国際海洋情報(2021年11月19日号)

1.ロイズ船級協会:人工知能技術に関する認証業務を開始

人工知能(AI)技術は、ハードウェアとソフトウェアから構成される技術で、人間の監視・理解・決定能力を代替するものだが、海事分野においてもDigital Twins (DT)/Virtual Commissioning/自律運航システムなどの分野でどんどん活用されている。信頼できるAI技術とAI技術事業者をリスクなく最小のコストで海事関係者が見つけられるように、またAI事業者が既存の技術を簡単に市場から導入できるように、ロイズ船級協会(LR)は、AI技術提供事業者とAI技術自体に対する海事産業では初めてとなる認証業務を開始した。
例えば、DT技術については、その完成度に応じてDT Ready/ DT Approved/ DT Commissioned/ DT Liveというように段階的に認証を行い、また個々のAI技術のよってどのようなことができるか、どんなメリットがあるのか、どのようなapplication/機能に用いることができるかなどの情報も提供する。

原文

November 22, 2021, Lloyds Register


2.MEPC 77:2050年炭素中立を目指す決議案は承認されず(2日目概要)

米国や島嶼国が主導する2050年炭素中立に関する決議案については、中国やロシアが明確に反対したほか、EUも2050年炭素中立といった決議にこだわるよりは、実際に取るべき対策について議論すべきだとして、ノルウェー・韓国もEUの立場を支持したので、決議案については十分な支持が得られなかった。MEPCに大きな圧力がかかっているにもかかわらず、代替燃料の開発コストや代替燃料を使用できるように既存船を改修するコストの問題や、先進国と途上国との間の不平等の問題など今までと同じ議論が繰り返された。2日目後半には、海運業界などが提案している国際海事研究開発基金や排出権取引制度など市場原則による排出削減策(MBM)に関する議論が始まった。

原文

November 23, 2021, The Maritime Executive


3.使用期限を迎える大量の老朽太陽光パネルの再利用の問題

現在世界中で大量の太陽光パネルが老朽化し、2050年までに約40億枚・7800万トンの太陽光パネルが廃棄される見込み。しかし、これらのパネルは、再利用可能な素材を簡単に取り出せるように設計されていないため、貴重な資源の再利用ができず、将来の太陽光パネルの生産の制約にもなりかねない。仮に以上の廃棄されるパネルから再利用可能な素材を回収することができれば、150億ドルの経済価値があり、20億枚の新たな太陽光パネルを生産することができ、新原料から生産するのに比べて、70%のGHG排出量を削減することができる。2020年には1000億トンの鉱物が採鉱されたが、そのうち、8.6%しかリサイクルされず、2019年には全世界で5360万トンも電子廃棄物が発生している。英国だけでも、2019年に1.6mtの電子廃棄物が出て、その中には1.48億ポンド(約228億円)の経済価値がある37.9万トンの希少金属が含まれていたと予測される。現状では、採鉱されている30種類の希少金属の平均再使用率は全世界で1%にも至っておらず、リサイクルのための技術開発が必要となっている。

原文

November 25, 2021, The Conversation


4.ギニア湾でデンマーク海軍が海賊と交戦し海賊4人を射殺

11月24日、デンマーク海軍のフリゲート艦Esbern Snareはナイジェリア南方沖の海域で海賊のリスクが高まっているという通報を受けて出動したが、偵察のために先行させたヘリから8人の不審者が乗船し、海賊の実行に必要な多くの道具を積んだ高速艇を発見した。夕刻になって、不審船のそばに到着した同艦から、海賊船に乗り込むために高速ボートを下ろし、海賊船に乗り込むために停船を命じた。海賊船から応答がなかったのでデ軍から警告射撃をしたところ、海賊船からデ軍兵士に対して直接銃撃が加えられたので、デ軍は自己防衛のために応戦し、短時間銃撃戦となり、海賊4人を射殺1人を負傷させた。銃撃戦の後、海賊船は沈没し、8人の海賊を捉えた。国際的な海軍によって、海賊が殺害されたのは、今回が初めて。

原文

November 25, 2021, Dryad Global


Webinar情報