国際海洋情報(2021年11月25日号)

1.韓国政府が2022年中にHMMを民営化へ

2016年に、韓国政府は倒産の危機に瀕していた現代商船に対し、韓国産業銀行を通じて、救済措置を実施した結果、同銀行と韓国海洋事業公社は、同社の多量の転換社債に加えて、合計で同社の株式の40%以上を保有している。もしこの転換社債をすべて株式に転換すると、韓国政府はHMM社の株式の70%以上を保有していることとなる。2021年に入ってから、HMM社は他のコンテナ海運会社と同様に高収益を上げ、経営が安定化してきたので、韓国政府は政府保有株式の売却の検討を始めていた。11月23日、韓国海洋水産部の副大臣は、記者会見で同社の株式を2022年上半期末までに売却をする計画を公表し、国内の財閥を中心に株式の売却先を選定すると発表した。HMMは韓国政府の支援を受けて、保有船舶を最新式の低コストの大型コンテナ船に置き換えることにより、年間1.7億ドル以上の収益を上げることを目標としていたが、現在ははるかに多くの収益を上げている。

原文
November 26, 2021, The Maritime Executive

2.海洋に投棄された武器による環境汚染・爆発のリスク

第1次世界大戦から1960年代まで、使用されなくなった兵器を海洋投棄するのは、安全かつ安価な武器の処分方法として世界中で広く実施されていた。この結果、バルト海だけでも、約5万トンの化学兵器・50万トンの通常兵器・1万隻の船舶が海底に投棄された。ベルギーとオランダの沖合にも、第1次世界大戦後、3.5万トンの兵器が投棄された。これらの兵器は海中ですでに70年以上遺棄され、大きく腐食したものも多く、化学兵器から漏れ出した有害化学物質などが海洋に流れ出して、海洋生物や人間の健康に悪影響を与え、また、近年増加している洋上風力発電施設や海底ケーブルの敷設工事中に触雷して爆発する可能性もあると欧州委員会の環境担当のコミッショナーは指摘している。現状では、こうした海洋投棄された兵器については、兵器そのものの回収を行うのではなくて、兵器の危険性を除去するという観点から、海軍の管理下において爆破処理されているが、環境団体は、爆破処理によって、海洋生物が死に、大きな海中騒音を発生するので、爆破処理に反対している。

原文

November 26, 2021, Euractiv


3.スリランカの港湾でさらに支配力を増す中国

11月23日、スリランカ政府は、閣議で、インドと日本と共同で整備を進めていたコロンボ港東コンテナターミナル(ECT)の第2期建設工事を中国港湾工程(CHEC)に受注させることを決定した。ターミナルの運営自体はスリランカ港湾庁が行う。CHECは中国の国営企業である中国交通建設(CCCC)の子会社で、コロンボの有名なseafrontであるゴール・フェイスの近くに10億ドルをかけて建設されるColombo Port Cityやコロンボの郊外を結ぶ10億ドルの4車線の高架型高速道路など、スリランカの戦略的なインフラ建設を既に受注している。中国招商局港口控股はスリランカ南部のハンバントータ港とコロンボ国際コンテナターミナルの支配権を既に有しており、今回のECT開発事業への参入でスリランカの港湾に対する支配力がさらに強化された。

原文

November 24, 2021, The Hindu


4.比:セカンド・トーマス礁に関する中国の要求を拒否

セカンド・トーマス礁は比のパラワン島から195km沖にあり、比のEEZに含まれる一方で、中国の主張する九段線の内側に位置するので、比と中国が領有権を争っており、比海軍は同軍が所有していた旧米海軍の揚陸艇を意図的に同礁に座礁させ、その船に小部隊を1999年から駐留させて、同礁を実効支配している。先日も同部隊に食料を補給するための比軍の補給ボートが、中国の海警局の巡視船に放水されて追い返されるという事件が発生し、両国関係が緊張したばかり。中国外交部の報道官は、中国政府が比政府に対して、「約束を守って」不法に座礁させた揚陸艇を同礁から移動させるように要求していると、11月24日の会見で明らかにしたが、この発言に対して、比の防衛大臣は、11月25日、そのような約束はしていないし、揚陸艇を移動させるつもりはないとして中国政府の要求を拒否した。

原文

November 26, 2021, Reuters


Webinar情報