国際海洋情報(2021年11月18日号)

1.MEPC 77:ICSが国際海事研究開発基金の承認を強く求める

国際海運会議所(ICS)が国際海事研究開発基金(IMRF)の承認を求める声明を11月22日発表したところその概要は以下のとおり。①IMRFは外航海運に従事する船舶が消費する燃料1トン当たり、2ドルを海運会社が負担して、年間50億ドルを基金として積み立て、大型の外航船で使用可能なゼロ炭素燃料の技術的準備レベル(Technology Readiness Level)を早急に向上させるために使用される見込みで、加盟国政府や国民の税金は一切使用しない。②今回のMEPCで承認されれば、2023年までに運用開始が可能で、2050年までの炭素中立実現のために、2030年までに多くのゼロ炭素船を実現できる。③IMRFは2019年に提案され、デンマーク・ギリシャ・日本・パナマ・シンガポール・英国などの海運主要国に加えて、リベリア・ナイジェリア・パラオなどの途上国からも支持を既に得ている。④IMRF導入に伴う包括的な影響評価もすでに終了しており、各加盟国の経済に対するマイナスの影響はほとんどないことが分かっている。⑤MEPC 77でIMRFが承認されるか否かは、COP 26において各政府が誓約した炭素中立化が、実際に実現されるかどうかを試す最初の「リトマス試験紙」である。

原文

November 22, 2021, ICS


2.EU排出権取引価格最高額を更新し71ユーロ超え

COP 26における炭素中立宣言によって、EUにおける排出権取引価格は高含みであったが、天然ガス価格の高騰が続き、電力事業者にとっては、天然ガスの代わりに石炭火力発電所を稼働させる方が経済的な状況だが、石炭の方が天然ガスに比べて、2倍のCO₂を排出するので、排出権に対する需要が高まり、さらに欧州における厳しい冷え込みと、風が弱い日が続いて風力発電量も減少した結果、排出権取引価格は6日連続で上昇し、11月22日、これまで最高のCO₂排出1トン当たり71.21ユーロ(約9200円)の史上最高値を記録した。但し、欧州ではコロナの拡大が続いており、ロックダウンも増える見通しで、経済活動にも影響が出る見込みで、排出権取引化価格の上昇は今後短期的には一段落する見通し。

原文

November 23, 2021, Reuters


3.EU:「持続可能な炭素循環」に関する戦略案

12月14日に正式公表予定の標記戦略案の概要は以下のとおり。①本年初めに承認された欧州気候法によれば、一部の産業や農業から排出される2050年までに排出削減できない残存CO₂については、大気中からCO₂を回収することによって相殺される必要があり、この改修を進めて、2050年以降にCO₂の回収量が排出量を上回るnegative emissionの実現を目指す。②この戦略は、大気中からCO₂を回収し、長期間にわたって貯留する方法を拡充することを目的とし、自然をベースにした生態系を利用する方法と、人為的・技術的に回収する方法を共に活用する。③直接大気からCO₂を人為的に回収する(DAC)方法によって、2030年までに、年間500万トンのCO₂を回収する必要がある。④廃棄物等から回収したCO₂をプラスチックや燃料の原料として採用するのも有力な選択肢で、例えば、回収したCO₂をメタノールに転換すれば、化石燃料を原料としないプラスチック・冷却材・樹脂を製造することが可能で、2030年までに化学工業・プラスチック製造業で使用される炭素の最低20%はこのような再生炭素を原料とする。

原文

November 23, 2021, Euractiv


4.MEPC 77:第1日目の議論(2050年炭素中立化)の速報

いくつかの代表の発言要旨は以下のとおり。①米国:パリ協定の1.5℃目標を達成するためには、海運についても対2010年実績比で2030年までに45%削減、2050年までに炭素中立が必要なのは科学的に明らかであり、今回の会合で明確な決議を採択すべき。②ギリシャ:低/脱炭素燃料への転換には、さらなる研究開発と当該燃料の供給可能性を検証する必要があり、2050年の炭素中立を決断するまでに慎重な検証が必要で決議の採択に反対。③タイ:IMOの当初戦略を見直すのは賛成だが、科学的研究と証拠に基づいて、現実的な見直しを実施すべき。④その他、炭素中立実現の資金の確保・技術移転の必要性などが指摘され、MEPCがより慎重なアクションプラン作成すべきとする意見などが上がり、議論は2日目に突入。(今回の会合は原則オンラインとされながら、多くの代表がIMOに集まって議論を行っている。)

原文

November 22, 2021, gCaptain


国内ニュース

1.NYK: タタ製鉄向けのばら積み船でバイオ燃料の使用実験を実施
原文

11月22日、NYK


2.MEPC 77に関するNHK国際ニュース(斎藤議長が登場)
原文

11月23日、NHK国際ニュース


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