国際海洋情報(2022年1月19日号)

1.欧州議会:EU ETS(海運部分)の改正案を発表

欧州議会の報告者(Rapporteur)は、欧州排出権取引制度(EU ETS)に関する欧州委員会の提案に対する改正案を提案したところその概要は以下のとおり。①船舶から排出されるCO₂の排出に関する完全な報告義務が2025年から適用。②2028年までにIMOが船舶からのCO₂の排出に関して、国際的な排出権取引制度を創設しない場合は、非EU諸国とEU諸国との間の船舶の運航から排出されるCO₂の100%(現在の欧州委員会提案は50%)をEU ETSの適用対象とする。③「海運会社」の定義に「定期用船者」も含める。④最終的な排出権購入義務を必ずしも「海運会社」にあたらない「商業上の船舶運航者」に負わせる。⑤排出権取引の対象となるGHGの範囲をパリ協定の目的達成のため2026年以降拡大する。⑥海運脱炭素化・クリーンな燃料・内航海運・よりクリーンな港湾に関する研究開発の資金を負担する「海洋基金」の創設を勧奨する。

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Offshore Energy (01/19)

2.WSC:欧州議会のEU ETS(海運部分)改正案を非難

コンテナ船社の国際業界団体である世界海運協議会(WSC)は、欧州議会の報告者が発表したEU ETS(海運部分)の改正案を強く非難する声明を発表したところその概要は以下のとおり。①改正案では排出権の購入義務者の範囲を拡大し、船主が排出権購入の負担を回避することを許す一方で、「海洋基金」を通じ、船主がETSの収入からメリットを受けることができるシステムになっている。②この結果、EU ETS制度が「汚染者負担」の制度から、「汚染者が利益を受ける」制度に腐敗し、EU ETSによって海運の脱炭素化を促す効率性を大きく損なうものである。③船舶の技術革新のペースを自らコントロールできる船主が支払義務を必ずしも負わないEU ETSでは、EU Green Dealの目的は達成できないし、エネルギー転換のペースを鈍化させるものである。④非EU諸国とEU諸国との間の海運活動にEU ETSを100%適用するために、EUとの間の航路を持つ非EU諸国と二国間協定を締結するという改正案は、欧州委員会の原則である多国間主義を放棄し、IMOにおける世界的なGHG削減のための議論に悪影響を与え、海運脱炭素化のペースを遅らせ、GHGのleakageやEUの港湾の競争力の低下、貿易の歪曲といった結果をもたらす。

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World Shipping Council (01/19)


3.Plastic Bank:途上国でプラスチックボトル20億本を回収

プラスチックバンクは、フィリピン・インドネシア・ブラジル・エジプトなどの途上国で、プラスチックのリサイクル産業を育成するために、人材の育成や必要なインフラの提供を行っており、これまでに10億本のプラスチックボトルの回収リサイクルを行ったが、1月24日、同バンクは、参加企業数が全世界で200社を超えたことにより、上記4か国で、3万人以上の人々が参加して、511の場所で、わずか8か月の間にさらに10億本のプラスチックボトルを回収したと発表した。プラスチックボトルを回収する人々は、回収したボトル数に応じて収入を得て、食費・教育費・医療費・通信費などの生活改善のために充てている。この運動はSC JohnsonとHenklによって開始されたが、今後活動の範囲を東南アジアや中央アフリカ諸国に拡大していく予定。SC Johnsonは同社の製品のプラスチック容器の15%を再生プラスチックの原料にする目標を立て、同目標を目標年次より4年早く達成し、2021年には19%に達している。

原文

edie (01/19)


4.インド政府:日本の海運会社に対して自動車輸送の価格カルテルで罰金

インドの競争委員会(CCI)は、2009年から2012年までの間に、日本郵船・商船三井・川崎汽船・日産専用船の4社が、複数の航路で、「相互尊重ルール」を結んで競争を回避して、営業上の情報を共有し、価格カルテルを実施したとして、日産専用船に384万ドル、川崎汽船に324万ドル、商船三井に135万ドルの罰金の支払いを命じ(日本郵船は100%免除)、それぞれの会社の従業員(日本郵船14人、川崎汽船10人、商船三井6人、日産専用船3人)を有罪とし、違法行為の即時停止と将来的にも違法行為を行わないことを命じた。これらの船社が自動車輸送船の価格カルテルで有罪になった例としては、2016年に日本郵船が、2018年に川崎汽船がそれぞれ豪で有罪と認定され、韓国公正取引委員会は、2017年に上記の会社を含む数社を有罪とし、米国の連邦海事委員会も9社の自動車輸送会社に対して、合計3700万ドル以上の罰金を科した前例がある。

原文

The Maritime Executive (01/19)


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