国際海洋情報(2021年12月17日号)
1.欧州委員会:ETS収入や国境炭素調整課税を独自財源化することを提案
欧州委員会は12月22日、①排出権取引制度(ETS)に基づく収入。②現在新設提案がされている国境炭素調整課税に基づく収入。③10月にOECD/G20諸国が合意した多国籍企業の残余利益に課税する権利の再分配(Pillar One)によって、EU加盟国に分配される収入の15%。といった3つの異なる収入源から、2026年から2030年の間、年間平均170億ユーロ(約2.2兆円)をEUの独自財源とすることを提案した。この新たな独自財源はNext Generation EU基金から借り入れている資金の返済に充てられるほか、ETSの対象範囲を建物と陸上交通に拡大する条件として創設することが約束され、脱炭素経済に円滑に移行するにあたり影響を受ける産業・人々を支援するための「社会気候変動基金(Social Climate Fund)」の財源として使用される。
原文
December 17, 2021, 欧州委員会
2.北極海北航路:2021年の輸送量は昨年より増加
ロシアの北極海北航路(NSR)の輸送量は、今年は秋の海氷の凍結が速く11月には多くの船舶が身動きが取れないという事態を招いたにもかかわらず、12月半ばの時点で3350万トンとなり、通年では3400万トンを超える見通しで、2020年の年間輸送実績である3300万トンを超え、直近の5年間で輸送量は350%増加した。輸送量の大部分はロシア北極圏で生産されたLNGと石油を輸送するタンカーによるもので、交通量の伸びは、石油・天然ガス産業の成長に支えられている。一方、欧州とアジアを結ぶ通過貨物量も12月半ばで200万トンとなり、2020年の実績である130万トンを超えた。2018年の輸送量と比べると300%以上の増加で、3年連続の増加となった。今年通過運航を実施した92隻の船舶のうち、79隻がロシア以外の船で、NSRの国際的認知度が向上しているものと考えられる。ロシアは、2024年までにNSR を利用する貨物の総輸送量を8000万トンに、2030年までに1.1億トンに引き上げる野心的な目標を掲げている。
原文
December 17, 2021, The Maritime Executive
3.独:グリーン水素の生産促進のために9億ユーロの損失補填補助基金を創設
独経済省は、12月23日、再生可能なグリーン水素の生産に伴う損失補填のために9億ユーロ(約1170億円)の基金を創設すると発表した。経済・環境保護大臣は、新政府は独の脱炭素化のために、再生可能水素が果たす役割は重要であると考えており、将来的なグリーン水素の需要拡大に備えて、国内生産と輸入拡大に備えていくと語った。国内におけるグリーン水素の生産はHINTO.COという特別目的会社が担当するが、現段階ではグリーン水素の生産コストは依然として割高なので、最大10年間、会社の損失を補填するために基金が支援を実施するが、政府としては、再生可能エネルギーを購入したいとする需要が増えて、損失は将来的に徐々に縮小すると予測している。
原文
December 17, 2021, Reuters
4.Wartsila:フィンランド政府の支援で海運脱炭素化研究開発事業を始動
Wartsila社は、フィンランド政府から2000万ユーロ(約26億円)の支援を受けて、約200社と共同で、4年を事業期間とするZero Emission Marine事業を開始し、アンモニア・水素・水素派生燃料などの経済性のある炭素中立代替燃料を使用する機関と貯蔵システムの開発を通じて、2030年までに海運から排出されるGHGを60%削減し、2050年までに炭素中立を目指すと発表した。炭素回収貯蔵技術やバイオ燃料の開発も実施する。事業に参加する200社は、脱炭素代替燃料・燃料技術・船舶自動化・船舶の運航の効率化などの技術を有する大企業や革新的な中小企業から構成されるとともに、業界団体・研究機関・大学とも連携して研究開発を進める。近日中に同国のバーサにSmart Technology Hubが開設される予定。
原文
December 17, 2021, Offshore Energy Biz
国内ニュース
Webinar情報
1.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg