国際海洋情報(2022年1月6日号)

1.EU:新たな原子炉の建設のため2050年までに5000億ユーロの投資が必要

欧州委員会の域内市場担当コミッショナーが、仏の新聞のインタビューに対し、EU域内の今後の原子力発電所に対する投資の必要性について語ったところその概要は以下のとおり。①既存の老朽化している原子力発電所の運用期間の延長のために、2030年までに500億ユーロ(約6.6兆円)、新規原子力発電所の建設のために5000億ユーロ(約66兆円)の投資が必要となる。②必要投資額を確保するためには、原子力がグリーンなエネルギーとしてEUの承認を受けることが不可欠となる。③現在EU内部で、原子力を持続可能なエネルギーとして認めるべきか調整が行われているが、原子力を主たるエネルギーとする仏が賛成する一方で、原子力の撤廃を決めているオーストリアと独は反対している。④現在EU全体のエネルギー源の中に占める原子力の割合は26%だが、再生可能エネルギーを増やして、2050年までに原子力のシェアは15%まで削減される見込み。⑤原子力発電所新設のための条件として、核廃棄物の管理と処理の計画を立てることと、2045年までに建設認可を受けることが求められている。

原文
France 24 (AFP) (01/06)

2.白化して復旧しない海藻に覆われたサンゴ礁に住む魚の方が栄養素が豊富

サンゴ礁は多くの海洋生物の生息の場となっており、サンゴ礁が無くなると多くの海洋生物が絶滅の危機に瀕する。1998年にセイシェルで発生した大規模なサンゴの白化によって約9割のサンゴ礁が死滅した。その後、6割のサンゴ礁は元の状態に復元したが、4割は海藻に覆われた礁となった。世界中では600万人の住民が零細漁業に依拠し、魚から必要なビタミンやミネラルの約半分を摂取しているが、ランカスター大学の研究者等は、元の状態に戻ったサンゴ礁と海藻に覆われたサンゴ礁に生息している魚の栄養分を比較した。この結果、サンゴ礁に住んでいる魚より、白化して海藻に覆われたサンゴ礁に生息する魚の方が鉄分や亜鉛などのミネラル分を多く含むことが分かった。したがって、今まで予測されていた以上に、サンゴ礁に依存した零細漁業は、気候変動によるサンゴ礁の白化に対しも、抵抗力があることが証明された。

原文

Euronews.green (01/06)


3.日豪クリーン水素貿易パートナーシップ

豪政府は同国の水素供給網への外国投資を誘致することによって、同国のクリーン水素輸出産業を振興して、新たな経済成長と雇用の創出を図っている。このため、同国政府は5年間にわたり1.5億豪ドル(約125億円)をかけて、Australian Clean Hydrogen Trade Program (ACHTP)を創設・支援し、同プログラムの第一弾として、「脱炭素技術に関する日豪パートナーシップ協定」に基づき、日本にクリーン水素を輸出することに重点を置く。ACHTPはクルーン水素の輸出サプライチェーンの開発事業やクリーン水素やクリーン水素から製造されるクリーンアンモニアの生産の商業化事業の支援を行う。クリーン水素関連事業によって、2050年までに新たに1.6万人の雇用を創出し、関連する再生可能発電インフラ施設の建設によって、さらに1.3万人の新規雇用を生み出し、500億豪ドル(約4.2兆円)のGDPを追加する見込み。

原文

豪首相府 (01/06)


4.英国国際貨物協会が英国政府にコンテナ業界の競争状況について調査を要請

英国のフォワーダー・物流企業の主たる業界団体である英国国際貨物協会(BIFA)は、大手のコンテナ船社が行っている特定の慣行や、競争法上大手船社が受けている特例措置や適用除外措置によって、競争的な市場の運営が妨げられ、国際貿易を阻害していないかについて、英国政府が調査を実施するよう求める書簡を運輸省の政務次官に送付した。BIFAの理事長は「コンテナ海運分野における「管理された混乱」の中で、商業的な寡占が発生し、市場における選択と競争の余地が狭まり市場環境が阻害され、フォワーダーや中小企業が不公正な扱いを受けている。2015年には、世界のコンテナ海運市場に27の大きな海運会社があり、これらの海運会社の市場シェアは15.3%にすぎなかったが、現在は、15社が3つのアライアンスに分かれて運航し、特定の航路では一つのアライアンスが40%以上の市場シェアを持つなど寡占が進んでいる。」と主張している。

原文

Container News (01/06)


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