からの天然ガス価格の高騰により、今年の4月から、2000ポンド(約31万円)に引き上げられる予定。過去20年間に実施された電化製品やボイラーに関するエネルギー効率の引き上げに関する規制強化がなければ、上限額は年間3000ポンド(約46.5万円)になっていたとRAPは見積もっている。
原文
The Guardian (01/25)
3.プラスチックから水中に多くの有害物質が滲出
ノルウェー科学技術大学の生物学の研究者によれば、自然界において、プラスチックに含まれている多くの化学物質が水中に滲出していることが判明した。プラスチックには最大で2万種類の異なる化学物質が含まれているが、これらの化学物質の多くは有害であるものの、我々はまだプラスチックが人類の健康にどれだけ有害かわかっていない。プラスチックに含まれる化学物質は、プラスチックが環境に流れ出すことなく、プラスチックである限りは有害ではないが、自然環境の下で、10日間、24種類の良くあるプラスチック製品を水につけた後に、水に含まれる科学物質とその有害性について分析したところ、すべてのプラスチック製品から化学物質が水中に滲出し、いくつかの化学物質は酸化ストレスを通じて細胞を損傷し炎症や慢性疾患の原因となることがわかった。
原文
Norwegian SciTech News (01/25)
4.ギリシャ船主協会:欧州議会の海運に関するEU ETS改正提案を支持
1月28日発表された標記声明の概要は以下のとおり。①ギリシャ船主協会(UGS)は欧州議会の報告者が提出した海運に関する欧州排出権取引制度(EU ETS)に対する改正案を歓迎する。②報告書では、海運分野のETSから得られる収入の最低75%を独立した「海洋基金」に分配して、海運の脱炭素化に投資されるべきとされている。③大手コンテナ船社の団体である世界海運協議会(WSC)が、欧州議会の報告書に反対しているのは残念なことである。コンテナ船社は、ETSのコストを含む脱炭素化のコストを荷主に簡単に転嫁できるが、(UGSが代表するばら積み・不定期船業界ではそのようなコスト転嫁は容易でない。)④USGは海上貨物の85%を輸送するばら積み・不定期船の船主の団体であり、多くの中小船主が完全な競争下で事業をし、価格決定権も持っていない。従って、船舶の用船者が「汚染者負担」の原則のもとに、ETSの負担もすべきで、負担者の範囲を拡大する欧州議会の提案を支持する。
原文
The Union of Greek Shipowners (01/25)
Webinar情報
1.Euractiv: Ensuring the effective integration of hydrogen within the EU’s energy system
February 4, 9:30-10:45 CET
https://www.eventleaf.com/Attendee/Attendee/RegistrationForm?EId=uup6vUxMD6FaJEQ6P3Hnnw%3D%3D&SId=63c2ab11-7ad9-4fce-9fc6-8cde5ccc606f
2.Economist Impact: World Ocean Summit Virtual Week
March 1-4
https://eventsregistration.economist.com/event/61d9b752-e431-40ba-8da2-39ccab8ead8d/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg&utm_campaign=wos2022&utm_medium=Eloqua&RefID=EM04&utm_content=top-speakers&utm_source=email
3.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg