国際海洋情報(2021年11月15日号)

1.Yara:世界初の電動コンテナ船の初航海を実施

肥料メーカーのYara/Kongsberg/海運会社のWilhelmsenは、世界で初の完全電動コンテナ船Yara Birklandを、政府系の再生可能エネルギー促進企業であるEnovaから1.3億NOK(約17億円)の支援を受けて開発してきたが、11月19日無事、初航海を実施し、2022年から商業運航を行う。Yaraは、港湾と工場の間の原料・製品の輸送を従来はトラック輸送していたが、同船の就航により、年間4万回のトラック輸送と1000トンのCO₂排出を削減することができる。同船は今後2年間で、自律運航の試験運航を実施し、最終的に完全電動・自律運航コンテナ船として認証を受ける予定。Yaraは肥料メーカーとして、これまでアンモニアを原料として使用してきたが、今後は、船舶燃料としての再生可能エネルギーから生産されるグリーンアンモニアの開発生産にも取り組む。

原文

November 19, 2021, Yara


2.ABS:米エネルギー省の支援で小型原子炉の商船への使用を検討へ

米国エネルギー省は、850万ドルを投じて、舶用原子炉を含む小型のモジュール炉の研究開発を支援し、その一環として、米国船級協会(ABS)に80万ドルを資金支援して、商船の動力として小型モジュール炉を使用する際の課題を検討させる。従来型の加圧水型原子炉は長年にわたって、軍事用船舶に使用されており、ロシアでは砕氷船など民間船にも導入されているが、今までは商船で原子力の使用は検討されてこなかった。
海運業界がゼロ炭素燃料の開発を急ぐ中で、原子力の利用が選択肢の一つとして浮上しており、小型モジュール炉を使用すれば、高いエネルギー密度によって、長距離運航が可能で、採算性も確保できる可能性がある。さらに、原子力電池を活用したマイクロ原子炉を使用すれば、従来型の加圧水型原子炉に比べて、単純で高度の安全性が保証される。

原文

November 19, 2021, The Maritime Executive


3.中国:上海からのコンテナカボタージュ規制を一部緩和

中国国務院は上海港のLin-gang特別自由貿易地区の振興を図るために、暫定的に上海港から青島港・天津港・大連港までの国際コンテナフィーダー輸送について、2024年末までカボタージュ規制を凍結して、期間限定で、外国船社による輸送を認めると、11月18日に発表した。8月に発表された14次5か年計画によれば、中国政府はLing-gang特別区のGDPを2025年までに4倍に拡大し、海運・金融・IT企業など、50社以上の多国籍企業のアジア地域の本部を同地区に誘致し、外資投資基準や市場参入規制等も緩和する。

原文

November 19, 2021, The Loadstar


4.米:国連環境総会で海洋プラごみに関する国際協定交渉開始を支持へ

毎年約800万トンの海洋プラスチックごみが世界全体で海洋に流れ込み、100万羽以上の海鳥や10万頭以上の海洋性哺乳類を殺傷しているが、国連環境計画(UNEP)の本部があるケニアを訪問した米国務長官は、来年2月に開催される国連環境総会で議論される予定の海洋プラスチックごみに関する新たな国際協定を作成する交渉を開始することについて、米国は支持すると正式に表明した。同総会ではルワンダとペルーが、プラスチックのライフサイクル全般にわたる包括的かつ野心的な決議案を提出する予定だが、この決議案は米国をはじめとするプラスチックの大規模生産・消費・輸出国が支持するかがポイントとなる。

原文

November 19, 2021, Safety4Sea


Webinar情報

1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/