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週刊国際海洋情報(2021年11月6日号)

1.COP 26:46か国が石炭火力発電の使用中止に合意

国際エネルギー機関によれば、世界の全CO₂排出量のうち石炭火力発電所から排出されるCO₂が27%を占めており、迅速な石炭火力発電の廃止が、地球の気温上昇を1.5℃以内に抑制するために不可欠である。COP 26においては、Global Coal to Clean Power Transition Statementが結成され、石炭火力発電所の新設の停止と、CO₂回収装置のない石炭火力発電所の使用を、先進国は2030年代までに、その他の国は2040年代までに、中止することが約束されている。11月4日の段階で、署名国数は46か国となり、韓国(世界5位)、インドネシア(7位)、ベトナム(9位)、ポーランド(13位)、ウクライナ(19位)などの石炭依存度が高い国も参加している。特にポーランドは発電量の75%を石炭火力に依存しており、欧州の中では最大の石炭依存国で、石炭産業が同国内で持つ政治的・経済的影響力が強いにもかかわらず、この宣言に加わったことは欧州の脱炭素化のための最大の障害が解消されたこと意味する。

原文
November 3, 2021, Forbes

2.米内務長官:COP 26で洋上風力発電の開発の促進を表明

米国内務長官は、COP 26において、バイデン政権は、地球温暖化対策として、2035年までに発電部門を脱炭素化するために、黎明期にある洋上風力発電事業に対する支援を今年に入ってから強化しており、具体的には、2030年までに、1000万世帯分の電気を供給するために30GW分の洋上風力発電施設を米国の沿岸に建設すると表明し、各国にも洋上風力発電の積極的な整備を呼びかけた。しかし、30GWというのは、欧州全体で、20年かけて整備してきた洋上風力発電施設の規模とほぼ同じで、現在、小規模な洋上風力発電ファームが2か所あるだけの米国にとって、簡単に達成できる目標ではない。さらに記者会見では、洋上風力発電施設を建設するための環境影響評価に関する手続きや漁業団体の反対などで、迅速かつ大規模な洋上風力発電施設の開発は難しいのではないかという質問に対し、同長官は「これは政権の優先事項で、やり遂げるしかない。」としか返答できなかった。

原文

November 5, 2021, Reuters


3.COP 26:現時点におけるGHG削減見込状況

The Energy Transition Commission(ETC)による本年9月時点での分析によれば、政策的な積み上げがなければ(business as usual pathway)、全世界で2030年までに排出されるCO₂の総量は最大で43Gtとなる見込み。一方で、地球の気温上昇を今世紀末までに産業革命以前と比べて1.5℃以内に抑制するために必要な2030年までのCO₂許容最大排出量は21Gtなので、差し引き22Gtを政策的に排出削減する必要がある。COP 26 の前半終了時点で、積み上げられた追加CO₂削減量は9Gtなので、さらに13Gt分の政策的積み上げが必要となる。同様に、メタンについても、1.5℃目標を達成するためには、2030年までに35-45%の排出削減が必要で、ETCによれば2030年までに、化石燃料からの排出量を60%、農業と廃棄物処理からの排出量を30%削減できれば、合計で40%削減(130MtCH4)が可能となる。全世界のメタン総排出量の45%を排出している100か国以上が参加して合意されたThe Global Methane Pledgeに従い、2030年までにメタンの排出量を30%削減すれば、50MtCH4の削減が可能だが、さらに80MtCH4分の追加排出削減が必要となる。

原文

November 6, 2021, UNFCCC


4.IMO:Ship’s Biofouling on Greenhouse Gas Emissions

IMOが標記報告書(速報版)をCOP 26に提出したところその概要は以下のとおり。①船長175mのばら積み船の船底の50%に0.5mmの生物の膜が付着した場合、当該船舶の運航に伴い排出されるCO₂の量は25%増加する。②船長230mのコンテナ船の船底の10%に2.5mmのフジツボの層ができた場合は、CO₂排出量は34%増加する。③船長320mのタンカーの船底の1%に5mmのフジツボの層ができた時は、CO₂排出量が55%増加する。④このようにbiofoulingが運航・燃費効率およびCO₂排気量に与える影響を海運業界はこれまで低く見積もってきた。⑤最終報告書は、来年2月に発表される見込み。

原文

November 4, 2021, IMO


5.COP 26:第1週の主要合意内容と課題

Bloombergによる概要以下のとおり。①1.5℃目標に向けた各国のNDCsについては、インドが新たに2070年までの炭素中立を約束した一方、中国は約束の積み増しを行わず、目標の達成のためには、依然として130億トンのCO₂削減が必要。②2030年までにメタンの排出量を30%削減するというGlobal Methane Pledgeに100か国以上が参加したが、1.5℃目標達成のためには45%の削減が必要。③ブラジル・ロシア・カナダといった主要森林国を含む100か国以上が、2030年までに森林伐採をやめるというforest pledgeに合意。④G20諸国が海外における石炭関連事業への金融支援停止に合意したものの、国内の石炭火力発電の撤廃については、20数か国のみが合意し、米国も中国も参加せず。⑤途上国への金融支援ついては、伊・日・加が支援の増額を表明したものの、先進国から年間1000億ドル途上国に支援するという約束は2023年まで実現せず。⑥国際的な排出権取引に関するパリ協定6条をめぐる交渉については、ブラジルが軟化の姿勢を見せるものの、途上国が求める取引課税に対して、米・EUが反対しており、交渉は最後までもつれる見込み。

原文

November 7, 2021, Bloomberg


6.英国主導で45か国がNature Pledgeに署名

全世界で排出されるGHGの約1/4は農業・林業などの土地利用から発生しているが、気候変動対策として、食料を生産し消費する方法を早急に改善する必要があるため、11月6日、英国政府主導で、45か国が自然を保護し、より持続可能な農業を実現するために迅速な行動と投資をすることを約束する宣言に署名した。具体的な施策としては、40億ドルの公共投資を実施して、気候変動に抵抗力のある穀物の品種開発や土壌改良を実施し、多くの農民に新たな栽培技術や資源を利用できるようにし、より持続可能な農業を実現するため、16か国がPolicy Action Agendaを160の関係者がGlobal Agenda for Innovation in Agricultureを開始する。英国首相は自然と生物多様性を保護するために最低限30億ポンド(約4600億円)のInternational Climate Financeを実施すると約束したが、その一部の5億ポンド(約770億円)を500万haの熱帯雨林を保護するために支出する。

原文

November 6, 2021, 英国政府


7.COP 26:英国が途上国に対して2.9億ポンドの支援を約束

COP 26第2週の初日の11月8日は、Adaptation, Loss and Damage Dayで発展途上国における異常気候に伴う損害と気候適応対策について話し合われるが、英国政府は途上国の気候変動対策に関し、2.9億ポンド(444億円)の支援を行うことを表明する。援助資金の大部分は、地球温暖化の悪影響に対して脆弱な太平洋・アジア諸国の支援に充てられる予定。具体的には、生態系や野生動物を保護するための生物多様性の改善や、環境にやさしい新規産業の発展と新規雇用の創出に充てられる。先進国は、2009年に毎年1000億ドルずつ、2020年まで途上国に対して支援することを約束していたが、米国のパリ協定の脱退などによって、いまだその目標額は達成されておらず、今回のCOPにおいても先進国は2023年までに支援額を約束である年間1000億ドルまで増加することを目標としている。

原文

November 8, 2021, BBC


8.海運に対するMBMの選択肢に関する経済的比較

COP 26の平行イベントとしてIMOは海運に関する市場原理に基づく排出削減策(MBM)に関する討論会を開催したが、英国の前運輸大臣は、IMOに対する政治的な圧力は日増しに強くなっていると指摘したうえで、海運に対するMBMがどのような形態をとろうとも、その収入の使い道は海運脱炭素化のための新技術の研究開発に充てられるべきであると述べた。海運に対するMBMとしては、燃料課税のようなものとするか排出権取引制度(ETS)のようなものにするか意見が分かれているが、仮にマーシャル諸島やソロモン諸島が提案しているCO₂1mtあたり100ドルを徴収すると、1mtの船舶燃料を燃焼させると、3.1mtのCO₂が発生するので、炭素課税の価格は燃料1mtあたり約310ドルとなる。一方で、EU ETSにおける排出権取引価格は2020年の平均価格では、CO₂換算でmtあたり25ユーロだったが、2021年に入ってから上昇しており、直近の11月10日の価格は、63.16ユーロ(約72.3ドル)に達した。ちなみに航空の脱炭素化の枠組みであるCORSIAの下では、11月10日で、CO₂1mtあたり8.35ドルとなっている。

原文

November 11, Standard & Poor’s


9.19か国が2025年までに脱炭素海上貿易ルートを作る宣言に署名

11月10日、COP  26で日・米・英等の19か国が、世界の海運の脱炭素化を促進するために、2025年までに6ルート以上の脱炭素海上貿易ルートを創設することに合意するClydebank Declarationに署名した。具体的にはこのルートに位置する港湾において、脱炭素燃料の供給を可能とし、法的枠組みに従った供給インフラの整備を行う。米国の運輸長官は、2050年までの炭素中立を目標とするようIMOに圧力を加え続けると語り、IMO事務局長も6日、最近の国際的な動向に対応して、IMOのCO₂削減目標をさらに改善する必要があると語った。マースクタンカーのCEOは、デジタル技術を駆使してCO₂の排出量を削減するために、過去3年間に既に3000万ドルを投資したと語り、参加政府に対し、法的整備のみならず、脱炭素燃料が大規模に供給されるよう支援してほしいと語った。日・英・米以外では、豪・ベルギー・加・チリ・コスタリカ・デンマーク・フィジー・フィンランド・仏・独・アイルランド・マーシャル諸島・蘭・NZ・スウェーデンが署名した。

原文

November 10, 2021, Reuters


10.COP 26:石炭火力の使用停止と途上国の気候損害に対する先進国の補償が焦点に

COP 26は11月12日に終了する予定だったが、石炭火力の使用停止と、気候変動によって途上国が受けた損害に対して先進国が資金援助(補償)を行うかの2点をめぐって、結論が得られず、会期が延長された。13日に発表された最終合意案における「CO₂回収装置がない石炭火力発電と非効率な化石燃料に対する政府補助の段階的撤廃に向けた努力を加速化する。」という表現は、骨抜きであると環境団体から非難される一方で、中国とサウジアラビアはさらに、化石燃料に対する政府補助に関する記述を削除しようと依然として抵抗している。一方で、途上国における「気候変動による損害」に対する先進国による補償の問題については、最終案は、先進国による補償基金を設立する代わりに、「先進国と途上国間で資金支援のための話し合いを来年開始する。」という具体的な資金援助の仕組みに触れない内容となっており、途上国は強く反発している。

原文

November 13, 2021, BBC


その他のニュース

1.気候変動緩和対策
 (ア)COP26
  ①首脳演説
   COP 26: 米オバマ元大統領のスピーチ概要 原文11/9
  ②気温上昇の見通し
   COP 26の合意が完全実施されれば温暖化を1.8℃以内に抑制可能 原文11/4
  ③High Ambition Coalition
   High Ambition Coalition COP 26 Leader’s Statement 原文10/29
 (イ)行動変容の必要性
  ①富裕層
   富裕層の生活様式が地球温暖化を促進 原文11/5
2.気候変動
 (ア)大気中CO₂濃度
  ①見通し
   2021年のCO₂排出量は、石炭の消費量の増加によって過去最高に 原文11/3
 (イ)海水温の上昇
  ①地域的分析
   WMO: State of the Climate in the Southwest Pacific in 2020 原文11/10


Webinar情報

1.COP 26: Virtual Ocean Pavilion
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/


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