国際海洋情報(2021年12月21日号)

1.スペインのバレアレス諸島などでクルーズ船の寄港制限

近年過剰な観光、特にメガクルーズ船が環境等に及ぼす影響に対する批判が強まっていることに加え、多くの観光地では、メガクルーズ船の日帰り観光客より、従来型の陸上の観光客の方が地元経済にメリットがあることから、クルーズ船の寄港を制限する動きが世界各地で進んでいる。例えば、スペイン領の地中海のバレアレス諸島では、大手クルーズ船社とクルーズ船国際協会(CLIA)との合意が成立して、バレアレス諸島の首都であるマヨルカ島のパルマ港では、2022年からの5年間クルーズ船の寄港を制限することとなった。この合意によって、対2019年実績比で、クルーズ船の総寄港回数が約14.5%減少することとなる。仏領ポリネシアでも、2022年から収容乗客数2500人以上の大型クルーズ船が寄港できる港が3港に制限され、美しいラグーンで有名なボラボラ島では1日当たりのクルーズ船観光客数の上限を1200人に設定し、乗客数3500人を超える大型クルーズ船の寄港を禁止し、乗客数700人以下の地元の小規模クルーズ船を優先させている。

原文
December 27, 2021, The Maritime Executive

2.オミクロン感染拡大による労働者不足が国際物流の混乱を助長

オミクロンの感染が拡大し、世界各国が様々な制限を強化する中で、世界中の物流事業者は、世界的な大手企業から地域の中小企業まで、物流労働者の十分な確保が困難な状況になっている。国際道路輸送組合(IRTU)によれば、物流事業者が平常時に比べて高い賃金を提示しているにもかかわらず、オミクロンの影響で、トラック輸送に従事する運転手の数は20%減少している。Drewry社は、2022年も年間を通じて、労働者の不足と健康問題への懸念が続くと予測しており、海運においては、Neptune Declaration Crew Changeによれば、当初の雇用期間を超えて船上で継続して働かなくてはいけない船員の比率は、7月半ばに9%に達したのをピークに、現在は5%以下に減少したものの、海運企業はこうした長期間労働を経験した船員が船に戻ってこないという問題に直面している。

原文

December 27, 2021, AJOT


3.2022年:EUにおける航空・海運分野でのCO₂削減に関する論点

海運分野では、FuelEU Maritime規則案において、LNGが転換期におけるグリーンな燃料として位置付けられていることに対して、環境保護派からの反発が強く、そもそも天然ガスがEUのTaxonomyにおいてどのように分類されるかにも影響を受ける。航空については、ReFuelEU Aviation規則案においては、EU域内の空港で給油をする場合には、燃料油の一定割合をグリーンジェットオイルにする必要があるが、新たな規制適用のタイムスケジュールや持続可能な航空燃料(SAF)の混合比率について、議論が行われる見込み。SAFは既存のケロシン燃料に比べて、はるかに高いコストとなるので、規制実施時の欧州の航空会社の国際競争力に悪影響を与えるのではないかという懸念がある。独はさらに、再生可能発電から作られるelectro-fuelの使用目標を引き上げようと働きかけているが、コスト増加に過敏な他の加盟国からの反発が予想される。

原文

December 28, 2021, Euractiv


4.中国人民銀行がCO₂削減のための低利資金を供給

中国政府は2030年までに同国の年間CO₂排出量を減少に転じ、2060年までに炭素中立を実現するという国家目標を立てているが、中国の中央銀行である中国人民銀行は11月に、年利1.75%の低利で、金融機関がCO₂削減の事業に融資する資金の60%を供給すると発表していたが、12月28日、同銀行総裁は今月末までに、低利資金供給の第1弾を供給すると新華社に語った。総裁の不動産市場は回復する見通しで、金融リスクはコントロールできるとも発言した。

原文

December 28, 2021, Reuters


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