国際海洋情報(2021年12月13日号)
1.欧州委員会:欧州ガス市場を脱炭素化するための規則案を採択
12月15日、欧州委員会は、水素を含む再生可能・低炭素ガスの導入の促進によりEUのガス市場を脱炭素化し、欧州のエネルギー安全保障を確保するための一連の規則案について採択した。また、欧州委員会はEUのメタン戦略に従い、欧州のエネルギー分野と国際サプライチェーンにおいてメタンの排出量を削減するという国際的な約束を実施する方法も明らかにしたところその概要は以下のとおり。①提案された規則は天然ガスからバイオメタンや水素などの再生可能・低炭素ガスに移行するための条件を設定している。②規則の主要目的の一つは水素の市場を創設し、水素に投資するための適切な環境を整備し、EU域外から水素を輸入することを含む水素供給に必要なインフラの整備を可能とする。③水素市場に関する規則は、2030年以前と以降の2段階に分かれて適用され、水素インフラへのアクセス、水素の生産事業と輸送事業の分離、水素の価格設定などについて定めている。④水素専用インフラの整備促進、国境をまたぐ各国の供給網の接続の調整、必要な細則の整備のために、新たにEuropean Network of Network Operators for Hydrogen (ENNOH)を創設する。
原文
December 15, 2021, 欧州委員会
2.ギニア湾でコンテナ船から6人の船員が誘拐される
ギニア湾では、欧州の海軍の活動によって、海賊の活動が沈静化していたが、10月25日、オフショア支援船が襲撃されて3人の乗員が誘拐される事件が起きた。この事件が発生した海域から約35海里離れた海域で、12月13日、コンテナ船が襲撃されて、6人の乗員が誘拐される事件が再発した。ガボンとデンマークが海軍を出動させ、デンマーク海軍のヘリが、海賊が乗り組んだ高速艇を発見したが、ナイジェリア領海に逃げ込んだため、停船させることが出来なかった。デンマーク軍は襲撃されたコンテナ船に乗船して、行方不明となった船員の船内捜索を支援し、海賊との衝突で負傷した船員1名に対する医療行為も行った。この事件を含めて、ギニア湾で2021年に発生した襲撃事件は10件となり合計で76人の船員が誘拐されたが、ほとんどの襲撃事件は各国の海軍によって警戒体制が強化される前の、本年前半に発生している。
原文
December 13, 2021, The Maritime Executive
3.欧州で寒気が強まる中、エネルギー価格が上昇
欧州では、例年より弱い風による風力発電量の不足と、仏の原発の一部停止によって既に電力需給状況はひっ迫しているが、今週に入って、欧州のいくつかの首都では気温が氷点下まで下降することが予測され、電力需給がさらにひっ迫する見通しである。さらに、ロシアが独向けの天然ガスの供給を制限し始めた影響で、今年に入ってからエネルギー価格は制御不能状態に陥っており、天然ガスの価格は600%も上昇した。エネルギー価格の上昇はインフレを助長しており、オミクロン変異株の拡大と並んで政治家の頭痛の種となっている。ロシアとウクライナの間の地政学的な緊張の高まりが事態をさらに悪化させており、もしロシアがウクライナに侵攻することになれば、エネルギー価格はさらに高騰すると考えられる。冬季の気温がさらに低下して電力需要が増加した場合、専門家は1月から2月にかけて、欧州は停電の危機すらあると指摘している。
原文
December 20, 2021, Yahoo Finance (Bloomberg)
4.マレーシアの洪水でクラン港の機能が麻痺
マラッカ海峡に面し、シンガポール港にも近いマレーシアのクラン港は、世界で12番目に大きいコンテナ港湾で、コンテナ積み替え港として年間1300万TEUのコンテナを取り扱っているが、豪雨とそれに伴う洪水で、同港の北港・西港・南港ターミナルの運用が大きく影響を受けているほか、洪水によって倉庫群・空コンテナのデポ・港湾アクセス道路も被害を受けており、また港湾への道路が寸断されているため、多くの港湾・物流労働者が職場に出勤できない状況となっている。港湾当局は、荷役作業は少なくても5日間は遅れるとコメントしており、荷役待ちの船舶が港外の錨泊地に滞船している。港湾当局は医薬品や冷蔵貨物など緊急物資や傷みやすい貨物を当面優先して荷役すると表明している。クラン港の位置するスランゴル州当局によれば、クラン峡谷の洪水は19日の時点で引き始めたとしているが、現地報道によれば、依然としていくつかの基幹道路が洪水によって寸断されている。
原文
December 19, 2021, The Maritime Executive
国内ニュース
1.川崎汽船:オフショア支援船事業から撤退
原文
12月17日、川崎汽船
Webinar情報
1.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
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