国際海洋情報(2021年12月9日号)

1.EU:天然ガスと原子力の扱いについて委員長が最終判断

EUは2019年12月に「持続的金融分類規則」を採択し、詳細な実施規則については、「委任規則(Delegated Act: DA)に委ねられ、DAによって、環境に良いグリーンな投資か、過渡期において暫定的に認められる投資か分類される。12月9日に、EUは2022年1月から適用される分類に関する規則の一部である、再生可能エネルギー・海運・自動車生産に関する投資についての環境基準を承認したが、天然ガスと原子力の取り扱いに関する最も重要な部分は含まれず、来週のコミッショナー会議(閣議のようなもの)に諮られる可能性がある。同会議では通常担当コミッショナーが提出する案を議論して、最終的に委員長が承認するが、本件については、その重要性から担当コミッショナーからではなく、委員長自らが会議に提案する可能性がある。仏は他の12か国と連携して、原子力をグリーンな投資に分類することを主張しているが、オーストリア等反対の5か国は、原子力をグリーンな投資に認めることがEUで決定された場合には、欧州裁判所で争う構えを見せている。

原文
December 10, 2021, Euractiv

2.農業におけるプラスチックの使用と持続可能性

農業分野では、1950年代以降、雑草が生えるのを防ぐために土壌を覆い、作物の成長を保護・促進するためにネットをかけ、栽培期間を延ばし、収入を増やすなど、プラスチックの利用の急速な普及によって農業生産性が上がっている。食料農業機関(FAO)によれば、農業に関連するバリューチェーン全体で、年間1250万トンのプラスチックが使用されているほか、さらに梱包材として、3730万トンが使用されており、経済的に代替可能な素材が提供されない限り、農業関連のプラスチックの使用は今後も増加することが予想され、農業活動から環境に流れ出すプラスチックの量を把握する必要が高まっている。2015年までに農業分野では、63億トンのプラスチックが使用されたと考えられるが、そのうちの約80%が適正に廃棄処理されていない。海洋において大きなプラごみが海洋生物に与えている影響はよく報道されているが、プラスチックが分解される際に生態系全体に与える影響は解明されておらず、FAOの専門家によれば、海洋に流出するプラスチックよりはるかに多い量のプラスチックが土壌に吸収されている。

原文

December 7, 2021, 国連


3.ノルウェーで2024年にも水素燃料船が運航開始

ノルウェーのWilhelmsenのグループの海運会社であるTopekaは、ノルウェー政府から2500万ドルの支援を受けて、1000kWhのバッテリーと水素燃料電池を動力源とし、液体水素を燃料とする2隻のゼロエミッション船を建設する計画で、十分な量の液体水素の供給が可能となる2024年を目途に運航を開始することを目指している。2隻の船舶はオフショア産業の供給基地となっているノルウェーの西岸のStavanger/Haugesund/Bergenなどの沿岸都市を結ぶ定期航路に就航し、一般貨物の輸送をするほか、水素燃料供給基地にコンテナに積み込まれた液体水素を運搬することを予定している。水素燃料供給基地は、将来的に他の水素燃料船にも水素を供給することを目的としている。

原文

December 9, 2021, The Maritime Executive


4.米国:海外における化石燃料関連新事業への支援を停止

米国はCOP 26で他の40の諸国と5つの国際的な金融機関とともに、2022年までに炭素回収貯留(CCS)の装置がない海外の化石燃料事業に対する資金支援を停止することを約束したが、バイデン大統領は、連邦政府機関に対して、安全保障上・地政学上の戦略などの真にやむを得ない例外的な場合を除き、本年初めに出した大統領令の目的に従い、海外におけるcarbon-intensiveな化石燃料事業に対する支援を直ちに停止し、海外におけるクリーンエネルギーを促進し、革新的な技術開発を進め、米国の技術的な国際競争力を増強し、炭素中立への転換を支援することを命じた。Carbon-intensiveな化石燃料事業とは、石炭・石油・天然ガスを燃料として、CO₂の排出量が250g/KWh以上で、完全に炭素を回収する装置を持たない事業を言う。気候変動に配慮した金融の専門家は、例外規定が多く、透明性に欠ける政策であると批判している。

原文

December 11, 2021, Reuters


Webinar情報

1.CEFIA Japan Seminar 2021
December 17, 15:00-17:00
https://www.cefia-dp.go.jp/2021japan-event

2.Economist Impact: 7th Annual Sustainability Week
March 21-24
https://eventsregistration.economist.com/event/794ae119-be9a-4185-b2cd-83bad6be3146/regProcessStep1?rt=2doYuLJDI0mALmn_Ydi3Dg