国際海洋情報(2021年11月11日号)

1.欧州委員会:現代重工業による大宇造船海洋の買収を正式に不許可か

2019年の3月に現代重工業(HHI)が大宇造船海洋(DSME)を買収する正式契約を、DSMEの55.7%の株式を保有する韓国産業銀行と締結し、同年11月に欧州委員会に対して、買収を承認するよう申請をした。欧州委員会の競争当局は、本買収を承認すれば、大型コンテナ船・タンカー・LNG/LPG運搬船の分野で、独占状態となって競争が阻害されるとの懸念を示し、HHIは一部の部門の切り離しを提案するなど協議を重ねたが、コロナのために必要な情報の提供が遅れたため、昨年の7月に審査は中断されていた。The Korea Timesによれば、このほどこの買収を承認しないことでEU内部の合意が成立した。本件買収については、昨年12月に中国政府の承認が下りたほか、シンガポール・カザフスタン政府も承認している一方、韓国・日本両政府はまだ承認していない。

原文
November 17, 2021, Offshore Energy Biz

2.European Green Deal:欧州委員会が新たに3つの規則を提案

11月17日、欧州委員会はEuropean Green Deal を実現するために必要な①自然保護のための森林伐採の制限②循環経済促進のためのごみの違法な輸出の禁止③環境水準向上のための土壌改良に関する3つの新たな規則を提案した。具体的には、①EUの国民がEUの市場で購入・使用・消費する製品によって、世界の森林の伐採・劣化を招かないことを保証する。監視の対象となる製品は、木材だけでなく、大豆・牛肉・ヤシ油・ココア・コーヒーなど森林を伐採して生産される可能性のある農産物まで拡大する。②OECD諸国以外へのごみの輸出については、輸入国が積極的に一定のごみを受け入れ、受け入れ国内でリサイクル可能なものについてのみ例外的に許可される。OECD諸国へのごみ輸出については、監視下におき、受け入れ国において深刻な環境問題を発生させる場合には、輸出の停止を命じることができる。③EU域内の土壌の7割は健康な状態ではなく、農耕地における土壌炭素の増加、砂漠化の防止などを通じて、2050年までにすべての土壌の改良を図る。

原文

November 17, 2021, 欧州委員会


3.White House:Recent Progress at Our Ports

11月17日、White Houseが標記ブリーフを発表したところ、海運に関する部分の概要は以下のとおり。①より多くの運賃を稼ぐために、海運会社が米国からの輸出貨物を積載せずに、空のコンテナを中国に送り返す比率は、今年に入ってから70%を超えている。②これは輸出農家だけの問題ではなく、米国の輸出入事業者に対して、海運会社が公正な扱いを行っているかと言う問題である。③2011年には、アライアンスがコンテナ海運に占める占有率は、29%にすぎなかったが、現在では80%のシェアを9大海運会社が3つのアライアンスに分かれて管理しており、アジア=北米西岸航路では、95%のシェアを握っている。④7月には、「米国経済の競争促進のための大統領令」を発出して、連邦海事委員会(FMC)に対し、海運会社が米国の輸出入事業者に対して不公正な課金を徴収しないよう厳しく取り締まるよう督励し、FMCは既に必要な調査を開始している。⑤アライアンスは独占禁止法の一括適用除外の対象だが、海上輸送量が不当に制限され、または、運賃が不当に引き上げられ、競争が大幅に制限された場合には、FMCはアライアンス協定に介入する権限を持っており、司法省も政府の一員として、FMCを支援する準備ができている。

原文

November 17, 2021, The White House


4.中国海警局:南シナ海で比の補給艇に対して放水して補給を妨害

The Second Thomas礁は、パラワン島から195km離れた比のEEZ内にある礁で、比海軍が1999年以来、意図的に海軍の船を座礁させ基地として少数の部隊を駐留させ実効支配しているが、11月15日、食料の補給を行うために同礁に向かった比の補給艇に対し、3隻の中国海警局の巡視船が放水銃を使用して進路を遮り、補給を断念させた。この中国の行動に対して、11月17日、比の外務大臣は、中国はこの礁の周辺海域において、いかなる法執行権も持たず、中国の自制心のない行動は、両国の特別な関係を損なうとして、中国の大使に対して強く抗議した。中国は、同礁は九段線の内側の中国の領土であると主張しており、この事件が起こる前にも同礁周辺に19隻、同様に比が実効支配するパグアサ島周辺に45隻の中国船を集結させていた。

原文

November 18, 2021, Reuters


Webinar情報

1.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/