国際海洋情報(2022年1月18日号)

1.欧州議会:航空燃料を2050年までに全量持続可能な燃料にすることを提案へ

昨年7月に欧州委員会によって、EU域内で給油する航空機に対し、一定割合の持続可能な燃料(SAF)が混入した航空機燃料を使用することを義務付けるReFuelEU Aviation法案が提案されたが、Euractiv誌が非公式に入手した欧州議会による航空燃料に関する提案は、欧州委員会案を大幅に強化して、航空機燃料に占める持続可能な燃料(SAF)に占める割合を2050年までに63%とする欧州委員会提案から100%に引き上げ、再生可能電力から製造される航空機燃料の比率を同様に28%から65%に引き上げる内容となっている。さらに、2030年までに航空機燃料に占めるSAFの割合についても、5%から8%に引き上げることを提案する。さらに、議会案では、電気または水素を燃料とする航空機に対する燃料供給施設の整備を欧州域内の空港に整備することを法律上義務付ける。この案は欧州議会の環境委員会の報告者(rapporteur)によって作成され、現在運輸委員会の審議に回されているが、欧州議会総会の最終意思決定に影響を及ぼすものとみられる。

原文

Euractiv (01/18)


2.欧州港湾協会:EU ETSに対する意見を表明

1月24日発表された表記意見の概要は以下のとおり。①欧州港湾協会(ESPO)は海運をEU排出権取引制度(ETS)に含めることを支持する。②しかし、国際的に共通の市場原則に基づく措置の方が最も望ましい解決策である。③船舶はEU ETSの義務を逃れるために、EUに近接した非EU諸国の港湾に避航することが懸念され、EU ETSの有効性をそぐばかりか、海運全体としてのCO₂削減にもつながらない。④ESPOは現在の欧州委員会の提案によって発生しうる炭素(ビジネス)リーケージに関する完全な影響調査の実施を要求する。⑤法律的に可能であれば、解決策としては、ETS適用逃れのための非EU近隣港湾への避港を、EU域内の港湾への寄港とみなして、ETSの対象にすべきである。⑥EU ETSの海運への適用によって得られる収入については、欧州の海運事業の脱炭素化のために使われるべきである。

原文

ESPO (01/18)


3.英国大手投資機関:気候変動対策を取らない会社経営陣に対して圧力

2620億ポンド(約40兆円)の投資資産を持つ英国の投資運用会社であるAvia Investorsは投資を行っている30か国の1500社に企業に手紙を送り、持続可能性に従って経営を行わない経営者に対しては人事権を行使して退出を求め、或いは経営者の年棒も持続可能性の尺度に従って判断すると警告した。さらに「持続可能性」の定義を気候変動対策だけではなく、生物多様性・人権にも広げて、評価を行うと通告した。世界最大の投資ファンドであるBlackRockも投資先企業に、持続可能性を高める措置を実施しなければ、人事権を行使すると通告した。Avia社は、昨年1年間で、同様の圧力を投資先企業にかけて、280社の企業の経営方針を持続可能性に沿ったものに変更したが、他の投資家も同様の圧力を投資先企業にかけるべきとしている。

原文

BBC (01/18)


4.太陽光パネル価格高騰は中国のサプライチェーンのリスクの象徴

中国は世界の太陽光パネルの80%以上を供給しているが、中国による太陽光パネルの供給不足によって、太陽光パネルの価格が一年前と比較して50-60%上昇したため、世界の多くの国の太陽光発電事業者は事業拡大のペースを鈍化させている。昨年9月に、中国国内で発電用石炭の価格が突如急上昇したうえに、政府が電力価格の引き上げを認めなかったために、多くの発電事業者が発電を停止し、中国全土に電力不足が広がった。さらに、中国政府は2025年までの5年間でCO₂の排出量を18%削減するため、地方政府に対して、GDPに対する電力使用量の割合を13.5%削減することを求めているため、エネルギー多消費型の製品の価格が上昇した。太陽光パネルの主な原料のシリコンも、主産地である雲南省と四川省が、エネルギー消費削減目標を達成するために、シリコンの生産量を90%削減した結果、昨年の第4四半期にシリコン価格が4倍となった。同時に、同国内の太陽光パネル生産の大手の5社は、中国政府から電力の使用量の削減を求められたため、今回の太陽光パネル価格の急上昇を招いた。

原文

Asia Times  (01/18)


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