国際海洋情報(2021年12月23日号)

1.2023年からのEEXI/CIIの適用開始によってLNG輸送船の1/3に深刻な影響

Gibson Brokersによれば、IMOによる短期的CO₂削減対策として合意された既存船に対するエネルギー効率指標(EEXI)と炭素密度指標(CII)が2023年から適用されることになると、エネルギー効率の悪い蒸気タービンエンジンを使用している船舶については、2023年までに指標に適合するように追加投資を行って機関を改修するか、運航の停止・解撤を余儀なくされる。EEXIは船舶の設計に関する技術的なエネルギー効率に関する指標だが、CIIは輸送単位当たり実際にどれだけCO₂が排出されたかを示す指標で、継続して排出削減量の向上が求められる。LNG輸送船については、全体の船腹量の1/3に当たる240隻が蒸気タービン船で、そのうち約50隻が2000年前に建造された老朽化船である。EEXIは新造船に対するEEDIの指標から30%低い規制値が適用されるが、米国船級協会の専門家によれば、この指標をクリアするためには大幅な軸動力の削減が必要とされ、蒸気タービン動力船の設計と運用を考慮し、必要とされる運航速度を前提にすると、船舶の運航効率が大幅に低下することが予想され、航海時間がより長くなり、プロペラ推進のためのボイルオフガスが十分に活用されない恐れがある。

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October 15, 2021, Riviera


2.船員交代問題:状況は改善するも依然として改善が必要

国際海運会議所(ICS)などの支援を受けて、ロサンゼルス・ロングビーチ・ロッテルダム・シンガポールなどの拠点港湾においては、船員に対する無料のワクチン接種が実施され、The Neptune Declaration Crew Change Indicatorによれば、船員交代ができず、船上で当初の労働契約期間を超えて働き続けている船員の比率は、11月の7.1%から12月には4.7%に改善した。しかし、世界の約150万人の船員のうち、ワクチン接種を既に受けることができた船員は約1/4と想定され、この結果、船員交代のために国境を越えて移動する多くの船員は、オミクロン防疫体制を強化している各国の国境において、依然として困難に直面している。例えば、シンガポールと中国では、ウィルスの流入を防ぐために、船員の下船を許可する条件として、10日間の隔離とワクチン接種証明を要求している。本年9月の時点で、174のIMO加盟国のうち、船員を「基幹的な労働者(essential worker)」と認定している国は、わずかに60か国のみで、認定している国でさえ、現場の係官の扱いはまちまちで、多くの空港・港湾・国境で船員が優先的な取り扱いを受けておらず、優先的な取り扱いを証明する証書も交付されていない。

原文

December 29, 2021, The Maritime Executive


3.CDC:警戒レベルを最高に引き上げ、旅行者にクルーズ旅行自粛を勧告

米国疾病対策予防センター(CDC)は、コロナの警戒レベルを最高に引き上げ、クルーズ旅行について以下の勧告を発した。①ワクチン接種の如何に関わらずクルーズ観光に参加しないこと。②複数回ワクチン接種を受けた人でもコロナにかかり、感染を広げるリスクがあること。③船上の人々が近接している環境では、オミクロン株に簡単に感染するので、ブースターワクチンの接種を受けた人でも、クルーズ船上で感染するリスクは非常に高いこと。④クルーズ船上におけるコロナ感染拡大事例が報告されていること。⑤もしどうしてもクルーズ観光をするなら、ブースター接種を受けること。⑤クルーズ船に上船する旅客は、ワクチン接種の状況や症状の有無にかかわらず、乗船前3日以内と下船後3日以降5日後までに、検査を受けること。⑥ワクチン接種を受けていない旅客は、検査を受け、さらに下船後5日間は自主隔離を行うこと。⑦クルーズ船の共有空間では、乗客乗員は、マスクを着用すること。

原文

December 30, 2021, CDC


4.独新政府:洋上風力発電能力を2030年までに30GWに拡大へ

北海とバルト海の独の排他的経済水域(EEZ)に関する海洋空間計画(MSP)は2009年に作成されたが、連邦海事海洋庁(BSH)は、海洋空間計画を所掌する連邦内務省(BMI)と連携して、2019年からMSPの見直し作業を開始し、見直されたMSPは本年9月に発効した。この改定されたMSPに従い、北海に追加的に3GWの洋上風力発電施設を建設するための環境影響調査をBSHは2022年1月半ばにも公表する予定で、開発計画案自体は、2022年半ばに公表され、同年末までには最終化される予定。前政権の計画では、2030年までに再生可能エネルギーの比率を65%まで引き上げることを目標としていたが、新政権は同年までに80%まで引き上げることを表明している。現在、同国の洋上風力発電能力は7.8GWで、英国・中国に次いで世界第3位に位置するが、新政権は洋上風力発電の拡大に重点を置き、2030年までに30GW、2035年までに40GW、2045年までに70GWに発電能力を拡大する目標を発表している。ちなみに、2030年までに米国は30GW、英国は40GWまで洋上風力発電能力を引き上げる目標を立てている。

原文

December 29, 2021, The Maritime Executive


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