国際海洋情報(2021年12月22日号)

1.米CDCに登録された111隻のクルーズ船の約2/3でコロナ感染が確認

米国疾病対策予防センター(CDC)には、111隻のクルーズ船が登録されており、来年1月15日まで有効な「条件付き運航命令」に従い、乗客・乗員にコロナの感染(疑いも含む)者が出た場合は、CDCに報告することが義務付けられている。過去1週間でCDCには、75隻のクルーズ船から感染者に関する情報が報告されており、CDCの基準では、感染者が出た場合でも乗客総数の0.1%以下で、乗員に感染者が出ていない場合には、さらなる感染防止のための経過観察で済まされるが、この基準に合致したのは、75隻中9隻のみだった。残りの66隻については、CDCにより、乗客の健康管理手続きが適正に行われていたかなどについて、調査が既に行われ、または今後実施される予定となっている。CDCは現時点で感染対策の強化などを打ち出していないが、クルーズ船における感染事例の多発によって、寄港国側の政府は、カリブ海諸国やメキシコの寄港拒否に加えて、プエルトリコが新たにクルーズ船乗客の入国(上陸)条件の厳格化を発表している。

原文
December 28, 2021, The Maritime Executive

2.(論説)メタノールとアンモニアが舶用代替燃料の本命か

現状では、LNGが唯一のCO₂排出削減のための実用可能な代替燃料であり、LNGのための施設は将来的に炭素中立の合成・バイオガスにも使用できる。2050年までに海運の炭素中立化を実現するための代替燃料としては、国際エネルギー機関が5月に出した報告書によれば、アンモニアと水素が有力で、それぞれ、2050年には全バンカーの45%と15%のシェアを占めると予測している。但し、大型の外航船の燃料としては、高いエネルギー密度が必要で、既存の重油燃料と比べると液化アンモニアと液化水素のエネルギー密度は、それぞれ30%と22%しかなく、3.3倍と4.5倍の燃料タンクが必要となる。さらに、液化水素を貯蔵するためのタンクは重くて場所を取るので、長距離航海には向いていない。以上を検討すると、水素に比べてメタノールとアンモニアの方が、貯蔵・輸送時の取扱温度などの面で容易であり、取扱経験も豊富でより現実的な代替燃料と言える。但し、現状においてはアンモニアも化石燃料から製造され、再生可能なグリーンアンモニアを使用する場合、製造コストが課題となる。長距離を運航する大型船にとっては、まず化石燃料から生産したメタノールを使用し、長期的には水素から製造される水素に切り替えていくのが現実的で、メタノールを使用するために機関を改修する必要があるが、長期的にはコスト的に効率的な選択肢と考えられる。

原文

December 28, 2021, Standard & Poor’s Global


3.アラスカで19.4℃の異常高温を記録

アラスカ湾のコディアク島では、12月26日にこれまでのアラスカ州における12月の最高気温である19.4℃を記録した。アリューシャン列島のウナアラスカでも12月に入ってから気温10℃以上の日が8日もあり、クリスマスも13.3℃となり、アラスカで史上最も温かいクリスマスを記録した。一方で、アラスカの内陸部では大量の降雪の後に、雨が降って氷結したために、大規模な停電と道路の閉鎖に追い込まれた。アラスカ州の運輸・公共施設省は、道路の凍結は当分の間継続して、危険な状況が続くと警告している。気温は一転して極寒に戻る予定で今週末のフェアバンクスの予想気温は氷点下29℃に急落する見込み。

原文

December 29, 2021, Sky News


4.2021年に発生した海賊・武装強盗数は1994年以降最低

2021年に発生した海賊・武装強盗の事件数は、1994年以降最低となった。アジアでは90件発生したが、すべて領海内で発生した武装強盗事件で、うち49件はシンガポール海峡の東経102度から117℃の東側で発生し、強盗の多くはナイフや銃で武装し、強盗中に船員に対して、暴力をふるい、脅迫を行っている。インド洋では、海賊事件はなくなったが、ドローンを利用したテロリストによる攻撃が、オマーンやペルシャ湾の入り口付近等で発生した。ギニア湾では、2月中旬までは海賊事件が頻発していたが、その後急減し、全体では2020年と比較して、海賊事件数は60%以上減少したものの、引き続き世界の海賊事件の中心地となった。船員の誘拐事件は10件発生し、71人の船員が誘拐された。2022の見通しとしては、アジア地域においては、ほぼ今年と同じレベルで海賊事故が起こることが予想され、最も注意すべき海域はビンタン島とバタム島北方海域で、強盗・窃盗事件が中心となると考えられる。

原文

December 29, 2021, The Maritime Executive


国内ニュース

1.住友商事:大島造船所とのアンモニア燃料船の共同開発について
原文

12月27日、住友商事


2.住友商事:シンガポールにおけるアンモニア燃料事業の共同開発に関する覚書を締結
原文

12月27日、住友商事


3.商船三井:プロペラ効率改善装置「PBCF」が「最も販売されている船舶用省エネ装置ブランド(累計個数)」としてギネス世界記録™に認定
原文

12月24日、商船三井


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