国際海洋情報(2022年1月4日号)
1.2021年北極圏の気象状況(Polar Portal Season Report 2021)
1月7日、デンマーク北極研究所が発表した標記年次報告書の概要は以下のとおり。①2020-2021年のグリーンランドの氷床の氷の総量は、デンマーク気象研究所によれば、約3960Gtとなり、これまでの41年間の観測記録中28番目に少なく、平年並みの体積と言える。②グリーンランドの最高点である標高3200mのところにある頂上観測所で、降雪ではなく、史上初めて降雨を観測した。③2021年8月までの1年間で約1660億トンの氷床が失われ、25年間連続で氷床が減少したが、2020-2021年の間の降雪量は1981-2010年間のほぼ平均的な量となった。④夏の前半は寒くて降雨量が多かったが、同様な気象は北極圏ばかりでなく、カナダと米国北西部まで及んだ。
原文
Danish Arctic Research Institute (01/04)
2.BIMCO:ギニア湾沿岸諸国は海賊の刑事訴追に協力すべき
デンマークの海軍は10月末からギニア湾における海賊対策に従事し、4月24日に海賊船と交戦して、4人を逮捕し負傷した1名を除き、3人の海賊は同海軍のフリーゲート艦内で拘束されていたが、同海軍は、1月6日、拘束していた海賊を釈放すると発表した。欧州を中心とした海軍の展開によって、2021年の第4四半期は対前年同期比で、海賊による襲撃件数が23件から7件に、誘拐された船員の人数が50人から20人に激減した。昨年の7月には、トーゴの裁判所で海賊4人に対して12年から15年の懲役刑が言い渡された事例があるが、今回のデンマーク海軍の事例のように折角捕まえた海賊を訴追することについて、沿岸国の協力がなければ、国際的な海軍による海賊取り締まり効果は不十分なものとなるので、沿岸国は海賊の刑事訴追により積極的に協力すべきである。
原文
BIMCO (01/04)
3.100年に1度発生していた熱波が、2030年までに2年に1度発生
2022年の地球の気温は産業革命以前と比較して、既に1.96度上昇し、洪水の頻発によって、米国の経済に490億ドルの損害をもたらすと予測されているが、1月6日、Communication Earth & Environment誌に発表された研究の概要は以下のとおり。①世界の92%の国々では、産業革命以前には100年に1回しか起こらなかったレベルの極端な猛暑が2年に一度の頻度で経験するようになる。②中国・米国・EU・インド・ロシアの5大CO₂排出国の影響がなければ、上記異常気象を頻繁に被る国の割合は半分の46%で済む。③アフリカの熱帯の国々が異常熱波の影響を世界の中で最も受ける。④研究では、2021年のCOP 26で各国が表明したCO₂削減目標に従って、上記予測を導いたが、各国がさらにNDCsを引き上げれば、熱波発生の頻度を大幅に改善することも可能。
原文
Forbes (01/04)
4.米国で進む化石燃料への投資の中止・引き上げ
Global Fossil Fuel Divestment Commitments Databaseは化石燃料への投資の中止・引き上げを宣言した約1500の組織が実際に投資の中止を実施しているか追跡調査を実施している。1500の内訳としては、宗教団体(約35%)・教育機関(約15%)・慈善団体(約12.6%)・年金基金(11.8%)・政府系金融機関(11.4%)・営利企業(8.7%)となっている。例えば、教育機関の中で最も寄付金の多いハーバード大学では、過去10年間にわたって、化石燃料の新たな資源の探査・開発に対する投資を大学が中止するよう要求する運動が実施された結果、ついに2021年9月大学として正式に投資の中止が決定された。ボストン大学をはじめ多くの大学が、ハーバードの例に倣って、同様の投資を中止する見込み。しかし、世界の化石燃料関連事業の多くは国営のため、こうした機関の化石燃料への投資中止宣言は、象徴的な意味は持っても現実的に化石燃料関連事業者に与える影響は少ない。
原文
Yale Climate Connections (01/04)
Webinar情報
1.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg