国際海洋情報(2021年12月1日号)

1.Great Barrier Reefを守るためには気温の上昇を1.5℃以内に抑制する必要

Queensland大学の研究者等がGlobal Change Biology誌に発表した研究の概要は以下のとおり。①熱帯のサンゴ礁は気候変動の影響を最も受けやすい生態系である。②本研究では、地球の気温上昇が産業革命以前と比較して、1.5℃上昇した場合と2℃上昇した場合にGreat Barrier Reef(GBR)に与えるストレスを比較した。③気温上昇抑制努力を何もしないBusiness as Usualシナリオでは、2080年までにサンゴの深刻な白化現象が毎年発生するが、地球の温度上昇を2℃以内に抑えた場合、深刻な白化現象が発生する頻度が半分となり、1.5℃の場合は、白化現象が発生する頻度が10年間で3回程度に抑制できる。④GBRを地域的にみると中央部と南部で海水温が上がりやすく、北部で上がりにくいことも分かった。

原文

November 16, 2021, Global Change Biology


2.IEA:Renewables 2021

国際エネルギー機関(IEA)が発表した標記報告書の概要は以下のとおり。①2021年中に全世界で290GWの再生可能エネルギーの新たな発電施設が建設され、年間増加量としては史上最高となり、増加分の約半分は太陽光発電だった。⓶2020年から2026年までの6年間で、再生可能発電の総量は60%増加して、4800GW以上となり、現在の化石燃料と原子力の発電量を合計した量に匹敵する。今後5年間の世界の再生可能エネルギーの増加分のうち、中国が43%を占める予定で、これに、欧州・米国・インドが続き4者で再生可能エネルギーの増加分の約80%を占める見込み。③中国は、2060年の炭素中立を目指して、2030年までに風力と太陽光併せて1200GWを発電するという目標を立てているが、この目標は2026年にも達成される見込み。④欧州もFit for 55計画の資金支援を得て、国家エネルギー気候計画(NECPs)に立てている2030年までの目標を達成できる見込み。⑤インドは、2030年までに再生可能発電能力を500GWまで増加させる目標を立て、太陽光を中心として、2015-2020年の間の成長速度の倍の速度で再生可能発電を増やしている。⑥米国も2021-2016年の間の5年間に、前の5年間と比べて、65%速いペースで再生可能エネルギーの整備の速度を速める見込み。

原文

December 1, 2021, IEA


3.2025年までに露北極圏に約140か所の永久凍土解凍観測地点を設置

北極圏に建設された4割以上の建物と構造物が永久凍土の解凍によって変形する兆候を示しており、永久凍土の変化を監視するため、2025年までに140か所の観測地点を設ける予定。露の自然資源・環境省の副大臣は「永久凍土の解凍によって、石油天然ガスの生産量が減り、技術的な事故が発生し、道路が損傷するなど甚大な被害を及ぼしている。」と述べた。

原文

November 30, 2021, The Arctic


4.中国がインドネシアに係争海域での石油試掘を中止するように要求

インドネシアの国会議員によれば、中国政府はインドネシア政府外務省に対して、南シナ海の南端に位置するインドネシアのEEZ内にある北Natuna海のTuna海域においてインドネシアが6月30日から開始した石油ガスの試掘を直ちに中止するように初めて要求した。中国は同海域が九段線の内側で中国の主権下にあると主張している。中国はインドネシアにとって最大の貿易相手国であり、2番目の投資国でもあるので、同国の首脳は事を荒立てないために、中国の要求については公表していない。中国は、インドネシアが8月に米軍と実施した2009年以来毎年続けている恒例のほとんど陸域における軍事訓練についても、同国政府に対して初めて、同地域の安定を脅かすとして抗議を申し入れた。6月30日以来、同海域では、インドネシア船と中国の海警局の巡視船が至近で対峙を続けているのが、米国のCSISのアジア海事透明化イニシアティブ(AMTI)の衛星写真からも確認できる。

原文

December 1, 2021, Reuters


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