国際海洋情報(2021年11月29日号)

1.米国:方向性が定まらないプラスチックごみ対策

11月15日に成立したバイデン政権の総額1.2兆ドルインフラ法の中には、3.5億ドルのプラスチックごみの管理とリサイクリングに関する予算も含まれており、プラスチック・石油化学工業会は歓迎しているものの、民主党・共和党もこの予算だけでは、世界的な危機となっているプラスチックごみ対策に、米国が貢献するためには十分でないことが分かっている。環境NGOのBeyond Plasticsの会長は、プラスチックごみ問題の解決のためには、「生産の削減・再使用・リサイクル」の3つの手段に取り組む必要があるが、プラスチックの生産削減についての取り組みが遅れていると指摘する。プラスチック業界は、プラスチックごみを化学的に他の製品の原料に加工する「先進的なリサイクル」に焦点を当て、プラスチック製品の生産禁止を回避し、生産の拡大を図っている。一方、環境派は超党派法案であるBreak Free From Plastic法案を議会に提出して、プラスチック製品の生産者の生産者責任を強化し、製品を再使用可能にデザインし、プラごみを管理・リサイクルする費用を負担する計画を立てることなどを義務付けようとしている。

原文

November 24, 2021, Inside Climate News


2.MEPC 77:コンテナ船社の団体である世界海運評議会(WSC)のコメント

標記コメントの概要は以下のとおり。①COP 26で海運の脱炭素化について高尚な声明を行ったのと同じ政府が、具体策を決めるIMOで前進できなかったのは残念。②コンテナ海運に関わる荷主や金融機関が求めているように、化石燃料からの脱却を可及的速やかに進め、気候変動に悪影響を与えない効率的な貿易を実現することは、コンテナ海運業界に働く者にとって、道義的責任である。③我々の業界にとって当面の課題は、脱炭素に転換するのに必要な技術や代替燃料がいまだ実用化されていないことであり、代替燃料が世界の主要港湾で補給できるインフラを整備するために、前進する必要があり、IMO加盟国がIMRB/IMRFの設立承認に逡巡しているのはとても危険。④IMRB/IMRF構想は、既に国連気候変動枠組条約参加の「緑の気候基金」から支援を取り付ける約束を得ており、構想を支持する加盟国数は増えたものの、MEPC 77で承認が得られなかったのは残念で、WSCはMEPC 78に向けて前向きな政府を支援していく。

原文

November 26, 2021, World Shipping Council


3.英国政府:潮流発電事業に年間2000万ポンドの差額補助を実施

英国政府は2050年までの炭素中立を実現させるために、2035年までにCO₂の排出量を78%削減することとしているが、この目標を実現するために、他の再生可能エネルギーの立ち上げ期の補助制度として用いられた最低価格保証制度(発電された電力について、入札によってあらかじめ設定された最低価格と、市場で実際に売却できる価格の差額を保証する制度)を利用して、年間2000万ポンド(約30億円)の助成を潮流発電事業に対して実施することを決定した。2020年に英国政府は、次回の補助金入札では、補助金の対象となる再生可能エネルギーの量を倍増することを表明している。

原文

November 24, 2021, Reuters


4.豪議会:洋上風力発電開発のための基本法を承認

11月25日、豪議会は、洋上風力発電施設と送電ケーブル敷設の枠組みを定める法律を承認した。現在最も開発計画の進んでいる事業としては、ビクトリア州沖の総発電規模2.2GWのStar of South事業と、Northern Territory準州で太陽光で発電した電力を海中ケーブルでシンガポールに送電する事業がある。Star of South事業はデンマークのCopenhagen Infrastructure Partners社が主導し、3000人の直接雇用を創出する見込み。現在計画中の洋上風力発電施設は、いずれも現在は石炭火力に電力を依存している工業地域のそばに立地する。ビクトリア州政府は、Star of Southを含む3つの洋上風力発電事業に4000万豪ドル(約320億円)の資金支援を実施する。洋上風力発電によって発電された電力によって「グリーンな」鉄鋼・アルミニウム・水素・アンモニアを生産することにより、2050年までに3330億豪ドル(約27兆円)の「グリーンな」輸出が可能となると見込まれている。

原文

November 25, 2021, Reuters


Webinar情報