週刊国際海洋情報(2022年1月8日号)
- 1.中国:英国を抜いて世界最大の洋上風力発電国に
- 2.欧州委員会:一定の条件の下で原子力と天然ガスをグリーンと認定する案を作成
- 3.デンマーク:国内航空路線を2030年までに脱化石燃料化
- 4.CDCに登録された乗客を乗せたすべてのクルーズ船でコロナ発生
- 5.BIMCO:ギニア湾沿岸諸国は海賊の刑事訴追に協力すべき
- 6.米国で進む化石燃料への投資の中止・引き上げ
- 7.中国寧波港:コロナ感染の拡大でターミナル物流が混乱
- 8.オミクロン感染拡大で大手クルーズ船社が相次いで航海をキャンセル
- 9.日豪クリーン水素貿易パートナーシップ
- 10.英国国際貨物協会が英国政府にコンテナ業界の競争状況について調査を要請
- その他のニュース
1.中国:英国を抜いて世界最大の洋上風力発電国に
中国は洋上風力発電施設の整備を急速に進めており、12月の第4週だけでも、中国最大のタービンを導入した最大のwind farmと、台風の強い波風にも耐えられる最初の浮体式wind farmと、東部中国のwind farmの拡張といった3事業を相次いで認可した。この結果、中国国家統計局によれば、2021年上半期末の時点で、同国の洋上風力発電能力の総量は7.9GWだったが、2021年末には11.2GWまで拡充され、これまで世界最大の洋上風力発電国であり、2020年末で10.2GWの発電能力を持っていた英国を抜いて、中国が世界最大の洋上風力発電国となる見込みとなった。台風の波風にも耐えられる浮体式洋上風力発電技術の開発によって、これまで中国の北西部に主として建設されていた風力発電施設を、電力の主要消費地であり、土地のスペースが限られている中国東部地域の洋上に建設拡大することができることとなる。
原文
The Maritime Executive (21/12/27)
2.欧州委員会:一定の条件の下で原子力と天然ガスをグリーンと認定する案を作成
欧州委員会の作成した案によれば、新たな原子力発電の建設については、放射性廃棄物を処理する資金と場所を確保したうえで、2045年までに建設許可を受けることがグリーンとみなされる条件となる。新たな天然ガス発電所については、より多くのCO₂を排出する化石燃料を使用する火力発電所を代替する目的で、CO₂排出量を270g/kWh以下とし、2030年末までに建設許可を得、2035年末までにさらに炭素排出量の少ないガスに燃料を転換することが条件とされている。EUの専門家は、天然ガス発電について、CO₂排出量を100g/kWh以下に削減できなければ、グリーンと認定すべきでないとしている。EU加盟国とパネルの専門家は、欧州委員会の案を精査したうえで、欧州委員会は1月末までに提案を最終化するが、理事会と議会の承認を得る必要がある。グリーンと認定されれば、民間金融機関からの融資が優先的に受けられるだけでなく、公共的な支援を受ける条件を満たすことにもなる。
原文
Reuters (21/12/27)
3.デンマーク:国内航空路線を2030年までに脱化石燃料化
デンマークは2030年までに、1990年実績比でCO₂の排出量を70%削減することを目標としているが、同国首相は、新年のスピーチで、2030年までに国内航空路線で化石燃料の使用を停止すると発表した。同首相は、現段階でその目標を実現するための代替燃料が開発されていないことを認めたうえで、世界の各国が二の足を踏む中、同国が目標を引き上げて、世界をリードするとした。エアバス社は、水素を燃料とする航空機の運航を2035年までに達成すると発表している。スウェーデンも同様に国内線を2030年までに脱化石燃料化し、さらに2045年までに国際線も脱化石燃料化することを目標としており、CO₂を多く排出する航空機に対して、空港利用料金を引き上げることを検討している。フランスも、高速鉄道を利用して2時間半以内で移動できる路線については、国内航空路線を禁止することを検討している。禁止が実現すれば、パリ=ナンテ・リヨン・ボルドー間の国内航空路線が影響を受けることとなる。
原文
BBC (21/12/28)
4.CDCに登録された乗客を乗せたすべてのクルーズ船でコロナ発生
米国疾病予防対策センター(CDC)に登録されている110隻のクルーズ船のうち、乗客を実際に乗せて運航している97隻のクルーズ船全てにおいて、コロナ感染者が報告されたと1月4日、CDCは発表した。具体的な感染者数は公表されていないが、ほとんどが乗客・乗員総数の1%未満の感染率であると考えられ、すべての乗員・乗客は乗船前にワクチン接種が義務付けられているため、ほとんどの感染者が無症状または軽い症状にとどまっており、ほとんどのクルーズ船は予定とおり運航を続けており、現在の「条件付き運航許可(Conditional Sailing Order)」についても、1月15日で期限切れとなり、期限が延長されなければ、CDCによる船上での検査やCDCに対する感染状況の報告義務も終了することとなる。Royal Caribbean社によると、感染者数は増えているものの、6月から運航を再開して以来、感染者のうち入院が必要となった乗客は合計で41人にすぎず、オミクロン株ではなかった。
原文
The Maritime Executive (21/12/28)
5.BIMCO:ギニア湾沿岸諸国は海賊の刑事訴追に協力すべき
デンマークの海軍は10月末からギニア湾における海賊対策に従事し、4月24日に海賊船と交戦して、4人を逮捕し負傷した1名を除き、3人の海賊は同海軍のフリーゲート艦内で拘束されていたが、同海軍は、1月6日、拘束していた海賊を釈放すると発表した。欧州を中心とした海軍の展開によって、2021年の第4四半期は対前年同期比で、海賊による襲撃件数が23件から7件に、誘拐された船員の人数が50人から20人に激減した。昨年の7月には、トーゴの裁判所で海賊4人に対して12年から15年の懲役刑が言い渡された事例があるが、今回のデンマーク海軍の事例のように折角捕まえた海賊を訴追することについて、沿岸国の協力がなければ、国際的な海軍による海賊取り締まり効果は不十分なものとなるので、沿岸国は海賊の刑事訴追により積極的に協力すべきである。
原文
BIMCO (01/04)
6.米国で進む化石燃料への投資の中止・引き上げ
Global Fossil Fuel Divestment Commitments Databaseは化石燃料への投資の中止・引き上げを宣言した約1500の組織が実際に投資の中止を実施しているか追跡調査を実施している。1500の内訳としては、宗教団体(約35%)・教育機関(約15%)・慈善団体(約12.6%)・年金基金(11.8%)・政府系金融機関(11.4%)・営利企業(8.7%)となっている。例えば、教育機関の中で最も寄付金の多いハーバード大学では、過去10年間にわたって、化石燃料の新たな資源の探査・開発に対する投資を大学が中止するよう要求する運動が実施された結果、ついに2021年9月大学として正式に投資の中止が決定された。ボストン大学をはじめ多くの大学が、ハーバードの例に倣って、同様の投資を中止する見込み。しかし、世界の化石燃料関連事業の多くは国営のため、こうした機関の化石燃料への投資中止宣言は、象徴的な意味は持っても現実的に化石燃料関連事業者に与える影響は少ない。
原文
Yale Climate Connections (01/04)
7.中国寧波港:コロナ感染の拡大でターミナル物流が混乱
4日付環球時報によれば、中国東部浙江省の寧波市では、衣料品製造工場でデルタ株のクラスターが発生し、1月3日の段階で、23人の感染者が確認されたため、1663人の感染者が出た西安に続き、世界最大級のコンテナ港湾である寧波・舟山港の一部であるBeilun地区でロックダウンが実施され、住民は外出禁止で、すべての商業活動も停止している。この結果、6日付のマースクの情報によれば、トラックと運転手の活動制限によって、同港のヤードと倉庫の一部は既に運用停止となっており、旧正月に向けて、事態はさらに悪化する可能性がある。昨年の8月も同港では、コロナの影響で、同港からの輸出が遅延して、同港からの自動車・機械・電子部品などの輸出に依存する欧米の事業者や消費者に大きな影響を与えた。
原文
gCaptain (Bloomberg) (01/05)
8.オミクロン感染拡大で大手クルーズ船社が相次いで航海をキャンセル
Royal Caribbean Cruises(RCC)社とNorwegian Cruise Line(NCL)社の大手クルーズ船2社は、1月5日、オミクロン株感染の拡大を受けて、相次いでクルーズを中止した。RCCは1月2日、乗船中の9人の乗客が濃厚接触者と認定され、これらの乗客は検査の結果陰性と判定されたものの、全乗員・乗客の検査をやり直すために、1月5日香港に戻って、クルーズを中止した。NCL社も1月3日、米国で1日の感染者数としては過去世界で最大の約100万人のコロナ感染者が出たのを受けて、8隻のクルーズ船の運航を中止し、運航再開を最長で4月まで延期すると発表した。業界最大手のCarnival Corp社は、いかなる運航の中止もしないと宣言しているが、クルーズ旅行を予約した旅客側からのキャンセルの動きも出ている。上記3社の株価は、1月5日、2.1%から3.6%下落した。
原文
Reuters (01/05)
9.日豪クリーン水素貿易パートナーシップ
豪政府は同国の水素供給網への外国投資を誘致することによって、同国のクリーン水素輸出産業を振興して、新たな経済成長と雇用の創出を図っている。このため、同国政府は5年間にわたり1.5億豪ドル(約125億円)をかけて、Australian Clean Hydrogen Trade Program (ACHTP)を創設・支援し、同プログラムの第一弾として、「脱炭素技術に関する日豪パートナーシップ協定」に基づき、日本にクリーン水素を輸出することに重点を置く。ACHTPはクルーン水素の輸出サプライチェーンの開発事業やクリーン水素やクリーン水素から製造されるクリーンアンモニアの生産の商業化事業の支援を行う。クリーン水素関連事業によって、2050年までに新たに1.6万人の雇用を創出し、関連する再生可能発電インフラ施設の建設によって、さらに1.3万人の新規雇用を生み出し、500億豪ドル(約4.2兆円)のGDPを追加する見込み。
原文
豪首相府 (01/06)
10.英国国際貨物協会が英国政府にコンテナ業界の競争状況について調査を要請
英国のフォワーダー・物流企業の主たる業界団体である英国国際貨物協会(BIFA)は、大手のコンテナ船社が行っている特定の慣行や、競争法上大手船社が受けている特例措置や適用除外措置によって、競争的な市場の運営が妨げられ、国際貿易を阻害していないかについて、英国政府が調査を実施するよう求める書簡を運輸省の政務次官に送付した。BIFAの理事長は「コンテナ海運分野における「管理された混乱」の中で、商業的な寡占が発生し、市場における選択と競争の余地が狭まり市場環境が阻害され、フォワーダーや中小企業が不公正な扱いを受けている。2015年には、世界のコンテナ海運市場に27の大きな海運会社があり、これらの海運会社の市場シェアは15.3%にすぎなかったが、現在は、15社が3つのアライアンスに分かれて運航し、特定の航路では一つのアライアンスが40%以上の市場シェアを持つなど寡占が進んでいる。」と主張している。
原文
Container News (01/06)
その他のニュース
1.パンデミック関連
(ア)クルーズ船の運航
①欧州
独クルーズ船:乗組員の大量感染でクルーズを途中で中止 原文12/28
2.気候変動
(ア)海水温の上昇
①サンゴ礁の白化
白化して海藻に覆われたサンゴ礁に住む魚の方に栄養素が豊富 原文1/6
(イ)気温上昇
①欧州
Copernicus: 2021年は1979年以来5番目に暑い年に 原文12/28
(ウ)氷河・海氷の減少
①グリーンランド
2021年北極圏の気象状況(Polar Portal Season Report 2021) 原文1/4
(エ)異常高温
①発生頻度
100年に1度発生していた熱波が、2030年までに2年に1度発生 原文1/4
(オ)異常気象に伴う損害
①電力事業者
米電力事業者は気候変動の影響で年間41億ドルの損害を被る恐れ 原文1/5
3.エネルギー転換
(ア)原子力の扱い
①EU
EU: 新たな原子炉の建設のため2050年までに5000億ユーロが必要 原文1/6
4.大気汚染
(ア)総合
①健康被害
大気汚染によって全世界で毎年180万人が死亡 原文1/5
5.競争政策
(ア)各国政府による海運活動への介入
①米国
FMC: 海運会社に対する不平申し立てに関するガイドラインを発表 原文12/27
6.港湾
(ア)港湾混雑問題
①LA/LB港
LA港:1月末から9日以上放置されている空コンテナに課金か 原文12/27