国際海洋情報(2021年10月25日号)

1.LA/LB港がコンテナ船社からコンテナ超過滞留料金を徴収することを決定

ロングビーチ港とロサンゼルス港では、夏から記録的な港湾の混雑が続き、状況はさらに悪化し、コンテナターミナルにおけるコンテナの滞留が、コンテナ船の荷役を遅らせ、沖合に大量のコンテナ船が滞船する一方で、米国の荷主は船積みを長く待たされる状況が続いているが、ターミナルに滞留しているコンテナの搬出を促すため、両港は、10月29日、港湾ターミナルに一定期間以上超過滞留しているコンテナについて、コンテナ船社から「コンテナ超過滞留料金」を徴収することを決定した。具体的には、トラックで搬出されるコンテナには9日間、鉄道で搬出されるコンテナについては6日間の無料搬出待ち期間を認め、この期間を超過したコンテナ1個に対し、1日当たり、100ドルのコンテナ超過滞留料金をコンテナ船社から徴収する。新制度は、11月1日から適用されるが、実際の料金の徴収は11月15日以降から開始され、15日までに事態が改善されれば、新料金の適用を見送ることもできる。

原文
October 29, 2021, Port of Long Beach

2.UNSG世界都市の日メッセージ:都市の気候適応・防災対策の強化を訴える

10月31日の「世界都市の日(World Cities Day)」の国連事務総長のメッセージの概要は以下のとおり。①気候変動に伴う海面の上昇によって、2050年までに沿海域の都市に住む8億人の住民の生活が脅かされるにもかかわらず、現状では、世界の都市に投入される気候変動関係の予算の9%しか、発展途上国の都市の気候変動適応対策・防災対策に充てられていない。②世界では、10億人を超える人々が、非公式な開拓地で生活し、そのうちの7割の地域は気候変動に伴う異常気象の危険にさらされている。③このような状況を変革するためにも、すべての気候変動関連の予算の半分は適応対策に充てられるべきである。④気候変動に適応し、住民の生命と生活を守るために、災害に対して強いインフラの建設・早期警報システムの導入・自然災害リスクを緩和するための財政的な手当てを講じる必要がある。

原文

October 30, 2021, 国連


3.米最高裁:環境保護庁が発電所からのGHG排出を規制する権限について検討

2016年にオバマ政権は、発電所からのCO₂排出を規制するClean Power Plan(CPP)を定めたが、この規制に対し、州政府が訴訟を提起し、2016年に最高裁判所によってCPPは差し止められ、実際に適用されることはなかった。2018年に、トランプ政権は、CPPにかわるAffordable Clean Energy(ACE)規則を定め、環境保護庁(EPA)に発電所からのCO₂排出規制 を実施する権限を認めず、各州政府が同規制を実施することとなった。これに対し、連邦DC巡回区控訴裁判所は、ACE規則を認めず、Clean Air Actに基づき、EPAは発電所からのGHG排出規制の権限があるとの判決を行った。これに対し、石炭関係企業と共和党が支配する州政府は、①EPAが全てのGHG排出事業者に対して適用できる規則を策定する権限があるか。②その手段として、GHG排出の上限を規制し、排出権を取引する制度をすべての産業に適用できるか。③EPAが米国のエネルギーシステムを再構築するような経済的・政治的に大きな影響を与える事項について決定することができるかについて最高裁判所が判断することを求める訴えを提起していたが、10月29日、最高裁判所はこの訴えを受理し、上記の点について最高裁が今後検討することを認めた。

原文

October 29, 2021, The Hill


4.HSBC:サプライチェーンの脱炭素化には中小企業へ50兆ドルの投資が必要

HSBCとBoston Consulting Groupが10月27日、Delivering Net Zero Supply Chains報告書を発表し、サプライチェーンの炭素中立化のためのロードマップを発表したところその概要は以下のとおり。①消費者の使用方法などを踏まえ、製品のデザイン(設計)を再考する必要。②サプライチェーンの炭素中立の実現には、中小企業に対する支援が不可欠で、知識・技術・投資・資源の共有が必要。③特に中小企業の人材の技術・知識の底上げが必要。④2050年までの炭素中立を実現するためには、研究開発投資に加えて、大規模に革新的な気候変動対策を開発するために、業界・研究者・投資家の連携が必要。⑤比較可能で整合性のあるESG基準値を提供するために、サプライチェーン全体にわたる実際の運用に関する情報を収集するシステムを創設する必要。⑥サプライチェーンに関する国際的に高度かつ実用的な共通基準が全ての参加者に適用されるような整合的な政策が早急に必要。⑦サプライチェーンの脱炭素化実現のためには、重点的で他の用途に流用されない実用的な資金の提供が必要となるが、単独の金融機関では不可能で、必要なところに必要な資金を供給するためには、金融機関がシンジケートを組み、他の企業と共同投資をし、公民連携(PPP)を組むことが必要。

原文

October 27, 2021, HSBC


Webinar情報

1.COP 26: Virtual Ocean Pavilion
October 31-November 12
https://cop26oceanpavilion.vfairs.com/en/registration-form

2.UN Conference Ocean Decade Kickoff Conference for the Western Pacific
November 25-26
https://www.ioc-westpac.org/decade-kickoff-conference/registration/