国際海洋情報(2021年12月2日号)

1.EU:船舶の解撤に再びバーゼル条約を適用へ

2013年に、欧州委員会は、解撤・リサイクルされる船舶の運航に関して、船舶リサイクルに関する香港条約の適用を優先するために、廃棄物の輸送に関するバーゼル条約の適用を除外した。しかし、2009年にIMOで採択された香港条約は未だ発効していない一方で、バーゼル条約は廃棄物の受け入れ先である途上国を保護するための新たな規定が(4a条と5条)が追加され、2019年に発効した。こうした状況を受けて、Basel Action Network/ European Environmental Bureauなどの環境NGOは、国際環境法センター(CIEL)に委嘱して、法的分析を実施し、欧州委員会に対して、バーゼル条約の下での国際約束に従い、EUの規則を改正するように2020年9月に求めた。以上の経緯を踏まえ、欧州委員会が先週発表した廃棄物の輸出に関する規則の案では、これまでの方針が変更され、EU域内に存在するEU籍船が解撤される際には、バーゼル条約4a条が適用されることとなり、いかなる形態の有害物質もOECD諸国から非OECD諸国に輸出できなくすることが提案されている。

原文
December 1, 2021, NGO Shipbreaking Platform

2.ECSA:ギニア湾におけるさらなる保安体制の強化を要請

欧州船主協会(ECSA)は、最近のナイジェリア南方海域における、海賊船とデンマーク海軍との間の交戦で死者が出た事件に関連し、依然としてギニア湾における海賊の脅威が高いことに対して、12月2日、改めて懸念を表明した。2021年1月から開始されたCoordinated Maritime Presence (CMP)は、ギニア湾における参加国の海軍力を調整し、ギニア湾沿岸のアフリカ諸国と連携し、海賊に対処する能力を増強する前向きな一歩であると評価する。ギニア湾において商船が安全に運航するためには、海軍の存在が不可欠であり、さらなる保安活動の強化が必要であることを、今回の事件は示している。ECSAはいくつかのEU加盟国が既に空軍と海軍をギニア湾に展開させていることを評価し、引き続きEU加盟国がCMPを優先事項として重視し、ギニア湾における海上保安を強化するために、適切な軍事力を展開することを希望する。

原文

December 2, 2021, ECSA


3.欧州委員会エネルギー担当委員:原発への投資強化の必要性を強調

標記発言要旨は以下のとおり。①現在EUで稼働中の原子炉の平均年齢は30年を超え、直ちに延命措置のための投資を行わないと、再生可能エネルギーへの転換の過程で、最も原子力を必要とする2030年に約90%の既存の原発が運転を停止することとなる。②既存の原発の運用可能期間を安全に延長するためには、450億から500億ユーロ(約5.8兆円から6.4兆円)の追加投資が必要で、また現在と同程度の原子力発電量を確保するためには、2050年までに4000億ユーロ(約51兆円)を投資して、新たな原子力発電施設を整備する必要がある。③原子力発電を可能にし、競争力あるものとするためには、資金調達コスト(=EU Taxonomy上の分類)が重要となる。④原子力について、EU Taxonomyにおいて、環境に資する持続可能なエネルギーに分類すべきか否かについては、安全上のリスクや使用済み核燃料の処分の問題を挙げて慎重な意見もあるが、7月には、欧州委員会の共同研究センター(JRC)が、原子力は安全であるとのお墨付きを与えている。⑤欧州委員会は今月中に、原子力発電・核燃料処理・核燃料供給について、EU Taxonomy上どのように分類するか提案を行う予定。

原文

December 2, 2021, Euractiv


4.MEPC 77:北極海におけるBlack Carbon (BC)排気削減のための自主措置に合意

MEPC 77において、北極海における船舶から排出されるBlack Carbon (BC)の削減に関する法的な拘束力のない決議が採択された。決議では、船舶の旗国は、自国籍船に対して、重油燃料の使用を段階的に停止して、BCや煤の排出が少ないきれいな蒸留油を使用するよう奨励することが求められている。ノルウェーは2020年から、同国のスヴァールバル諸島周辺海域において、重油燃料の使用と輸送を既に禁止している。BCは雪や氷の表面に付着すると、太陽熱の反射率を落とし太陽熱を吸収して、雪氷を融解し、北極圏の温暖化を促進するが、北極海の海氷が減少して、船舶の交通量が増加した結果、2015年から2019年にかけて、北極海における船舶から排出されるBCの量は85%も増加した。船舶燃料を重油から蒸留油に切り替えるために機関の改造は必要なく、すぐに切り替えることが可能で、BCの排出量を50%から80%減少することができ、GHG削減と比べて、温暖化防止に即効性がある。

原文

December 3, 2021, High North News


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