国際海洋情報(2021年11月17日号)

1.スコットランド首相:同国沖の新規海底油田開発に対し反対を表明

Cambo油田は、スコットランドのシェトランド諸島の西方約120km沖の水深1000mを超す海底に位置する海底油田で、当初2001年に開発許可が出ていたが、開発が停止していた。スコットランド政府は、英国からの経済的独立を果たすために、長年にわたりスコットランド沖の海底油田の開発に前向きであり、環境団体等から、開発反対の圧力を受けても、同国首相はこれまで、同油田の開発許可に当たっては、環境影響についてきちんと再評価すべきという立場で、明確に開発に反対することを拒否してきた。一方、開発許可権限を持つ英国政府は、開発許可に前向きで、環境影響評価を行ったうえで、石油ガス監督庁が、早ければ2022年からの操業許可を与える方針を明確にしている。しかし、スコットランド首相は、COP 26を主催した経緯を踏まえ、永続的に石油ガス開発を継続すべきでなく、新規の開発計画は認めるべきではないとの立場から、11月17日、議会答弁で、Cambo油田については、厳しい環境影響評価をパスするのは難しいし、パスさせるべきでもないと初めて開発反対の立場を明確に表明した。

原文

November 17, 2021, BBC


2.INTERTANKO:2050年炭素中立目標支持を表明

国際独立タンカー船主協会(INTERTANKO)の理事会は、IMOにおいて、海運からのCO₂削減目標を引き上げ、2050年までに炭素中立を図ることを支持すると11月18日表明した。同協会は、この目標を達成するためには、乗組員の安全確保が重要であり、新たな技術や代替燃料の取扱いについて、乗組員の訓練を実施していくとしている。また、この目標を達成するための技術は現状において未開発であり、IMOにおいて国際海事研究開発基金(IMRF)の設置が速やかに承認され、研究開発を進める必要があると強調している。また、市場原則に基づく排出抑制促進措置(MBM)としては、国際的な燃料課金制度が、簡素で透明性が高く経済的にも妥当な選択肢であるとして支持を表明した。

原文

November 18, 2021, INTERTANKO


3.CCSを利用した化石燃料から作られるブルー水素の問題点

豪国立大学(ANU)の研究者がApplied Energy誌に発表した標記研究の概要は以下のとおり。①天然ガスまたは石炭から水素を生産した場合、炭素回収貯留(CCS)を使用しても多くのGHGを排出する。CCSによる炭素回収率を上げようとすると多額のコストがかかり、CCSを用いて生産したブルー水素に、CCSを用いないで生産したブラウン水素と比較して経済的に競争力を持たせるためには、排出されるCO₂1トン当たり22-46ドルの課金が必要となる。②各国の或いは国際的な水素戦略を作成する際に、ブルー水素生産時のメタンなどの漏出ガスについては十分考慮に入れられていない。③近い将来、再生可能電力と電解槽を用いて生産されるグリーン水素の生産コストの方が、ブルー水素の生産コストより安くなる見通しで、化石燃料とCCSの組み合わせで、水素の供給網を構築することは、脱炭素化の効果が低く、かつ経済的な競争力のない使われない施設を作ることとなる。

原文

November 17, 2021, Applied Energy


4.環境NGOs:海運からのCO₂排出を2030年までに半減することを要求

Clean Shipping Coalition, Clean Arctic Alliance, Global Choices等の環境NGOがMEPC 77を前に共同声明を発表したところその概要は以下のとおり。①地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するために、海運からのCO₂排出を2030年までに50%以上削減し、2050年までに炭素中立を達成すること。②既に合意されている短期的なCO₂削減対策を、2030年までにCO₂半減が達成できるよう見直し・強化すること。③北極海における船舶からの黒鉛排出問題に真剣に取り組むこと。④GHG排出1トン当たり最低100ドル以上の炭素課税を導入し、気候対策に必要な資金を集め、海運の脱炭素化により影響が出るものを支援すること。

原文

November 19, 2021, Vessel Performance Optimisation


Webinar情報

1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/