国際海洋情報(2021年12月7日号)

1.EU:大気中から年間500万トンのCO₂を回収することを計画

EUは2050年までの炭素中立を達成するための手段として、2030年までに大気中から直接CO₂を回収する技術を確立し、年間500万トンのCO₂を回収し、北海の海底などに長期貯留する計画を立てていることがわかった。また欧州委員会は、CO₂の回収量を計測し認証する制度を来年提案する予定であることも判明した。大気中からCO₂を回収し貯留する事業者は、回収した量を排出権として、EU独自の排出権市場で売却することも認められる。Carbon Market Watch等の環境NGOは、CO₂の回収量を測定し認証する制度を導入することは支持しているが、それを排出権取引市場で売買することについては反対している。

原文

December 1, 2021, Reuters


2.DNV:Maritime Safety 2012-2021

DNVがLloyds List Intelligenceと共同で作成した標記報告書の概要は以下のとおり。①2012年から2021年にかけて、全世界で船腹量はDwTベースで46%、100GT以上の船舶の隻数で11.6万隻から13万隻と16%増加した。②船腹量の増加にもかかわらず、船舶の年間事故件数は1922件から1537件と20%減少した。事故による船舶の年間全損数も132件から58件と56%減少した。同時期に船舶の不具合で出港禁止命令を受けた船舶の数も60%減少した。③このような安全性の向上の原因としては、システムのデジタル化・船級規則の近代化・船舶の質の向上・取締当局の取締強化・安全文化の改善などがあげられる。④しかし、脱炭素化対策としての代替燃料の導入に伴う船舶火災・爆発のリスクやデジタル化の進行に伴うシステムの複雑化・データーセキュリティの問題など新たな安全性の問題に対処する必要がある。

原文

December 6, 2021, DNV


3.米大統領令:米国政府の活動も2050年までに炭素中立を義務付け

米国の最大の土地所有者・エネルギー消費者・雇用主として、連邦政府の購買力を活かして、民間部門の炭素中立の呼び水となるために、12月8日、バイデン大統領は標記大統領令に署名した。具体的には、①30万戸の連邦政府の建物は、2030年までに100%脱炭素化した電力を使用する。②同年までに、政府が使用する60万台の車両を電気自動車にする。③連邦政府が6500億ドルかけて調達する物資・サービスを2050年までに脱炭素化する。③政府の建物が排出するCO₂を2032年までに半減し、2045年までに脱炭素化する。

原文

December 8, 2021, AP


4.LR:First movers in Shipping’s Decarbonisation

ロイズ船級協会(LR)の海事脱炭素化ハブは、船の種類や航路に関わりなく、異なる代替燃料を用いたエネルギー転換について、詳細に比較検討できる手法・枠組みを発表した。LRの専門家がメタノール・アンモニア・水素について、シンガポール・香港・近隣アジア港湾の間を運航するフィーダー船に当てはめて検討を行った結果の概要は以下のとおり。①どの転換の選択肢を採用しても、2050年までの炭素中立を達成するためには、耐用年数を迎えた船舶の代替の際に、脱炭素燃料船に置き換えるだけではなく、既存船の約26%を改修して脱炭素化する必要がある。②全船舶の脱炭素化コストは、アンモニア化した場合が445億ドル、メタノール化した場合が515億ドル、水素化が694億ドル、化石燃料の炭素税を払って使い続けた場合が423億ドルとなる。③船舶の運航コストが、船舶の全体コストの71-82%になるため、船舶のエネルギー効率の向上と最適航路の選択などが、脱炭素化のコストを下げるために重要となる。

原文

December 9, 2021, LR


国内ニュース

1.川崎汽船:舶用バイオ燃料を使用した自動車専用船の試験航行を実施
原文

12月2日、川崎汽船


2.日本郵船:デジタル空間でのシミュレーションで設計最適化を共同研究
原文

12月2日、日本郵船


3.INPEX: オランダにおける洋上風力発電事業会社の株式取得について
原文

12月7日、INPEX


4.川崎汽船:アンモニア燃料自動車運搬船の設計基本承認を共同取得
原文

12月8日、川崎汽船


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